原子力規制委員会はもっと早く審査してほしい

2018年03月20日 06:00
諸葛 宗男
NPO法人パブリック・アウトリーチ・上席研究員 元東京大学特任教授

GEPRフェロー 諸葛宗男

はじめに

原発の安全対策を強化して再稼働に慎重姿勢を見せていた原子力規制委員会が、昨年12月27日、事故炉と同じ沸騰水型原子炉(BWR)の柏崎・刈羽6,7号機に4年以上の審査を経てようやく適合性審査の合格証を出した。3月14日には大飯3号機が起動し事故後6基目の原発再稼働となった。再稼働する原発が増えてきたため、国民には原子力規制委員会の姿勢を疑う向きもあるようだが、私は審査が遅すぎてこのままではエネルギー基本計画の目標すら達成できないことを危惧している。そこで原子力規制委員会の審査の実態について検証した。

原子力規制委員会の適合性審査に4年以上もかけて良いのだろうか?

事故から7年経った現在、再稼働した原子力発電所はたった6基、適合性審査に合格したのは14基である。しかもその内の1基、伊方3号機は仮処分で停止している。問題は審査期間が長いことである。加圧水型炉(PWR)の大飯3,4号機は3年10ヵ月、沸騰水型炉(BWR)の柏崎・刈羽6,7号機はなんと4年3ヵ月も掛かっている。最初の川内1,2号機が1年2ヵ月で合格したのとは大違いである。

図1

図1

図1で高浜1,2号機、美浜3号機の3基の審査期間が短いのは、これらの3基がいずれも40年超運転の延長審査だったためである。原子力規制委員会が発足した2013年7月8日に変更許可申請したのにまだ認可されていないのは北海道電力の泊1,2,3号機だが、今日認可されても審査期間は4年8ヵ月で、柏崎・刈羽6,7号機の最長記録を遥かに上回ることになる。標準審査期間のことを言った官僚がいたが、こんな異常に長い審査をどう弁明するのだろうか。普通の原発も高浜1,2号機、美浜3号機の3基と同じ程度の期間で審査できると思うが、なぜそれが出来ないのか理解できない。

再稼働が今のペースでは政府目標のベストミックスは達成できない

政府は2015年7月に2030年の総発電電力量を10,650億kWhに抑制し、その内の22~20%を原子力発電所で賄うとした長期エネルギー需給見通しを示した。再稼働が今のペースだと2030年に稼働している原子力発電所は多くても32基だ。残存寿命の短い順に32基並べると出力合計は約3089万kWになる。8760h/年で70%稼働すると189億kWhだから18%にしかならない。20%を達成するためには36基3555万kWの稼働が必要になる。36基の出力合計は218億kWhだから20%となる。2030年までに36基の再稼働が必要なのである。あと12年で30基の再稼働が求められることになる。問題は2034年から運転年数が60年に達する原子力発電所が発生することである。

2040年まで見ても’34に高浜1号(82.6万kW)、’35に高浜2号(82.6万kW)、’36に美浜3号(82.6万kW)が続けて廃炉になり、1年置いて’38に東海第二(110万kW)が運転期間60年に達する。米国では運転期間を80年に延長するための準備が始まっているが、我が国でも待ったなしである。もし、現状のまま運転期間が40年から1回20年の延長しか認められない現在のルールのままだった場合、2040年までに既述の4基357.8万kWの出力が減少する。さらに2045年までには11基878万kWもの出力が減少してしまう。40年運転期間60年超の運転を認めるよう延長する法改正を急ぐべきである。

電気料金に含まれる年間2.5兆円の原発費用に見合う発電を期待すべき

表1

表1

電力会社は原子力発電所の稼働・不稼働に拘わらず原価償却している。すなわち、電力会社は原発であろうがなかろうが所有設備を償却しているのである。欄1には各電力会社の2013年3月末時点の残存簿価を示している。全国合計で2兆8082億円となっている。竹濱[注1]は東電の原子力発電所の費用は2012年~2014年の3年間平均で年間6727億円だとしている。

少し乱暴な仮定であるが、他の電力会社も原発の残存簿価[注2]比例で原発の費用が掛かっているとすれば、各電力会社の年間の原発費用は表1の欄2の通りとなり、全国合計で約2.5兆円となる。毎年2.5兆円も原発の償却費等の原価を負担しているのだから経済合理性の観点から発電させるのは当然である。再稼働に反対するのは全く奇異だ。反対している人達は2.5兆円もの原発の償却費等を自分たちが負担させられていることを多分知らない。どこかの篤志家が支払ってくれていると思い込んでいるに違いない。

 

[注1] 竹濱朝美「東京電力の料金原価に基づく原子力発電の費用」, 立命館産業社会論集,第48巻,第3号,p.49表6,2012年12月
[注2] 資源エネルギー庁「原子力発電所の廃止措置を巡る 会計制度の課題と論点」, 総合資源エネルギー調査会 電気料金審査専門委員会 廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループ(第1回)資料5,p.11,2013.6.25

This page as PDF
諸葛 宗男
NPO法人パブリック・アウトリーチ・上席研究員 元東京大学特任教授

関連記事

  • 東芝の損失は2月14日に正式に発表されるが、日経新聞などのメディアは「最大7000億円」と報じている。その原因は、東芝の子会社ウェスティングハウスが原発建設会社S&Wを買収したことだというが、当初「のれん代(買収
  • アゴラ研究所は、9月27日に静岡で、地元有志の協力を得て、シンポジウムを開催します。東日本大震災からの教訓、そしてエネルギー問題を語り合います。東京大学名誉教授で、「失敗学」で知られる畑村洋太郎氏、安全保障アナリストの小川和久氏などの専門家が出席。多様な観点から問題を考えます。聴講は無料、ぜひご参加ください。詳細は上記記事で。
  • サウジアラビアのサルマン副皇太子が来日し、「日本サウジアラビア〝ビジョン2030〟ビジネスフォーラム」を開いた。これには閣僚のほか、大企業の役員が多数詰めかけ、産油国の富の力とともに、エネルギー問題への関心の強さを見せた。
  •   人形峠(鳥取県)の国内ウラン鉱山の跡地。日本はウランの産出もほとんどない 1・ウラン資源の特徴 ウラン鉱床は鉄鉱石やアルミ鉱石などの鉱床とは異なり、その規模がはるかに小さい。ウラン含有量が20万トンもあれば
  • エネルギーは、国、都市、そして私たちの生活と社会の形を決めていく重要な要素です。さらに国の安全保障にも関わります。日本の皆さんは第二次世界大戦のきっかけが、アメリカと連合国による石油の禁輸がきっかけであったことを思い出すでしょう。
  • 2015年2月24日公開。澤田哲生氏(東京工業大学助教)、池田信夫氏(アゴラ研究所所長)が出演。司会は石井孝明氏(ジャーナリスト)。
  • ロイター
    4月13日 ロイター。講演の中で橘川教授は「日本のエネルギー政策を決めているのは首相官邸で、次の選挙のことだけを考えている」と表明。その結果、長期的視点にたったエネルギー政策の行方について、深い議論が行われていないとの見解を示した。
  • 東日本大震災で事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所を5月24日に取材した。危機的な状況との印象が社会に広がったままだ。ところが今では現地は片付けられ放射線量も低下して、平日は6000人が粛々と安全に働く巨大な工事現場となっていた。「危機対応」という修羅場から、計画を立ててそれを実行する「平常作業」の場に移りつつある。そして放射性物質がさらに拡散する可能性は減っている。大きな危機は去ったのだ。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑