太陽光パネルにバッテリー設置でCO2回収年は更に増加
以前、中国製メガソーラーは製造時に発生したCO2の回収に10年かかると書いた。製造時に発生するCO2を、メガソーラーの発電によるCO2削減で相殺するのに、10年かかるという意味だ(なおこれは2030年のCO2原単位を想定した場合である)。
今回は、住宅用太陽光パネルについて。以前の計算ではCO2回収に7.1年となっていたところ、これにバッテリーを追加するとどうなるか計算しよう。
バッテリーの設置を、東京都は「HTT」キャンペーンで推進している。HTTとは、減らす、作る、貯める、の意味なのだそうだ。奇妙なキャッチコピーばかりが次々増える。
国土交通省の数字を使う。下図により、5kWのPVシステムに対して4kWhのバッテリーを付けるとしよう。

出典:国土交通省資料より
バッテリー製造のためのCO2排出量は、1kWhあたりで177kg-CO2という値を使う(Kawamoto論文の表3)。
すると5kWのパネルの製造時のCO2排出量は、
177×5=885kg
となる。太陽光パネル製造時のCO2排出量は、前回記事で書いたように、中国製であれば2.19kgCO2/Wpだから、5kWのパネルであれば、
2.19×5=10.95tCO2
となる。
するとバッテリ―製造によるCO2排出量とパネル製造のCO2排出量の比は、
0.885/10.95=8.08%
となる。
CO2回収に要する年数は8.08%増大する訳だ。
バッテリーが無い場合のCO2回収に要する年数は7.1年だったから、
7.1×(1+8.08%)=7.7
となり、住宅用太陽光パネルにバッテリーを設置すると、製造時のCO2回収に要する年数は7.7年となる。
このように、バッテリー製造時のCO2排出量は、太陽光パネル製造時のCO2排出量に比べると小さいようだが、決して無視できる大きさではない。
特に、バッテリーの排出係数は、その製造時の電力を発電する方法によっても大きく影響を受けるだろう。石炭火力の多い中国で製造されたバッテリーであれば他国よりもCO2排出量は多いはずだ。これについてはまだデータを入手したら計算してみたい。

(イメージ)Orthosie/iStock
■
『キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志』のチャンネル登録をお願いします。

関連記事
-
アゴラ研究所の運営するエネルギー・環境問題のバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。 今週のアップデート 1)企業家が活躍、米国農業-IT、遺伝子工学、先端技術を使用 米国の農業地帯を8月に記者が訪問、その
-
最近、私の周辺で「国連の幹部の発言」が話題となりました。 NEW – UN Secretary for Global Comms says they "own the science" o
-
半世紀ほど前から原子力を推進することを仕事としていたが、引退したとたんに自分自身が原発事故で避難しなくてはならなくなった。なんとも皮肉な話だ。
-
日本は「固定価格買取制度」によって太陽光発電等の再生可能エネルギーの大量導入をしてきた。 同制度では、割高な太陽光発電等を買い取るために、電気料金に「賦課金」を上乗せして徴収してきた(図1)。 この賦課金は年間2.4兆円
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 アフリカのサヘル地域では1980年代に旱魃が起きて大きな
-
経済危機になると、巨大企業は「大きすぎて潰せない」とされて、政府による救済の対象になるのはよくある話だ。 だが、科学の世界では話は別かと思いきや、似非気候科学に金が絡むと、明白に誤った論文ですら撤回されない、すなわち「大
-
やや古くなったが、2008年に刊行された『地球と一緒に頭を冷やせ! ~ 温暖化問題を問いなおす』(ビョルン・ロンボルグ著 ソフトバンククリエイティブ)という本から、温暖化問題を考えたい。日本語訳は意図的に文章を口語に崩しているようで読みづらい面がある。しかし本の内容はとても興味深く、今日的意味を持つものだ。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間