FIT法改正議論の現状②〜FITインバランス特例、FIP、廃棄積立など〜

2019年07月13日 06:00
宇佐美 典也
エネルギーコンサルタント

・本稿では先月に続いて2020年度に迫ったFIT法の抜本改正をめぐる議論の現状を紹介したい。具体的には、5月30日、6月10日にそれぞれ開かれた第14回・第15回再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会の議論について、太陽光発電業界に与える影響を中心にまとめることとしたい。

・第14回、第15回の委員会では、これまでFIT による固定価格―全量買取制度によって電力市場から事実上隔離されていた再生可能エネルギー市場を、電力市場へ統合するための方針を中心に議論がなされた。以下、特に議論された、FITインバランス特例、FIP、廃棄積立などの論点について前回に続きQ &A方式でまとめていく。

Q1:そもそも再生可能エネルギーはFIT制度でどのように優遇されているのか?

FIT制度の要素については経済産業省から明確に以下の3点が示された。

①通常要する費用を基礎にIRRを勘案された調達価格で(利益の保証

長期調達期間にわたって送配電事業者が再生可能エネルギー電気を買い取ることが保証され投資回収の予見可能性が強固に確保されている(送配電全量買取義務)

③またFITインバランス特例によって、「計画値同時同量制度」の下においても、インバランスの調整責任を負わない仕組みになっている(インバランス特例

今後、FIT法改正に向けて審議会等でこうした優遇措置をどのように見直していくかが議論されていくことになる。

Q2:FITインバランス特例があるおかげで事業者はどのような恩恵を受けるのか?

・本来、出力10MWを超える発電設備を持つ事業者は、発電事業者として発電計画を広域機関を通じて一般送配電事業者に提出し、原則として計画値と同時同量の電気を供給する責任がある。そして、仮に計画値と実績値との差分の電気(インバランス)が生じた場合、一般送配電事業者がインバランス分の供給を調整し、発電事業者はその差分相当のインバランス料金を清算することが求められる。

・ただし、再生可能エネルギー事業者に関してはFITインバランス特例制度が設けられており、本来発電計画を作成すべき認定事業者の代わりに、電気を買い取る一般送配電事業者、又は小売電気事業者等が発電計画を作成し、発電計画値と発電実績値が乖離した際のインバランス料金を負担することになっている

・つまり、FITインバランス特例制度のおかげで、FIT発電事業者はインバランス料金負担のリスクを負わずに済んでいる。逆に言えば、仮にFITインバランス特例がなくなれば、今後、発電事業者は計画値同時同量を達成する義務が生じることになる。それを踏まえ、FITインバランス特例がなくなった場合、今後どの範囲の事業者に制度改正が適用されるのかが注目される。

Q3:FITに替わると議論されているFIP制度はどのような制度か?

・現在、委員会で太陽光発電、風力発電についてはFITからの段階的にFIP(Feed-in-Premium)制度へ移行していくことが議論されている。

・FIP制度は大雑把に言うと「卸売市場(または相対取引)で再生可能エネルギー電気を販売した価格に、賦課金を原資として+αのプレミアムを支払う」という制度だが、委員会ではFIPの類型として以下の「①プレミアム固定型FIP、②プレミアム固定型(上限・下限付き)FIP、③プレミアム変動型FIP」の三種類が挙げられた。それぞれの違いは以下の通り。

①プレミアム固定型:

市場での販売価格に固定されたプレミアムを付与する。この場合、事業者は市場の価格変動リスクを全て負うことになる。

②プレミアム固定型(上限・下限付き):

市場価格とプレミアムの和に上限と下限を設定する。この場合、市場の価格変動リスクは上限、下限価格の間で限定されることになる。

③プレミアム変動型:

基準価格が設定され、その基準価格と市場価格の差分がプレミアムとして支給される。この場合、事業者は価格変動リスクは負わずに済み、ほぼFITと同じ効果が得られる。

委員会ではIEAのパオロ・フランクル氏から、FIT→変動型FIP→固定型FIP、と段階的に制度を転換していくことが提案され、概ね委員の同意を得た。

Q4:太陽光発電の廃棄費用に関する積立制度の議論の動向はどうなっているのか?

・太陽光発電システムの廃棄に関する積立制度に関しては「太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ」で、積立金額としては「売上の5%程度」を目処に、「源泉徴収的に外部積立を原則」としつつ、一部例外的に内部積立を認める方向で議論が進められている。

・内部積立を認めるべきケースとしてJPEAからは以下のような例が挙げられた。今後、当該案を軸にMETI案が策定されることになると見込まれる。

①SPC事業であること

②上場ファンドによる事業であること

③他法令や自治体条例で廃棄費用の確保が確認できること

④自治体との立地協定等のある事業であること

⑤農産漁村再エネ法等の対象事業者であること

⑥会計監査での確認が取れること

以上、今回はFITインバランス特例やFIPや廃棄積立制度に関する議論を概観してきたが、引き続き今回紹介できなかった、連携線整備への賦課金の流用や、発電側基本料金の導入、出力制御のオンライン化などに関する論点についても次回以降に紹介することとしたい。

This page as PDF

関連記事

  • 自民党河野太郎衆議院議員は、エネルギー・環境政策に大変精通されておられ、党内の会議のみならずメディアを通じても積極的にご意見を発信されている。自民党内でのエネルギー・環境政策の強力な論客であり、私自身もいつも啓発されることが多い。個人的にもいくつかの機会で討論させていただいたり、意見交換させていただいたりしており、そのたびに知的刺激や新しい見方に触れさせていただき感謝している。
  • 森喜朗氏が安倍首相に提案したサマータイム(夏時間)の導入が、本気で検討されているようだ。産経新聞によると、議員立法で東京オリンピック対策として2019年と2020年だけ導入するというが、こんな変則的な夏時間は混乱のもとに
  • 日韓関係の悪化が、放射能の問題に波及してきた。 このところ立て続けに韓国政府が、日本の放射能について問題提起している。8月だけでも、次のようなものが挙げられる。 8月8日 韓国環境部が、ほぼ全量を日本から輸入する石炭灰の
  • 六ケ所村の再処理工場を見学したとき印象的だったのは、IAEAの査察官が24時間体制でプルトニウムの貯蔵量を監視していたことだ。プルトニウムは数kgあれば、原爆を1個つくることができるからだ。
  • 厚生労働省は原発事故後の食品中の放射性物質に係る基準値の設定案を定め、現在意見公募中である。原発事故後に定めたセシウム(134と137の合計値)の暫定基準値は500Bq/kgであった。これを生涯内部被曝線量を100mSv以下にすることを目的として、それぞれ食品により100Bq/kgあるいはそれ以下に下げるという基準を厳格にした案である。私は以下の理由で、これに反対する意見を提出した。
  • 電力中央研究所の朝野賢司主任研究員の寄稿です。福島原発事故後の再生可能エネルギーの支援の追加費用総額は、年2800億円の巨額になりました。再エネの支援対策である固定価格買取制度(FIT)が始まったためです。この補助総額は10年の5倍ですが、再エネの導入量は倍増しただけです。この負担が正当なものか、検証が必要です。
  • 停電は多くの場合、電気設備の故障に起因して発生する。とはいえ設備が故障すれば必ず停電するわけではない。多くの国では、送電線1回線、変圧器1台、発電機1台などの機器装置の単一故障時に、原則として供給支障が生じないように電力設備を計画することが基本とされている(ただし影響が限定的な供給支障は許容されるケースが多い)。
  • 16日に行われた衆議院議員選挙で、自民党が480議席中、294議席を獲得して、民主党から政権が交代します。エネルギー政策では「脱原発」に軸足を切った民主党政権の政策から転換することを期待する向きが多いのですが、実現するのでしょうか。GEPR編集部は問題を整理するため、「政権交代、エネルギー政策は正常化するのか?自民党に残る曖昧さ」をまとめました。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑