放射線とチェルノブイリ事故処理作業員間の慢性リンパ性およびその他白血病のリスク(要旨日本語訳)

2012年11月12日 14:00

(GEPR編集部より)米国の医学学術誌に掲載された調査報告の要旨の日本語訳を掲載する。米国の研究チーム、ウクライナの放射線医学国際研究所が行ったもの。チェルノブイリの除染作業員は、白血病において発病のリスク向上が観察されたという。ただし、その被曝の状況は、要旨だけでは明確に示されていない。また白血病の発症者は調査対象約11万人中137人と少ないことにも、注意が必要である。

(以下本文)
背景:電離放射線の急性高線量被曝による大部分の種類の白血病のリスクはよく知られているが、長期間被曝に伴うリスクや放射線と慢性リンパ球性白血病(CLL)の間の関係性は明白でない。

目的: 長期間被曝から低線量までの電離放射線被曝のCLLおよび非CLLの相対リスクを推定する。

方法: コホート内症例対照研究(編集部注・被験者とそれ以外の母集団を比較する疫学調査の手法)が、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故のウクライナ人事故処理作業員クリーンアップ作業員11万0645人に対して行われた。1986年から2006年までに事故由来の白血病と診断された症例は、専門家委員団の血液学者・血病理医委員会によって確認された。照査は居住地と出生年別の患者と比された。個々の骨髄放射線量は、不確実性評価による現実的な分析的線量復元(RADRUE)メソッドにより推定した。放射線量グレイあたりの白血病の過剰相対リスク(以下、ERR/Gy)を推定するために条件付ロジスティック回帰モデルを使用した。

結果: 全ての白血病において有意な線形線量反応が認められた(137ケース中、ERR/Gy=1.26(95%信頼区間0.03, 3.58)) 。CLLおよび非CLL双方にて非有意なポジティブ線量反応があった(ERR/Gy= 0.76(CLL) 、1.87(非CLL))。20例を除く、直接対面インタビューによる主要分析による。

結論: チェルノブイリ事故後のクリーンアップ作業による低線量および低線量率の放射線被曝は、白血病のリスクの有意な上昇と関連していた。これは、日本の原爆被爆生存者の推定値と統計的に一貫していた。主な分析に基づき、我々は、CLLおよび非CLLは、双方共に放射線感受性であるという結論に達した。

受理: 2012年1月21日、2012年10月24日承認、2012年11月8日出版。

(2012年11月12日掲載)

This page as PDF

関連記事

  • 筆者は、三陸大津波は、いつかは分からないが必ず来ると思い、ときどき現地に赴いて調べていた。また原子力発電は安全だというが、皆の注意が集まらないところが根本原因となって大事故が起こる可能性が強いと考え、いろいろな原発を見学し議論してきた。正にその通りのことが起こってしまったのが今回の東日本大震災である。
  • 【要旨】 放射線の健康影響に関して、学術的かつ定量的に分析評価を行なっている学術論文をレビューした。人体への影響評価に直結する「疫学アプローチ」で世界的にも最も権威のあるデータ源は、広島・長崎の原爆被爆者調査(LSS)である。その実施主体の放射線影響研究所(RERF:広島市)は全線量域で発がんリスクが線量に比例する「直線しきい値なし(LNT)仮説」に基づくモデルをあてはめ、その解析結果が国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に反映されている。しかしLNT仮説は低い線量域(おおむね100mSv以下)では生物学的に根拠がない(リスクはもっと小さい)とする「生物アプローチ」に基づく研究が近年広くなされている。
  • 運営事務局よりこのシンポジウムの司会進行は地域メディエーターが担うことが説明され、司会者の開会宣言に続き、シンポジウムの位置付けと今日のシンポジウム開催に至るまでの経緯が説明された。
  • 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震直後の誘発地震で、それまでに考慮されていなかった断層に地表地震断層を生じたことから、翌年、国は既設原子力発電所の敷地内破砕帯を対象に活動性の有無に関するレヴューを行なった。
  • 福島第一原発を見学すると、印象的なのはサイトを埋め尽くす1000基近い貯水タンクだ。貯水量は約100万トンで、毎日7000人の作業員がサイト内の水を貯水タンクに集める作業をしている。その水の中のトリチウム(三重水素)が浄
  • 問・信頼性を確保するためにどうしましたか。 クルード博士・委員会には多様な考えの人を入れ、議論の過程を公開し、多様な見解をリポートに反映させようとしました。
  • ICRP勧告111「原子力事故または放射線緊急事態後における長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用」(社団法人日本アイソトープ協会による日本語訳、原典:英文)という文章がある。これは日本政府の放射線防護対策の作成で参考にされた重要な文章だ。そのポイントをまとめた。
  • GEPRの14年2月の記事。再掲載。原子力規制委員会の手続きおける、法律上の問題について分析している。違法行為がかなり多い

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑