核燃料サイクルとは何か — 期待と困難が併存、政治的問題に

2012年10月09日 13:30

核燃料を「使い続ける」考え

原子力発電でそれを行った場合に出る使用済み燃料の問題がある。燃料の調達(フロントエンドと呼ばれる)から最終処理・処分(バックエンド)までを連続して行うというのが核燃料サイクルの考えだ。

使用済み燃料の9割は再利用が可能であり、使い続けることで、エネルギーの有効利用をしようという考えだ。日本は無資源国であり、1970年代から80年代に、この考えは歓迎され、エネルギー政策の中に取り込まれていきた。


図1 核燃料サイクルのイメージ図(経済産業省資料より)

原発問題はこれまで、「使用済み核燃料をどのように扱うか」という点に批判が集まってきた。さらに福島第1原発事故でこの問題は関心が集まった。使用済み燃料が原発内に保管されていた。一連の原発での水素爆発や再び起こる可能性や地震や津波によって、その燃料が損傷することが懸念された。そのために、この問題が注目を集めた。

経産省によれば、使用済燃料の貯蔵量は11年末時点で約1万4800トン。大半は全国の原発で一時保管されている。ただし、その余地が少なくなっている。この方法では10年以内に、燃料保管の場所がなくなる。

現在、青森県むつ市に中間貯蔵施設が建設中だ。(青森県ホームページ)また青森県六ヶ所村の日本原燃の燃料再処理工場が現在試運転を行っている。ただし稼動のめどは立っていない。当初予定されていた7600億円の建設費用は、現在予定で2兆2000億円まで膨らんでいる。また建設計画が1989年に決定し、2010年までの稼動を目標にしたのに、今でも完成していない。現時点では燃料の再処理の一部は、英仏で行われている。

GEPRは10月9日の更新で掲載した2つの論説「したたかに堅持すべき再処理リサイクル政策 ― 歴史の蓄積、合理性、早急な「突然死」の危険」「放射性廃棄物の処分、対策の紹介 − 「地中処分」と「核種変換」 」で、問題への意見を紹介した。

「直接処分」というもう一つの選択肢

問題はこの政策をどのように判断するかだ。原発についてどのような考えを持とうと、使用済み燃料は今、日本に存在している。これをどうするか、決断をしなければならない。

原子力発電を止める場合に、当然、使用済み核燃料を再び使う必要はなくなる。しかし政府が9月に取りまとめた「1930年代に原発ゼロを目指す」とした「革新的エネルギー・環境政策(概要)」は、核燃料サイクルを続けると記載して、その矛盾が批判を集めた。

燃料の処分方法は、核燃料サイクルに使うか、直接処分をするかの2つだ。また核燃料サイクルで再処理するにしても、高レベル放射性廃棄物は発生してしまう。

直接処分とは、燃料集合体をほぼそのままの形でキャスクに入れて、地中につくられた特殊な施設内で保管するものだ。この種の廃棄物が生物への影響がないまでに放射線が減らせるには、10万年の時間が必要とされる。そのために、管理の先行きが見えず、この点も問題を複雑にする。

各国とも最終処分の方法については、政治的な議論が生じ、決めるまで遅々とした時間がかかる、もしくは決まらない状況が続いている。しかし、主要国の中で、「方針さえ決まらない」という状況になっているのは日本だけだ。

核燃料サイクルへの批判

燃料サイクルについて、肯定する主張は前述のコラム「したたかに堅持すべき再処理リサイクル政策 ― 歴史の蓄積、合理性、早急な「突然死」の危険」で、掲載している。

この政策の批判は、反原発の主張に付随したものに加えて、次のようなものがある。

1・経済性で全量再処理より費用がかかる。
内閣府原子力委員会の試算によれば、「全量再処理」「再処理・直接処分併用」で14.4兆円から18.4兆円。一方で全量直接処分は8.1兆円〜14.8兆円と試算されている。しかし、この試算は前提で変る。

2・核兵器に転用されるリスクがある。
再処理の過程で毒性の強く、また核兵器にも使われるプルトニウムが抽出され、これが危険であるとの指摘がある。ただし、これは核物質を扱うどの段階でも、リスクが存在する。

3・高速増殖炉もんじゅ、青森県六ケ所村で建設中の核燃料再処理施設など、計画を実現する手段で技術トラブルが続き、稼動のめどが立っていない。

どのような方法を選択するにしても、使用済み核燃料の問題にはさまざまなコスト、また選択の難しさがある。さらに、核物質への恐怖から、関係者の合意形成がとても難しい。

GEPRではこの問題について読者の意見を募集している。投稿は info@gepr.org まで。

(2012年10月9日掲載)

This page as PDF

関連記事

  • 関西電力は、6月21日に「関西電力管外の大口のお客さまを対象としたネガワット取引について」というプレスリリースを行った。詳細は、関西電力のホームページで、プレスリリースそのものを読んでいただきたいが、その主旨は、関西電力が、5月28日に発表していた、関西電力管内での「ネガワットプラン」と称する「ネガワット取引」と同様の取引を関西電力管外の60Hz(ヘルツ)地域の一部である、中部電力、北陸電力、中国電力の管内にまで拡大するということである。
  • 言論アリーナ「地球温暖化を経済的に考える」を公開しました。 ほかの番組はこちらから。 大停電はなぜ起こったのかを分析し、その再発を防ぐにはどうすればいいのかを考えました。 出演 池田信夫(アゴラ研究所所長) 諸葛宗男(ア
  • 薩摩(鹿児島県)の九州電力川内原子力発電所の現状を視察する機会を得た。この原発には、再稼動審査が進む1号機、2号機の2つの原子炉がある。川内には、事故を起こした東電福島第一原発の沸騰水型(BWR)とは異なる加圧水型軽水炉(PWR)が2基ある。1と2の原子炉の電力出力は178万キロワット。運転開始以来2010年までの累積設備利用率は約83%に迫る勢いであり、国内の原子力の中でも最も優良な実績をあげてきた。
  • 言論アリーナで、もんじゅについてまとめた。東工大の澤田哲生さん、アゴラ研究所の池田信夫さんの対談。前者は肯定、後者は研究施設への衣替えを主張。
  • 20世紀末の地球大気中の温度上昇が、文明活動の排出する膨大な量のCO2などの温室効果ガス(以下CO2 と略記する)の大気中濃度の増加に起因すると主張するIPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)による科学の仮説、いわゆる「地球温暖化のCO2原因説」に基づいて、世界各国のCO2排出削減量を割当てた京都議定書の約束期間が終わって、いま、温暖化対策の新しい枠組みを決めるポスト京都議定書のための国際間交渉が難航している。
  • 東日本大震災で事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所を5月24日に取材した。危機的な状況との印象が社会に広がったままだ。ところが今では現地は片付けられ放射線量も低下して、平日は6000人が粛々と安全に働く巨大な工事現場となっていた。「危機対応」という修羅場から、計画を立ててそれを実行する「平常作業」の場に移りつつある。そして放射性物質がさらに拡散する可能性は減っている。大きな危機は去ったのだ。
  • ユダヤ人は祈りのときにヒラクティリーという帽子をかぶる。そこから出た紐が右手と左手に結ばれる。右手はユダヤでは慈愛を象徴し「あなたの行いが慈愛に満ちるように、そしてそれが行き過ぎないように」、左手は正義を象徴し「あなたが正義を振りかざしすぎないように」という意味を込めているそうだ。
  • 福島第一原発事故後、日本のエネルギー事情は根本的に変わりました。その一つが安定供給です。これまではスイッチをつければ電気は自由に使えましたが、これからは電力の不足が原発の停止によって恒常化する可能性があります。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑