寿都町長選と高レベル放射性廃棄物処分の問題

2021年10月29日 07:00
澤田 哲生
東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

寿都町長選

世の中は総選挙の真っ只中である。そんな中、北海道寿都町で町長選が10月26日に実施された。

争点は、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(いわゆる「核のごみ」)の最終処分場選定に関わる『文献調査』を継続するか否かであった。

結果は、文献調査への応募を主導した現職の片岡春雄氏が、文献調査を中止するとした越前谷由樹氏を破って、6選を果たした。

得票数は片岡氏が1135票、越前谷氏は900票。投票率は84.07%であった。

この結果について、片岡氏の〝僅差〟での勝利と評するメディアもある。片岡氏本人も、自分の想定以上に差が縮まったと所感を述べている。しかし、反原発勢力の凄まじいプロパガンダという逆風を思えば、大勝といってもよいと私は思う。

北海道寿都町長選、「核のごみ」調査推進派の現職当選(産経新聞)

反対派の目論見:小泉プロパガンダ

反原発派は、高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定をストップさせることで、核燃料サイクル、そして、原子力発電そのものを死の淵に追いやろうとしている。最終処分地が決まらなければ、全国の原子力発電所にある使用済み燃料の行き場がなくなり、核燃料サイクルは回らなくなる。それは、原子力発電の死を意味するのだ。

プロパガンダの代表は小泉純一郎氏の『日本にはオンカロがない』というワンフレーズ。「オンカロ」は、フィンランドにある最終処分場の呼称である。

私は、最終処分の問題に長年取り組んでおり、日本の研究施設(岐阜県瑞浪市、北海道幌延町)の地下坑道にも幾度も潜ってきた。2019年にはオンカロを視察する機会を得た。私はオンカロの地下坑道を仔細に観て、『日本にもオンカロはできる』と確信を持った。

オンカロの坑道にて(前列右から2人目が筆者、2019年9月)

文献調査から先へ

寿都町は文献調査を続けることになったが、期間は2年なので来年の11月にはその次の概要調査に進むかどうかが判断される。概要調査に進むには、まず住民(町民)の賛意がなければならない。そのために住民投票が行われる見込みである。

10月中旬に、同じく文献調査を受け入れている神恵内村の髙橋村長と住民(2名)を囲むWEB交流会に参加した。全国70カ所からの参加者が村長と住民の話を聞き、意見交換がなされた。その際、参加者から感謝の言葉とエールが多く寄せられた。髙橋村長の率直な感想は、「全国にこんなに多くの応援団がいるとは知らなかった。こういうWEB交流会なら毎日でもやりたい」ということであった。

私たちは、寿都町や神恵内村と「核のごみ」問題をめぐる情報を共有し、問題と向き合うマインドを共有していかなければならないと思う。文献調査に手をあげた2町村の住民のみなさんを孤立させてはいけない。そのための手立てはいくつもあると思う。

全国的な広がりを

寿都町の片岡町長は、これまで20年の町政でともかくもあの手この手で町の発展を推し進めてきたという。そのような取り組みの一つとして、寿都湾沿いを中心に風力発電事業を興したことはよく知られている。文献調査に名乗りを上げたのも町の発展をひたすら願ってのことである。

当選から一夜明けて、片岡町長は「概要調査は、可能性を知る意味で悪い調査ではないのでは」とインタビューに応えている。信念と意気を感じた。

全国の潜在的な応援団のエールが、北海道の寿都町、神恵内村に今後ますます多く届き、それと同時に、文献調査に手をあげる自治体がもっと増えるような手立てを、政治、行政、事業者のみならず、広く国民的議論のもと、「核のごみ」問題の解決に向けて考えていくことを強く望みたい。

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澤田 哲生
東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

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