海外の太陽、風力エネルギー資源の利用拡大を図ろう(上)

2013年07月29日 11:00
塩沢 文朗
国際環境経済研究所主席研究員 元内閣府大臣官房審議官(科学技術政策担当)

提携する国際環境経済研究所(IEEI)のサイトの論考を転載させていただきました。

(以下本文)

再生可能エネルギーの導入拡大に向けてさまざまな取組みが行われているが、これまでの取組みは十分なものといえるのだろうかというのが、今回、問題提起したいことです。そのポイントは以下のようになります。

(1)日本は、エネルギーの安定供給の確保と2050年に向けたCO2の大幅削減のため、再生可能エネルギーを大量に導入することが必要。これは原子力エネルギーの利用を継続した場合でも同様。

(2)再生可能エネルギーの大量導入を図るためには、海外の太陽、風力エネルギー資源の利用拡大を図らなければ、その実現は困難。国内の再生可能エネルギー資源の利用の拡大を図ることはもちろん重要だが、将来をにらむと政策の重点を海外の太陽、風力エネルギー資源の利用拡大にシフトすることが必要。

(3)その際、重要となる取組み課題は、海外の太陽、風力エネルギーの特徴に合った利用技術の開発と、そのエネルギーを大量に日本に輸送する手段の開発。

この問題提起の理由について、2回に分けて説明させていただきます。

日本が目指すべき再生可能エネルギーの導入規模

まず、日本で将来的に必要となる再生可能エネルギーの導入規模について考えてみましょう。現在、日本は一次エネルギー供給の80%以上を化石燃料に依存しています。今後、世界の化石燃料の消費は増加の一途をたどり、世界の化石燃料の消費量は2035年には現在の約1.5倍に増加すると見通されています(注1)。こうしたことから、エネルギーの消費国間で化石燃料の確保競争が一層熾烈化し、価格が上昇していくことは必至でしょう。

とくに、アジアには中国、インドなどエネルギーの大量消費国があり、日本は大きな影響を受ける可能性があります。シェールガスが話題となっていますが、日本がどれほど裨益できるかは不透明ですし、中長期的には化石燃料資源の賦存量に限界があることに変わりはありません。いずれはその限界が化石燃料の需給に大きな影響をもたらすでしょう。したがって日本は、今後、化石燃料への依存を大きく減らしていくことが必要です。

加えてCO2の排出量も減らしていかなければなりません。大気中のCO2濃度は年々増加し、産業革命前の280ppmから、とうとう400ppmを超えるまでになりました。2050年までにCO2排出量を先進国で80%削減、世界全体で50%削減するという目標は、G8の首脳間で共有し日本も堅持している目標です(注2)。化石燃料への依存を大幅に減らさない限り、この80%削減という目標は達成できません。

さて、それでは日本の将来のエネルギー供給構造について、これまで、どのような見通しが描かれてきたのでしょうか。

昨年、国を挙げて日本のエネルギー需給の将来像、「革新的エネルギー・環境戦略」が検討されました。それによると省エネを最大限行い、再生可能エネルギーを最大限導入し、かつ、(原子力発電所の多くが稼動していた)2010年度と同程度、原子力エネルギーに依存したとしても、日本は2030年においても一次エネルギー供給量の約75%程度を化石燃料に依存せざるを得ないとみられています(注3)。

原子力エネルギーに将来にわたって依存することの是非については、いろいろな意見がありますが、将来のエネルギー供給構造を考えるうえで重要なことは、多くの原子力発電所が稼働していた2010年度でも、原子力エネルギーが担っていたのは日本の一次エネルギー供給量の約1割程度であったということを認識することです(注4)。

つまり、化石燃料への依存度を将来に向けて減らし、エネルギーの安定供給の確保とCO2の排出削減を図っていくためには、これまでと同程度、原子力エネルギーに依存したとしても、それだけでは不十分であり、再生可能エネルギーをもっと大量に導入していくことが必要なのです。化石燃料の担っていた役割を、相当程度、置き換えるほど「大量に」という点がポイントです。

しかし、「革新的エネルギー・環境戦略」では、再生可能エネルギーの導入に精一杯頑張ったとしても、2030年において再生可能エネルギーは、日本の一次エネルギー供給量の約12%を賄うのにとどまるという姿になっています(注5)。しかもこのレベルの量の導入であっても、その実現には、量的にも、経済的にも相当な困難があると言われています。

国内の再生可能エネルギー資源の限界

これは、再生可能エネルギーの導入拡大策が、国内に賦存する再生可能エネルギーの利活用を前提としているからです。再生可能エネルギーのうち、地球上に大量に賦存するのは太陽エネルギーと風力エネルギーですが、日本国内に賦存する太陽光・熱、風力資源は、日本列島のおかれている地理的条件(緯度、気候等)から、質的にも量的にも限界があります(図に太陽エネルギー資源の賦存の状況を示す)。日本が化石燃料への依存を大幅に低下させ、価格競争力のある再生可能エネルギーを大量に導入するためには、海外の太陽、風力エネルギー資源への依存が不可欠です。

ただ、「海外の太陽、風力エネルギー資源への依存が不可欠」というと、日本のエネルギー・セキュリティはどうなるのかということになりそうですね。地球上には太陽、風力エネルギー資源は無尽蔵にあります。さらに、質的、量的に優れたこれらのエネルギー資源は、政情の安定した国を含む広大な地域にあります。石油の中東諸国への依存度が85%を超える水準(2011年)にあることを考えれば、太陽、風力エネルギーを海外に依存しても、エネルギー・セキュリティは現状よりも向上することは間違いないでしょう。


太陽エネルギーの賦存状況(注6)

それでは、海外の太陽、風力エネルギー資源を活用するためには、どのような取組みが必要となるのか。それについては、次回のコラムでご説明します。

(注1)IEA(国際エネルギー機関)のEnergy Outlook 2012.
(注2)2008年に日本がホストして開催された「洞爺湖サミット」で、この80%削減目標が福田首相(当時)を含むG8首脳によって合意されました。
(注3)2010年は、電源の25%を原子力発電に依存していました。
(注4)ちなみに、私は、原子力エネルギーを活用することには賛成です。原子力エネルギーには使用済み核燃料の処理という大きな未解決の問題がありますが、少なくとも日本が必要なエネルギーを安定的に確保できるようになるまでは、原子力エネルギーには一定程度の依存をする必要があります。
(注5)「革新的エネルギー・環境戦略」2012年9月29日の「25シナリオ」の場合の一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギー量を推計。
(注6)出典:Solar Millennium AG.

(2013年7月29日掲載)

This page as PDF
塩沢 文朗
国際環境経済研究所主席研究員 元内閣府大臣官房審議官(科学技術政策担当)

関連記事

  • ポーランドの首都ワルシャワから、雪が降ったばかりの福島に到着したのは、2月2日の夜遅くでした。1年のうち、1月末から2月が、福島においては最も寒い季節だと聞きました。福島よりもさらに寒いワルシャワからやって来た私には、寒さはあまり気にならず、むしろ、福島でお目にかかった皆さんのおもてなしや、誠実な振る舞いに、心が温められるような滞在となりました。いくつかの交流のうち特に印象深かったのが、地元住民との食の安全に関する対話です。それは福島に到着した翌朝、川内村で始まりました。
  • 3.11福島原発事故から二年半。その後遺症はいまだに癒えておらず、原子力に対する逆風は一向に弱まっていない。このような状況で、原子力の必要性を口にしただけで、反原発派から直ちに「御用学者」呼ばわりされ、個人攻撃に近い非難、誹謗の対象となる。それゆえ、冒頭で敢えて一言言わせていただく。
  • 10月最終週に「朝まで生テレビ」に出た(その日は直前収録だったが)。原発政策がそのテーマだったが、自分の印象では、そのほとんどの時間が東京電力の法的整理論に関する議論に費やされたような気がする。出演者の方々のほとんどが法的整理に賛成で、私一人が消極的意見を述べ、周りから集中砲火を浴びた。
  • アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。 今週のアップデート 1)英国のEU離脱、エネルギー・気候変動対策にどのような影響を与えるのか 英国のEU離脱について、さまざまな問
  • NRCは同時多発テロの8年後に航空機落下対策を決めた 米国は2001年9月11日の同時多発テロ直後、米国電力研究所(EPRI)がコンピュータを使って解析し、航空機が突入しても安全は確保されると評価した。これで仮に、同時多
  • 先の国会の会期末で安倍晋三首相の問責決議可決などの政治の混乱により、政府が提出していた“電気事業法変更案”が廃案になった。報道によると、安倍首相は「秋の臨時国会で直ちに成立させたい」と述べたそうだ。
  • (書評:ディーター・ヘルム「Climate Crunch」) 我が国の環境関係者、マスメディアの間では「欧州は温暖化政策のリーダーであり、欧州を見習うべきだ」という見方が強い。とりわけ福島第一原発事故後は原発をフェーズア
  • カリフォルニア州でディアブロ・キャニオン原発が2025年までに停止することになった。これをめぐって、米国でさまざまな意見が出ている。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑