北海道大停電の責任は安倍政権にもある
今回の大停電では、マスコミの劣化が激しい。ワイドショーは「泊原発で外部電源が喪失した!」と騒いでいるが、これは単なる停電のことだ。泊が運転していれば、もともと外部電源は必要ない。泊は緊急停止すると断定している記事もあるが、泊は震度2で、苫東とは送電系統が別なので緊急停止しない。
原発は出力を調整できないベースロード電源なので、24時間フル稼働する。泊の207万kWが動いていたら、深夜3時の消費電力300万kWを供給するには、あと約100万kWあればいい。実際のオペレーションがどうなっていたかはわからないが、次の表のように北電の火力は406万kWあるので、その1/4の出力を各発電所に分散して運転することはむずかしくないだろう。
苫東が落ちた原因は、北海道全体の消費電力の55%を3基の発電所で供給し、ぎりぎりの状態で運転していたからだ。泊が動いていれば出力に余裕があるので、3基すべて落ちることは考えにくい。もし落ちたとしても、残りの火力は241万kWある。深夜なのですべて動いているわけではないが、出力に2倍以上の余裕があれば、稼働率を上げて苫東の負荷を吸収できただろう。

安倍首相と原発政策を所管する世耕経産相(官邸サイトより:編集部)
要するに問題は、北海道の発電能力780万kWのうち200万kWが欠け、残り580万kWの発電所で電力を供給しているということだ(これ以外にも新電力の太陽光・風力があるが、大停電では役に立たない)。北海道の2017年冬の最大消費電力は525万kWだったから、すべての火力をフル稼働しても余裕は55万kWしかない。また苫東4号機(70万kW)のような大きな火力が落ちたら大停電だ。
これを防ぐ有効な方法は、泊の再稼働である。それですべてが解決するとはいわないが、それをやらないで小さな発電所を増設しても役に立たない。北電も電力自由化時代に、そんな投資をするわけには行かない。泊が稼働したら、大幅な過剰設備になってしまうからだ。
このような変則的な状態を6年も続けているのは異常だ。原子炉等規制法では新規制基準の適合性は運転と並行して審査することになっており、これを「田中私案」という個人的メモで無期限に止めている規制委員会の運用は違法である。こういう状態を作り出したのは民主党政権だが、法的根拠のない「活断層」問題で暴走する規制委員会を止められない安倍政権にも大停電の責任がある。

関連記事
-
GEPRとアゴラでは、核燃料サイクル問題について有識者の見解を紹介した。そして「日本の核武装の阻止という意図が核燃料サイクル政策に織り込まれている」という新しい視点からの議論を示した。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 5月22日に放映されたNHK・ETVの「サイエンスZERO」では、脱炭素社会の切り札として水素を取り上げていたが、筆者の目からは、サイエンス的思考がほとんど感じられない内容だっ
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 地球温暖化というと「猛暑で熱中症が増える」ということばか
-
総選挙とCOP26 総選挙真っ只中であるが、その投開票日である10月31日から英国グラスゴーでCOP26(気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開催される。COVID-19の影響で昨年は開催されなかったので2年ぶりとなる
-
みなさんこんにちは。消費生活アドバイザーの丸山晴美です。これから、省エネやエコライフなど生活に密着した役立つお話をご紹介できればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
-
はじめに 日本の放射線利用では不思議なことが起きている。胸部エックス線検査を受けたことが無い人はいないだろうし、CT(Computed Tomography)やPET(陽電子放射断層撮影)も広く知られ実際に利用した人も多
-
「原発事故に直面した福島のガンの増加の可能性は、仮にあるとして、0.0002%?0.0000の間。それなのに人々は避難を強制され、毎日表示されるガイガーカウンターの数値に囲まれ生活している」。ナレーションの後に原発と、福島の人々の姿、そして除染の光景が示される。これは必要なことなのだろうか
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間