頭上の太陽光パネルに思う — いじらしさと気まぐれにどのように向き合うべきか

2012年03月05日 16:00
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員

私は太陽光発電が好きだ。

もともと自然が大好きであり、昨年末まで勤めた東京電力でも長く尾瀬の保護活動に取り組んでいたこともあるだろう。太陽の恵みでエネルギーをまかなうことに憧れを持っていた。いわゆる「太陽信仰」だ。

そのため、一昨年自宅を新築した際には、迷うことなく太陽光発電を導入した。初期投資額の大きさ(工事費込み304万円)には少々尻込みしたが、東京都と区から合わせて約100万円の補助金を受けられると聞いたこと、そして何より「環境に良い」と思って決断した。正確に言えば、思考停止してしまった。

しかし、実際に設置してわかったのは、太陽光発電は、少なくとも現在の技術では「自立した発電手段ではない」ということだ。

理由の一つは、その気まぐれな働きぶりだ。

勤務時間ともいえる稼動の時間帯は「9-5時」だ。しかも二日酔いのサラリーマンよろしく、朝はボチボチの様子見運転、おやつの時間を過ぎればそわそわと帰り支度を始めるといった風で、まじめに働いているのは正午を挟む数時間のみである。雲が出れば不機嫌になり、雨が降ったら当然のごとく全く働こうとしない。太陽光発電は小型とはいえ立派な一つの発電所なのにである。

日本における太陽光発電の平均稼働率が約12%程度しかないという知識は持っていたが、太陽を燦々と浴びた黒いパネルが電気を生み出すイメージばかりが頭に浮かび、実感できていなかったのだ。

二つ目の理由は、頼りにしたい時に頼りにできない点だ。

太陽光発電に最も頼りたいのは、電力会社からの電力供給が途絶したときである。しかしその場合、太陽光発電も自動的に運転を停止してしまうのだ。
我が家の太陽光発電の取扱説明書の文言を引用する。

<重要>
パワーコンディショナーから供給される電力は、日射量により出力が変動するため不安定な電力となります。よって、電力供給の変動により、損傷する恐れのある機器や使用上問題がある機器(バッテリーのないPC・メモリー機能のある機器等)への接続はしないようにしてください。
<警告:特に生命に関わる機器への接続は、厳禁とします。>

手動で自立運転に切り替え、パワーコンディショナーに一つだけあるコンセントに接続すれば、多少の電気を使うことはできる。ただし、最大15A(アンペア)まで、しかも出力が不安定なので、使える電化製品は限定される。ありていに言えば、ほとんど使えない、ということだ。「私は自立できません」という電源なのだ。

結局のところ、太陽光発電は、時間帯や気象条件に関わらず電力を安定供給できる他の大規模電源か、大型蓄電池などのバックアップ電源がなければ、活用できない発電手段なのだ。これでは、燃料費の節減はできても、発電設備の削減はできない。二重の設備投資が必要となる。

さらに、太陽光発電は周波数や電圧が不安定であるため、大量に導入しようとする場合には「系統安定化対策」が必要となる。これは発電と送電、使用量を調整するもので、現在の技術では電気は大量に貯めることができないので、気まぐれに電気をつくる太陽光が増えると、その対策は非常に難しくなる。

導入量と対策の種類によってコストは大きく異なるが、少なく見積もっても全国で1兆円をゆうに上回る費用がかかると考えられている。2010年年3月の経済産業省・次世代送配電ネットワーク研究会によると、太陽光発電を2800万kW導入した場合、最も安価な対策でも1兆3600億円の系統安定化対策費が必要という試算がなされている。

こうして見ると、わが国における太陽光を含む新エネルギー(水力のぞく)の導入量が全発電電力量比で1.2%程度(2010年度)にとどまっているのは、政策的な支援が不足しているからというよりも、その技術の本質的な問題によるものと考えるのが妥当ではないだろうか。

それでも、私は太陽光発電が好きだ。

太陽が顔を出すと張り切って発電を始める姿はいじらしいし、毎日発電モニターをチェックするのも楽しい。節電のモチベーションを高めてくれたことにも感謝している。

しかし、政府が固定価格全量買取制度を今年7月から導入するなどして、「今の技術レベルの」太陽光発電を普及させようとしていることには反対せざるを得ない。

なにしろ我が家では、風来坊の象徴である寅さんをもじって「寅ちゃん」という愛称を献上しているくらい、頭上の太陽光パネルは、あまりに気分屋なのだから。

竹内 純子(たけうち・すみこ)

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竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員

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