仏、原発事故の緊急対応チーム創設-日本も作るべき

2015年06月29日 12:00
日本の将来を考える会(IOJ)理事

フランスの国防安全保障事務局(SGDSN)は「重大な原子力または放射線事故に係る国家対応計画」を発表した(2014年2月3日付)。フランスは原子力事故の国による対応計画をそれまで策定せず、地方レベルの対応にとどまっていた。しかし、日本の3・11福島第一原子力発電所事故を受け、原子力災害に対する国レベルの対応計画(ORSEC 計画)を初めて策定した。

それに呼応する形で、フランスの国有電力会社EDFは、福島の事故を教訓にして原子力事故即応部隊(FARN)を設立した。日本政府もこのような機関を創設することを検討したそうだが、地方自治体の権限との関係で断念したといわれている。むしろ電力事業者がまとまって東西2箇所でFARNのような緊急時対応の組織を作ることを検討したらよいのではないかと考える。

はじめに

2014年2月3日付でフランスの国防安全保障事務局(SGDSN)が「重大な原子力または放射線事故に係る国家対応計画」を発表した。フランスは国家対応計画をそれまで策定せず、地方レベルの対応にとどまっていた。しかし、2011年3月11日に発生した福島第一原子力発電所事故を受け、2012 年1月に発令した首相通達「重大な危機の対策のための政府組織に関する2012年1月2日の首相通達第5567/SG号」に基づき、原子力災害に対する国レベルの対応計画(ORSEC 計画)を初めて策定した。

それに呼応する形で、フランスの国有電力会社EDFは、福島の事故を教訓にして原子力事故即応部隊(FARN)を設立した。その概要を、平成27年(2015年)3月31日に日仏会館で開催されたEDFセミナーの結果を基に報告する。

(1)福島の事故を受けたEDFの対応

EDFは、フランスの唯一の原子力事業者である。58基の発電所を運転し、1基を建設している。福島の苛酷事故の後、2011年9月までにストレステストを行い、報告書をフランス原子力安全庁(ASN)に提出した。

ASNの見解と欧州のピアレビューを踏まえて、苛酷事故に対する対策の改善を行うこととし、2段階アプローチを採用した。原子力発電所は停止しなかったが、安全裕度は大きくした。発電所の極限状態を考え、物理的対応と緊急時対応とを実施した。緊急時対応として水と電気を補給する“最後の砦”としてFARN(Force d’Action Rapide du Nucléaire :Nuclear Rapid Response Force)を創設した。

(2)原子力事故即応部隊(FARN)の活動

図1に示すように、緊急事態が発生すると作戦プロセスが始動する。具体的作戦プロセスの責任は、発電所長がとり、FARNの本部は現場の支援に徹する。

●原子力安全エンジニアが、最初に40分以内に駆けつける:当初は当直と原子力安全エンジニアで対処する。
●アラームが鳴ると待機状態にある70名がサイトに1時間以内に駆けつける。その後、60名の2組が、最初の60名は12時間以内に、残りの60名は24時間以内に駆けつける。最終的に120名体制になる。このとき、携帯型の緊急設備を持ってくる。
●放射線の監視:県が行う。
●危機対応要員:危機以外の時には別の仕事をしており、待機状態でいる。こういった仕組みは30年前からあったが、福島の事故を経て、駆けつけられない状況もありうると考え、FARNを作った。この中には原子炉の運転員もいる。またロボットも使われるが、それは常時待機状態にある。
●FARNが使用するIT:完全に暗号化を行っている。
●訓練:体系的に行い、年間250回の訓練を行っている。
●メディアとの連絡は、政府当局とEDFの両方が行う。コミュニケーションは調整される。

(3)緊急時の行政との連携

原発事故により避難が必要になった場合、EDFは県知事に連絡する。(編集者注・フランスの中核的行政単位で96ある。)知事の下にある緊急対策室が関連する人に、事故情報は連絡し、各県も緊急対応計画を持っている。

○知事はすべてのステークホルダーに連絡をする義務がある。
○知事は住民を守る義務がある。
○指示をする権限をEDFに委託することがある。

緊急時の対応例
○ラジオ、車で放送する
○2km以内は、家に閉じこもる。
○サイレンによる警報、電話による一斉通報。

(4)FARNの組織と体系

●2015年に体制が出来上がった。
●機材運搬に船、ヘリコプターを利用。
●プロ意識を持つ。
●リーダーの指示に従う。
●厳しい訓練と練習を実施。(緊急時に適切に行動できるように)。
●2000万ユーロの予算。(1ユーロ=140円で28億円)
●複数の原子炉が困難に陥った時を想定。
●12時間以内で現場に到着し、24時間以内に活動を開始。
●運転交代要員を用意。
●苛酷事故(シビアアクシデント)を想定。
●放射線と化学リスクを考慮。
●全チームが活動できない可能性があることを念頭に置く。
●72時間は、外部支援なしに、自力でやっていけることが目標。
●EDFの職員とし、絶えず訓練し、いろいろなスキルを身につける。
●派遣するかどうかはEDF本部が決定。
●危機管理は、発電所の責任で、発電所所長の下で行う。
●パリに本部+4つの拠点(シボー、ダンピエール、パリュエル、ビュジェイ)に拠点。30人中心、70人が4つの地域、合計300人。(右図参照の事)
●EDFは、航空機の賃借契約をしている。
●可搬設備を使い、水、空気、電気、燃料を供給。
●可搬設備は、信頼性が高く、使いやすいものを選ぶ。信頼と交換性を重視する。200時間(FARNの活動期間:70時間+1週間)の信頼性試験。搬送ルートと取り扱いやすさを重視。

●緊急チームの構成
2炉に対し1チームで対応する。内訳は、
A) 1リーダー
B) 6人がプロセス担当(制御室でのプラント運転)
C) 6人が介入(可搬設備のセットなど)および運搬
D) 1人が支援、予備
合計14名である。

派遣条件として、福島のシナリオ、大規模停電を想定。活動方式は軍や消防隊に学び、想定状況を事前にビジュアル化して、訓練や対応の参考にしている。

また発電所から20~30kmのところに後方基地を置く。そこには放射線の専門家もいる。EDFの医師とも連携している。医師も待機の対象になる。

事故に対する対処方針は現場が決定する。政府レベルで行われるのは支援である。決定権を持っているのは現場の責任者というのがEDFの方針。したがってFARNの活動も発電所長が指示する。所長、副所長がいない場合当直長が責任者となりFARNは当直長の指揮下に入る。ただし、発電所の職員が危機管理できないときにはFARNが処置する。

(5)緊急時のEDFと公的機関との役割分担

緊急時にはEDFは、オンサイト緊急対応プランに基づいて発電所内での活動を担当し、公的機関はオフサイト緊急対応プランに基づいて発電所外の活動を担当する。公的機関は、国民に警報を出し、保護する。また、環境モニタリングを行う。負傷者および火災に支援する。さらに国民とメディアに情報を提供し、コミュニケーションをとる。

まとめ

リスク管理とは、これから起きるかもしれない危険に対して事前に対応しておこうというものである。フランスは、福島の苛酷事故を教訓として、危機対応能力を強化するため、事故発生後12時間以内に現場に到着し、24時間以内に活動を開始する緊急時即応チーム(FARN)を創設した。

日本政府もこのような機関を創設することを検討したそうだが、地方自治体の権限との関係で断念したと言われている。むしろ電力事業者がまとまって東西2か所でFARNのような緊急時対応の組織を作ることを検討したらよいのではないかと考える。

(2015年6月29日掲載)

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日本の将来を考える会(IOJ)理事

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