今後の再エネの普及を左右する「日本版コネクト&マネージ」の行方

2018年01月23日 06:00
宇佐美 典也
エネルギーコンサルタント

少し前の話になるが2017年12月18日に資源エネルギー庁で「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」と題する委員会が開催された。この委員会は、いわゆる「日本版コネクト&マネージ」(後述)を中心に再生可能エネルギーの大量導入とそれを支える次世代電力ネットワークの在り方について議論する予定であり、再エネ業界から大きく注目されている。

さて同委員会では日本の再エネ業界の課題について以下の四つの課題を挙げ、合わせてそれぞれに対して取り組みの方向性を示している。

①依然として日本の再エネの発電コストは欧州の二倍で国際的に高い水準にある。現在まで再エネ比率の5%の向上(10%→15%)で年間2兆円の国民負担が生じているが、エネルギーミックス水準に準拠して考えると今後追加1兆円の国民負担であと9%ほど再エネ比率を向上する必要があり(15%→24%)、発電コストの引き下げが急務となる。そのため今後は買取価格入札の活用等により価格低減を目指す。

②既存系統と再エネ立地ポテンシャルの不一致により「再エネ電源を作りたくとも系統の空き容量が存在せず繋げない」という系統制約の問題が顕在化している。こうした状況の中で従来の系統運用方針の下では系統増強に要する時間と費用が増大している。今後は既存系統を最大限活用する柔軟な運用(日本版コネクト&マネージ)や系統費用の負担の見直しや電力ネットワークの再構築を進める必要がある。

③太陽光発電および風力発電という変動再エネの導入が拡大したことにより、系統全体の調整力が不足してきている。当面は火力発電の下げ代で周波数調整することになるが、将来は蓄電池の導入で調整力のカーボンフリー化を目指す。

火力発電の調整力については当面容量市場・需給調整市場により調整力を確保する枠組みを作り、再エネに関しては変動再エネ側で調整力を確保する仕組みを作り、また並行して将来の調整力のカーボンフリー化に向けて蓄電池開発や水素の活用を進める。

④長期安定発電の開発を支える環境が未成熟な他、洋上風力等の新たな電源は立地制約が厳しく、結果として再エネ電源の開発が太陽光発電に偏っている。今後は規制のリバランスや国際競争力のある企業の育成に努める

このように委員会の議題は再エネ業界全般にわたる総花的なものだが、このうち①、③、④に関してはある程度方向性が見えており、前述の通り②の「日本版コネクト&マネージ」の導入を含む系統利用方針の見直しが議論の中心となると見込まれる。

では我が国の系統の利用状況はどの様な状況なのかを確認しよう。国際エネルギー機関(IEA)の分類では系統の利用状況は以下の4つの段階に分けられる。

フェーズ1:系統に対して顕著な負荷なし

フェーズ2:オペレーターが認識できる負荷が発生

フェーズ3:需給の変動に対応できる調整力が必要となる

フェーズ4:変動制エネを大前提とした系統と発電機能が必要となる

この基準に照らすと、日本全体ではフェーズ2、九州ではフェーズ3と言われる段階にあるとされている。固定価格買取制度(FIT)の施行前は日本はフェーズ1とされていたので、日本の系統運用が新たな段階に入ったことは間違いないだろう。国際比較の観点では系統がメッシュ型で柔軟性に富む欧米各国は変動再エネの導入比率が高く、デンマークなどは再エネ導入比率が50%を超えている。他方日本の串刺し型の電力系統は、変動再エネの導入には不向きで長期的にはインフラの再整備が不可欠となるが、当面は運用によりどれだけ再エネの導入比率が高められるかが重要となり、それがまさにこの委員会の論点となる。

ここで現状の系統運用方針における系統の空容量の考え方に関して述べておく。現在国内で整備されている電力系統の回線数は故障発生時に影響が広範囲に及ぶと考えられる基幹系統を除き、送電線 1 回線故障時の供給信頼度、送電線作業停止を考慮して、原則として 2 回線とされている。つまり現状の運用方針では、設備容量の全てを使うことなく、その半分は緊急用に完全に確保していることにある。そのため一般に「もう空き容量がなく新たに電源を接続する余地がない」と言われている送電線網も、理由があるとはいえ、その実は半分程度しか設備容量を活用していないことになる。

また日本の系統ルールは「Invest &connect(増設後の接続)「First Come First served(先着優先)」という二つの原則に準拠しており、こうした現状の系統利用ルールでは申し込み順に系統枠が確保されることになるため、実際には系統網に繋がれていない電源の予約分で占拠している系統枠が存在し、他方で系統への接続枠を確保したものの増設工事が進まず無為に待機状態にあるプロジェクトも多数存在することになる。長いプロジェクトでは系統増設工事の10年待ちというプロジェクトも存在する。この様な状況は系統の有効利用という観点でも、再エネ電源の早期普及という観点でも好ましくない。

そこで現在議論されているのが系統利用の「Connect & Manage(接続後の運用)」の転換である。一部系統混雑を認めて系統の予備容量も含めて活用することで、本来必要な系統の増設工事の完了を待たずとも、条件付きで新規電源の接続を認めるというものである。例えば増設工事の完了待ちの開発プロジェクトに関しては、予備用に確保している2回線のうちの1回戦を活用して新規電源の接続を認めるが、事故やメンテナンス時には発電の停止を義務付けるなどの運用が想定される。このような運用方法をとられれば、接続当初は出力制御を受ける可能性が高くなるが、増設工事を待たずとも早期の段階でプロジェクトを進めることができ、増設工事が進むにつれ徐々にその頻度が下がってくることになる。他方で系統運用が難しくなるので、高度な技術が求められることにもなる。

まだ議論が始まったばかりで「日本版コネクト&マネージ」の詳細ははっきりしないが、結論によっては系統制約を大幅に緩和することにつながるため、再エネ業界としては大きな期待が寄せられている。他方で安易に予備容量を開放すると系統網が脆弱になりかねず、委員会にはバランスの取れた議論が求められるところである。

*注:資料注の図表の引用は全て経済産業省HPより

This page as PDF

関連記事

  • 菅直人元首相は2013年4月30日付の北海道新聞の取材に原発再稼働について問われ、次のように語っている。「たとえ政権が代わっても、トントントンと元に戻るかといえば、戻りません。10基も20基も再稼働するなんてあり得ない。そう簡単に戻らない仕組みを民主党は残した。その象徴が原子力安全・保安院をつぶして原子力規制委員会をつくったことです」と、自信満々に回答している。
  • スマートジャパン
    スマートジャパン 3月3日記事。原子力発電によって生まれる高レベルの放射性廃棄物は数万年かけてリスクを低減させなくてならない。現在のところ地下300メートルよりも深い地層の中に閉じ込める方法が有力で、日本でも候補地の選定に向けた作業が進んでいる。要件と基準は固まってきたが、最終決定は20年以上も先になる。
  • トランプ大統領のパリ協定離脱演説 6月1日現地時間午後3時、トランプ大統領は米国の産業、経済、雇用に悪影響を与え、他国を有利にするものであるとの理由で、パリ協定から離脱する意向を正式に表明した。「再交渉を行い、フェアな取
  • 日本の電力料金は高い、とよく言われる。実際のところどの程度の差があるのか。昨年8月に経済産業省資源エネルギー庁がHPに掲載した資料によれば、為替レート換算、購買力平価換算とも2000年時点では、日本の電力料金は住宅用・産業用とも他国と比較して非常に高かった。
  • 経済産業省は再生可能エネルギーの振興策を積極的に行っています。7月1日から再エネの固定価格買取制度(FIT)を導入。また一連のエネルギーを導入するための規制緩和を実施しています。
  • りょうぜん里山がっこうを会場として、中山間地域のみなさんや福島大学の学生を中心に勉強会を開催した。第一回は、2014年10月4日に国立保健医療科学院の山口一郎上席主任研究官をゲストに迎え、食品基準値の疑問に答えてもらい、損失余命の考え方が役立つかどうかや参加者のニーズを話し合った。
  • 6月の公開前後にニューヨーク・タイムス、ワシントンポストなど主要紙の他、NEI(原子力エネルギー協会)、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American:著名な科学雑誌)、原子力支持および反原子力の団体や個人などが、この映画を記事にした。
  • 前回ご紹介した失敗メカニズムの本質的構造から類推すると、米国の学者などが1990年代に行った「日本における原子力発電のマネジメント・カルチャーに関する調査」の時代にはそれこそ世界の優等生であった東電原子力部門における組織的学習がおかしくなったとすれば、それは東電と社会・規制当局との基本的な関係が大きく変わったのがきっかけであろうと、専門家は思うかもしれない。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑