学術会議は違法な提言をやめよ

2015年02月16日 13:00
池田 信夫
アゴラ研究所所長

東京新聞によれば、学術会議が「放射性廃棄物の処理方法が決まらない電力会社には再稼動を認可するな」という提言を17日にまとめ、3月に公表するらしい。これは関係者も以前から懸念していたが、本当にやるようだ。

文書をみていないので確かなことはいえないが、もし学術会議が核廃棄物の処理を条件として原発の運転停止を提言するとすれば違法である。原子炉等規制法では、原発の停止命令を出せるのは「位置、構造若しくは設備が第43条の3の6第1項第4号の基準に適合していないと認めるとき」であり、核廃棄物の処理はこの技術基準に含まれていないからだ。

学術会議が2012年に出した提言についても、私はかねてから疑問を呈してきた。地層処分で問題になるのは、放射性廃棄物の経口毒性だが、プルトニウムの経口毒性は水銀や砒素より低い。有機水銀は水に溶けて魚などに蓄積するが、プルトニウムは水に溶けない。

しかも水銀や砒素の毒性は永遠に続く。毒性が数百年で無害なレベルに減衰するプルトニウムの「10万年後の安全が保証できないから原発は運転するな」というなら、有機水銀や砒素を使う化学プラントの運転も停止しなければならない。

この高レベル放射性廃棄物の処分に関する検討委員会の今田高俊委員長は原子力の専門家ではない社会学者であり、委員の構成も反原発派に片寄っている。もともとこの委員会に審議が依頼されたのは「国民に対する説明や情報提供のあり方」であり、処理方法ではない。

政府が法的根拠なく発電所の運転停止を命じるのは財産権の侵害であり、学術会議がそういう違法行為を勧告することは違法(学術会議法違反)である。そもそも原子力規制委員会に再稼動を認可する権限はない。今からでも遅くないので、学術会議の提言は撤回すべきだ。

追記:厳密にいうと炉規制法の「設備」の要件に核廃棄物の処理施設も含まれているが、現在は中間貯蔵でよい。これを違法にする法改正なら意味があるので、具体的な改正案を提言し、国会でバックフィットの条件を議論してほしい。

(2015年2月16日掲載)

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