IAEA、福島事故最終報告書を発表

2015年09月07日 07:00

IAEA(国際原子力機関)は8月31日、東京電力福島第一原発事故を総括する事務局長最終報告書を公表した。ポイントは3点あった。

第1に事故の主な要因として日本の原子力関係者に「日本に原発が安全だという思い込みがあり備えが不十分だった」と指摘した。第2にこの知見を取り入れた対策の徹底を、世界の関係者に求めた。第3に福島と日本の市民の健康については、これまでのところ事故を原因とする影響は確認されていないと確認し、報告された被ばく線量が低いため、健康影響の発生率が将来、識別できるほど上昇するとは予測されないとしている。

この報告書は、40を超える加盟国からおよそ180人の専門家が参加してまとめ、1200ページ以上になる。

この中でIAEAは、事故の主な要因として「日本に原発は安全だという思い込みがあり、原発の設計や緊急時の備えなどが不十分だった」「責任がいくつもの機関に分散し、権限の所在が明確でなかった」と指摘。複数の原子炉の事故、自然災害の同時発生、全電源喪失の想定と事前対策が、東京電力と規制当局になかったとしている。一方で、事故後に規制権限の強化などの改善がみられたとも評価した。

その上で加盟各国にIAEAの勧告に基づく安全な原子力の活用を求めた。そしていくつかの自然災害が同時に発生することなどあらゆるリスクを考慮する、基準に絶えず疑問を提起して定期的に再検討するなど、「安全文化」と呼ばれる関係者の態度が必要と提言している。

また福島の甲状腺検査で異常が見つかったことには、事故と関係づけられる可能性は低く、この年代の子どもたちの自然な発生を示している可能性が高いと分析。一方で、住民の中には、不安感やPTSD=心的外傷後ストレス障害の増加など、心理面での問題があったと指摘しており、その影響を和らげるための対策が求められると強調している。

リンク・「IAEA福島第一原子力発電事故・事務局長報告書 巻頭言及び要約」(日本語版)

(2015年9月7日掲載)

This page as PDF

関連記事

  • 石炭火力発電の建設計画が次々に浮上している。電力自由化をにらみ、経済性にすぐれるこの発電に注目が集まる。一方で、大気汚染や温室効果ガスの排出という問題があり、環境省は抑制を目指す。政府の政策が整合的ではない。このままでは「建設バブルの発生と破裂」という、よくあるトラブルが発生しかねない。政策の明確化と事業者側の慎重な行動が必要になっている。
  • 米朝首脳会談の直前に、アメリカが「プルトニウム削減」を要求したという報道が出たことは偶然とは思えない。北朝鮮の非核化を進める上でも、日本の核武装を牽制する必要があったのだろう。しかし日本は核武装できるのだろうか。 もちろ
  • 風評被害: 根拠のない噂のために受ける被害。特に、事件や事故が発生した際に、不適切な報道がなされたために、本来は無関係であるはずの人々や団体までもが損害を受けること。例えば、ある会社の食品が原因で食中毒が発生した場合に、その食品そのものが危険であるかのような報道のために、他社の売れ行きにも影響が及ぶなど。
  • ロシアの原子力企業のロスアトム社は2016年に放射性ヨウ素125の小線源の商用販売を開始する。男性において最も多いがんの一つである前立腺がんを治療するためのものだ。日本をはじめとした国外輸出での販売拡大も目指すという。
  • 石炭が重要なエネルギー源として、再び国際的に注目されている。火力発電に使った場合に他のエネルギー源と比べたコストが安いためだ。一方で石炭は、天然ガスなどよりも燃焼時に地球温暖化の一因とされる二酸化炭素(CO2)の発生量が多い。
  • (GEPR編集部より)12月8日に開催されたアゴラシンポジウムで行われた、原子力委員会の鈴木達治郎氏の基調講演で使われた、プレゼンテーション資料を公開します。鈴木様に感謝を申し上げます。内容をたどれば、基調講演の内容が、ほぼ分かります。
  • オバマ米大統領が6月、地球温暖化防止に向けた新しい行動計画を発表した。環境対策の充実を経済発展につなげる「グリーン・ニューディール政策」は、オバマ政権第1期の目玉政策であったが、取り立てて成果を残せないままに終わった。
  • 都知事選では、原発を争点にすべきではないとの批判がある。まさにそうだ。都知事がエネルギー政策全体に責任を持てないし、立地自治体の首長でもないから、電力会社との安全協定上の意見も言えない。東電の株主だと言っても、原発は他の電力会社もやっている。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑