使用ずみ核燃料の問題は解決できる

2015年02月23日 10:00
池田 信夫
アゴラ研究所所長

(アゴラ版)

経産省は高レベル核廃棄物の最終処分に関する作業部会で、使用ずみ核燃料を再処理せずに地中に埋める直接処分の調査研究を開始することを決めた。これは今までの「全量再処理」の方針を変更する一歩前進である。

写真・六ケ所村、日本原燃の再処理工場(同社提供)

核廃棄物の処理は、技術的には「枯れた」分野である。その毒性も管理方法もコスト評価も、世界的にほぼ定まっている。本書はその標準的な成果を、プリンストン大学のフォン・ヒッペルを中心とするチームがまとめたものだ。日本についての英文版は公開されている。(日本語翻訳「徹底検証・使用済み核燃料 再処理か乾式貯蔵か–最終処分への道を世界の経験から探る」(合同出版))

その結論を引用しよう:

1・プルトニウムは核兵器物質である。使用ずみ核燃料の中にあるプルトニウムは実質的にアクセス不能だが、分離ずみプルトニウムは、核テロリストにとって魅力的なターゲットになる。日本が毎年分離することを計画している8トンのプルトニウムは、長崎型原発1000発分をつくるのに十分な量である。

2・核燃料サイクルは経済的に意味がない。非在来型を含めたウランの埋蔵量は数百年分あり、再処理で節約する必要がない。再処理で節約できる効果は25%程度で、ウラン濃縮技術を高度化すれば実現できる。

3・再処理のバックエンドコストは直接処分に比べて2倍だが、それに見合う経済的利益がない。高速増殖炉は技術的に困難で、経済的に成り立たない。MOX燃料をつくるコストは高く、プルトニウムを無料でもらっても引き合わない。

4・最終処分場は存在する。六ヶ所村にキャスクによる乾式処理の中間貯蔵施設を設置し、各地の原発の核燃料プールの廃棄物を受け入れればよい。最終的には地層処分も六ヶ所村で可能だが、その検討は数十年先で十分だ。

5・残るのは、政治的課題である。「核廃棄物を50年以上は置かない」という国と青森県との協定を改正し、最終処分場として位置づける必要がある。県もすでに核燃料税の対象を「再処理される燃料」から「貯蔵される燃料」に切り替えている。

6・処理コストは最終的に電力会社が負担するので、彼らも直接処分に切り替えたほうが負担が小さくてすむ。再処理をやめると、国の「再処理等積立金」による融資が受けられなくなるが、これは目的を変更して直接処分を含めればよい。

これは役所も電力会社も含めて、関係者のほぼ一致した認識だろう。1980年代まではフランスのように核燃料サイクルを積極的に進めた国もあったが、現在では核兵器をもたないのに再処理を進めているのは日本だけだ。アメリカは余ったプルトニウムに懸念を示し、全量再処理の方針を転換するよう求めてきた。

技術的な解決策も明らかなので、残るのは「ここまで再処理工場をつくってきたのにもったいない」というサンクコストの錯覚だが、今までかかった2兆円以上のコストや処理技術のかなりの部分は最終処分場に転用できる。それよりも今後、無理して大量のプルトニウムを作り続けることによるコストは、10兆円を超える。この撤退の判断は、首相にしかできないだろう。

(2015年2月23日掲載)

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