風評被害を一掃!福島産品応援の動き広がる【復興進む福島6】

2015年09月28日 12:00

福島産食品などがむやみに避けられる風評被害は、震災から4年以上たってもなお根深く残り、復興の妨げとなっている。風評被害払しょくを目指す活動は国や県だけでなく、民間でも力を入れている。消費者の安心につながる食事全体での放射線量の調査や、企業間で連携した応援活動など、着実に広がりを見せている。

福島が全国2位の出荷量の名産の桃 (提供)福島県観光協会

食事の調査で安心広げる

消費者庁が行う風評被害に関する意識調査では、「福島県産品の購入をためらう」という回答が、今年2月の調査でも全体の2割弱を占めた。また、東京都中央卸売市場での福島県産品の単価は、震災以降どの品目も全国平均より低い水準が続く。価格差は徐々に改善されているが、震災前の状態までは戻っていない。

県では、農畜水産物の放射性物質量のモニタリングに加え、米や牛肉では全量検査を実施。特産品のあんぽ柿は、一大産地の伊達市のモデル地区で全量検査の体制を取る。テレビコマーシャルやトップセールスに加え、県産品の魅力を伝えるシンポジウムやメディアセミナーなども開催し、PRに尽力している。

そうした中、生活協同組合コープふくしまでは組合員の不安に向き合い、食事の調査を2011年11月から実施している。普段の食事をもう1食分余計につくり、セシウム134、137、カリウム40を測定する取り組みだ。参加者は2日分の計6食と、間食や飲料も含めて摂取したものすべてを冷凍保存する。日本生活協同組合連合会(日本生協連)の商品検査センターに送り、ゲルマニウム半導体検出器(検出限界値は1kg当たり1ベクレル)に約14時間かけ、測定結果を参加者にフィードバックする。ほかの生協でも実施しているが、コープふくしまでは11年度に100家庭、12、13年度に各200家庭、14年度に100家庭を対象とし、多くのデータを蓄積してきた。今年度も100家庭で行う予定だ。

(図表1)100世帯の陰膳 (コープ福島資料)

これまでにセシウムが検出された件数はわずかで、最大値は初年度の11ベクレル。検出の放射性物質はどの食品にも含まれるカリウム40が大半だ。検出数、検出値ともに年度を経るごとに減り、14年度は全食事で検出されなかった。宍戸義広常務は、「市場流通している食品を使う限り、食事全体でも心配するような値にはならない」と話す。傾向が掴めるにつれ組合員の安心感も広がってきたようで、「行政も行っていない調査に参加できて良かった」、「福島で暮らすうえでこうした調査は大切」との声が挙がっている。「不安を持たれる人も多く情報発信を継続していく。自主避難を続ける人もいる中で調査を継続する意義は大きい」(宍戸常務)と説明する。

また、農協や漁協などほかの協同組合と連携する「福島応援隊」では、夏は桃、冬はリンゴなどの販売を協賛企業などにあっせん。基幹産業の復興を後押ししようと生産者からは通常の価格で買い取り、正常な流通の仕組みを取り戻すことを目的としている。

今夏の桃の販売量は4400ケースに上るなど、販売先の裾野が広がってきた。「震災前から福島産は西日本にあまり出回らなかったが、全国に発信できることが大きな成果」(根本茂・営業企画担当部長)と実感する。注文票の裏面には生産者へのメッセージ欄を設け、これまでに約4000人分の声が届けられた。応援隊をきっかけに、産地や生協と交流する企業も出てきている。

企業発の取り組みも着々と

首都圏でも企業発の動きが出ている。現在17社が参加する「ふくしま応援企業ネットワーク」は、個別に行ってきた支援を大手企業が協力して取り組もうと、14年11月に発足。発起人の東京電力が事務局を務める。

活動内容は県の意向も聞きながら固めてきた。これらの企業は、社員食堂での福島産食材の取り扱いや、企業マルシェ(企業が行う農産品などの展示販売)の開催、会議や観光での福島県内施設の利用促進などを柱に掲げる。社食の活用では、15年度は福島産米が9社の食堂約280カ所で常時提供され、消費量は約500トンになる見込み。企業マルシェは14年度に8社でのべ127回開催し、売上が4900万円となった。

社ごとの活動内容は各自の判断に任せている。例えば鹿島建設では、社内の売店で取り扱う手土産を福島のものに変え、福島産をアピールするシールも新たにつくった。ほかに、マルシェをビルのオープンスペースで開催し社員以外にも販売したり、福島産品の通販利用を子会社も含め呼び掛けたりと、多様な内容となっている。

今年5月に郡山市で開いた定時総会後には、参加者が農園を訪れて生産者と意見交換した。今後、農業体験などの新たな活動も各社に呼びかける予定だ。「現在は福島全体の応援を意識した活動だが、ゆくゆくは浜通りの復興再生をどう後押しするかを考えていきたい」(ネットワーク事務局)と、息の長い活動を目指す構えだ。

小売り大手のセブン&アイ・ホールディングスは、東北の被災企業などと連携した「東北かけはしプロジェクト」を11年から実施。今年7月からの第12弾では、復興庁と連携した商品など約1900アイテムを取り扱う。福島産品では、県オリジナル品種の米「天のつぶ」の加工食品などが並ぶ。「東北各県の農畜水産物を新たな食べ方も含め提案し、ファンをつくっていきたい」(同社)という。

震災前以上の水準目指す

県も今年度、風評被害対策の見直しを進めている。風評・風化対策を強化するため、部局横断的な取り組みを検討するプロジェクトチームを立ち上げた。「これまで安全性やおいしさのイメージアップをPRしてきたが、さらに取引量や価格をもとの状態に戻したい」(県農産物流通課)と強調する。東京には県が中心になってアンテナショップ「日本橋ふくしま館MIDETTE」を開設している。

今年のキャッチコピーは「ふくしまプライド」。生産者が誇りを持ってつくったものを食べてもらいたいとの思いがこもっている。「ブランド力や産地競争力を高め、震災以前の水準をさらに飛び越えるという気概で取り組みたい」(同)と前を向く。

(この記事はエネルギーフォーラム9月号に掲載させているものを、同社から転載の許諾を得た。関係者の方に感謝申し上げる。)

(2015年9月28日掲載)

This page as PDF

関連記事

  • 2015年12月、米国アラスカ州民は州政府から嬉しくないクリスマス・プレゼントを受け取った。35年ぶりの所得税再導入と、「石油配当金」(4人家族の標準家庭で毎年8000ドル=約96万円)の半減を検討している、というのだ。
  • 福島県内で「震災関連死」と認定された死者数は、県の調べで8月末時点に1539人に上り、地震や津波による直接死者数に迫っている。宮城県の869人や岩手県の413人に比べ福島県の死者数は突出している。除染の遅れによる避難生活の長期化や、将来が見通せないことから来るストレスなどの悪影響がきわめて深刻だ。現在でもなお、14万人を超す避難住民を故郷に戻すことは喫緊の課題だが、それを阻んでいるのが「1mSvの呪縛」だ。「年間1mSv以下でないと安全ではない」との認識が社会的に広く浸透してしまっている。
  • 私は、一般の方には防衛関係の仕事をしたイメージが強いと思います。しかし政治家としては農業関係の仕事を重ねてきました。宮沢内閣では政務次官、森内閣では副大臣、麻生内閣では農水大臣の仕事をさせていただきました。そして最近は地方創生大臣として、日本中を回り、地方の創生と農業の可能性について考えてきました。
  • 池田・石破さんの意見には、印象に残る点がいくつかありました。メディアがこの問題、安全に傾きがちな面はあるという指摘ですが、小島さん、この点をどう考えますか。
  • 143名の自民党の衆参両議院議員でつくる研究会・電力安定供給推進議員連盟(会長細田博之衆議院議員)は7月8日、同党の原子力規制に関するプロジェクトチーム(PT)(委員長・吉野正芳衆議院議員)に、それまでまとめていた「「原子力規制委員会設置法3年以内の見直し」等に関する緊急提言」を提出した。
  • 環境保護局(EPA)が2014年6月2日に発表した、発電所からのCO2排出量を2030年までに2005年に比べて30%削減することを目標とした規制案「クリーン・パワー・プランClean Power Plan」。CO2排出削減の目標達成の方法として、石炭火力から天然ガス火力へのシフト、既存発電技術の効率向上、省エネ技術の導入による促進などとともに、再生可能エネルギーや原子力発電などの低炭素電源を開発していくことが重要施策として盛り込まれている。
  • 経済産業省は1月14日、資源・エネルギー関係予算案を公表した。2015年度(平成27年度)当初予算案は15年度7965億円と前年度当初予算比で8.8%の大幅減となる。しかし14年度補正予算案は3284億円と、13年度の965億円から大幅増とし、総額では増加となる。安倍政権のアベノミクスによる積極的な財政運営を背景に、総額での予算拡大は認められる方向だ。
  • NHK
    NHK 6月5日公開。福井県にある高浜原子力発電所について、関西電力は先月再稼働させた4号機に続いて、3号機についても6日午後2時ごろに原子炉を起動し、再稼働させると発表しました。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑