工場が潰れてCO2が激減で東京都は喜んでいる場合か

blew_i/iStock
東京都の「2030年カーボンハーフ」の資料を見て愕然としたことがある。
工場のエネルギー消費が激減している。そして、都はこれを更に激減させようとしている。
該当する部分は、下図の「産業部門」。CO2排出量は、2000年に679万トンだったのが43.9%も減って2019年には381万トンとなり、今後、2030にはこれを更に41.8%も減らして222万トンとすることになっている。エネルギー消費量も、同様に激減してきたし、今後も激減を続けることとなっている:


東京都の資料は、この激減の理由を分析していないが、このような激減が省エネや燃料転換のようないわゆる温暖化対策だけで起きたとは考えにくい。
じつは、工場が壊滅的に減っている。
東京にも工場は沢山ある。23区の中では大田区が有名だ。西部の多摩地区にも多くの工場がある。だが、次々に無くなっている。地元の方はまさにこれをよく実感しているだろう。統計的にも、東京都の資料(東京都産業労働局「東京の中小企業の現状」)で確認できる:

これだけ工場が激減し、雇用も減っていれば、CO2が減るのも何ら不思議はない。
東京都は、CO2が減った理由が何だったのか、要因分解をすべきだ。
そして、CO2を2030年に向けて更に激減させるということの意味をよく考えるべきだ。大田区から、多摩地区から、更に工場が減り、雇用が無くなることを、東京都は促進したいのだろうか?
以上では東京都について書いてきたが、じつは東京都はまだよい。本社機能が集中し、サービス産業も発達していて、財政は豊かだからだ。
東京都以外では、問題は遥かに深刻だ。工場に依存した経済になっている自治体は多い。工場が無くなれば、経済が崩壊するだろう。そのような自治体まで、日本全国津々浦々で「カーボンニュートラル」を宣言しているが(下図。都道府県で宣言していないのは、千葉、埼玉、愛知、石川、山口のみ)、ほんとうに工場が無くなってもよいのか?:

ところで日本政府「クリーンエネルギー戦略」では、蓄電池製造、半導体製造、データセンター整備など、国内への産業誘致をすべく官民で投資することになっている:

だが投資をするということは、工場を建てるということだ。
工場を建てればもちろん建設中も操業中もCO2が出るが、それは構わないのだろうか? カーボンニュートラルを目指して日本中の自治体で工場が破滅的に減るという予想の中で、それに逆らって工場を建てるのだろうか? いったいどこの自治体に?
このように、CO2を極端に減らす「カーボンニュートラル」という環境目標は、工場を守り、建て、雇用を続けるというごく普通の経済政策と、大きく矛盾する。
仮にエネルギーがCO2ぜロで全て供給されるなら話は別だ。だが現在の技術では、石油・ガス・石炭などの化石燃料を全く使わない工場というものは、大半の場合、絶望的に採算が合わない。
自治体は、カーボンニュートラルという宣言について、その位置づけをよく考えなおしたほうがよい。今更取り下げるのが難しければ、あらまほしき努力目標というぐらいの位置づけにして、具体的な計画や政策については、もっと現実的になり、工場と雇用を守るべきだ。
■
関連記事
-
カリフォルニア州でディアブロ・キャニオン原発が2025年までに停止することになった。これをめぐって、米国でさまざまな意見が出ている。
-
規制委の審査、判断の過程はそれによって不利益を受ける側の主張、立証の機会が法律上、手続的に保障されていないのである。従って規制委ないしは有識者会合において事業者側の資料の提出を受けつけなかったり、会合への出席や発言も認めなかったりしても形式上は何ら手続き違反とはならないという、おかしな結果になる。要するに対審構造になっていないのである。
-
日本、欧州、米国で相次いで熱波が発生したとのことで、日本でも連日報道されていて、まるで地球全体が暑くなったかのようだが、じつはそんなことはない。 メイン大学のホームページにある米国の分析結果を見ると、7月21日の地上2メ
-
経済産業省は再生可能エネルギーの振興策を積極的に行っています。7月1日から再エネの固定価格買取制度(FIT)を導入。また一連のエネルギーを導入するための規制緩和を実施しています。
-
福島原発事故で流れ出る汚染水への社会的な関心が広がっています。その健康被害はどのような程度になるのか。私たちへの健康について、冷静に分析した記事がありません。
-
2025年7月2日NHKニュースによると、柏崎市の桜井市長は、柏崎刈羽原子力発電所の7号機の早期の再稼働が難しくなったことを受け、再稼働の条件としている1~5号機の廃炉の方針について、改めて東京電力と協議して小早川社長に
-
経産省が、水素・アンモニアを非化石エネルギー源に位置づけるとの報道が出た。「製造時にCO2を排出するグレー水素・アンモニアも、燃焼の瞬間はCO2を出さないことから非化石エネルギー源に定義する」とか。その前にも経産省は22
-
福島における原発事故の発生以来、世界中で原発の是非についての議論が盛んになっている。その中で、実は「原発と金融セクターとの関係性」についても活発に議論がなされているのだが、我が国では紹介される機会は少ない。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















