冬までに泊原発を再稼動して命を守れ

2018年09月08日 15:00
池田 信夫
アゴラ研究所所長

北海道の地震による大停電は復旧に向かっているが、今も約70万世帯が停電したままだ。事故を起こした苫東厚真火力発電所はまだ運転できないため、古い火力発電所を動かしているが、ピーク時の需要はまかないきれないため、政府は計画停電を検討している。北海道の電力は足りてないのだ。北海道の電力供給がぎりぎりで危険な状態にあることは、以前から多くの専門家が指摘してきた。

今回の大停電の直接の原因は、震源の真上にあった苫東厚真発電所が地震で停止したことだ。図のように苫東は北海道の電力網のハブのような位置にあり、3基で出力165万kWと北海道の最大消費電力380万kWの4割を発電している。これがすべて地震で停止したため、事故が同じ送電網の他の発電所に連鎖的に波及したのだ。

大停電が起こるときは徐々に起こるのではなく、一つの送電網のすべての発電所が一挙にダウンする。電力供給は「同時同量」で、つねに需要と供給が一致していないといけない。電力需要が供給を上回って発電所に過大な負荷がかかると、電力の周波数が下がり、電気設備や電子機器が壊れるので、発電所が送電網から切り離される。

今回は苫東が停止して、同じ送電線につながる他の発電所に大きな負荷がかかった。これを他の発電所で吸収できれば送電は続けられるが、地震の発生当時、苫東は全電力の55%を発電していたので、送電網全体で供給が不足して発電所が送電網から遮断され、連鎖的に大停電が起こったのだ。

つまり今回の事故の最大の原因は電力供給が需要を大幅に下回り、苫東の停止による負荷を他の発電所が吸収できなかったことにある。一時的には本州との連系線も動いたようだが、これは最大でも60万kWで、苫東の脱落をカバーできない。

これをマスコミは「北海道電力が発電所を集中配置したためだ」と批判しているが、図でもわかるように泊原発(207万kW)は苫東から100km近く離れた場所に分散配置されており、今回は震度2だった。通常なら原発は(地震の起こった)深夜の3時にはフル稼働しているので、苫東が落ちても残りの約100万kWの負荷は、他の火力と北本連系線で吸収できたはずだ。

ところがその泊が動かせない。安全審査はほぼ終わったが、「敷地内の断層が12~3万年以降に動いたかどうか」をめぐって紛糾しているからだ。その基準は曖昧で法的根拠もないが、北電は設備の増設をためらってきた。人口の減少する北海道で発電所を増やすと、泊が動いたら設備が大幅に余ってしまうからだ。

安全性の問題というなら、12万年前の断層より、今年の冬にまた大停電が起こるリスクのほうがはるかに大きい。上にも書いたように大停電の原因は発電所に過大な負荷がかかったことだから、地震だけでなく送電線の断線などの技術的な事故でも起こりうる。

根本的な問題は、北海道の電力インフラが綱渡り状態にあることだ。今まで経産省も北海道庁も責任を北電に押しつけて逃げてきたが、真冬に大停電が起こったら多くの凍死者が出るだろう。そのときは行政の責任が問われる。北海道民の命を守るために、泊の再稼働を急ぐべきだ。

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