「セイウチが気候変動で死亡」は捏造
2019年、Netflixのドキュメンタリー番組「Our Planet」の一場面で、数匹のセイウチが高い崖から転落して死亡するというショッキングな映像が映し出された。
有名なナレーターのデヴィッド・アッテンボロー卿は、この悲劇を気候変動のせいにし、気候変動による夏の海氷不足が、セイウチが転落死した原因であると説明した。
しかしその数ヵ月後、同じセイウチの映像を使ったアッテンボローのBBCシリーズ「Seven Worlds, One Planet」では、まさに同じ崖からセイウチを追い落とすシロクマが何頭も登場している。
これは、『Our Planet』でのセイウチの死因の説明が、気候変動運動のために捏造されたものであったことを示す決定的な証拠となった。
ロシアの写真家エフゲニー・バソフが撮影した別のビデオ映像でも、シロクマがセイウチを崖に追いやったことははっきりしている。
セイウチが夏に陸に上がるのは、海氷があるときでも起きる自然な現象だ。
シロクマはこの群れを追いまわす。崖に追い詰めてセイウチを転落死させることは、シロクマの狩猟の一つの方法だ。
Netflixのドキュメンタリー番組「Our Planet」でアッテンボローが宣伝した「気候変動でセイウチが死んでいる」という物語は、現実とは全く関係の無い捏造だった。
このことを指摘したのは、動物学者のスーザン・クロックフォード。著書”Fallen Icon(堕ちた偶像)”において、アッテンボローが、Netflixやスポンサーの環境NGOであるWWF等と共謀し、全くの嘘だと知りつつ、セイウチが気候変動で死んだという物語を捏造したことを詳しく暴いている。
クロックフォードの著書には、さらに、この捏造の罪が縷々書いてある。
動画を視て頂くと分かるが、このアッテンボローはナレーションが上手で、ものすごくもっともらしく聞こえる。英国のアンケートでは、グレータ・エルンマン・トゥーンベリ以上に、気候変動について最も影響力のある人物とされている。
アッテンボローは、ショッキングなセイウチの死の映像を見せつつ、人々に訴えかけることで、「気候危機」意識を広めていった。
対象は一般の人々だけではない。グラスゴーの国連気候会議COP26で講演したり、世界経済フォーラムWEFでビデオ上映をしたりして、世界の気候変動政治にも大きな影響を与えてきた。
だが、その主張する内容は、科学とは無縁の、完全な捏造だった。クロックフォードは真実を追及する、一人の科学者として、アッテンボローおよび関係者を糾弾している。
■
関連記事
-
オランダの物理学者が、環境運動の圧力に屈した大学に異議を唱えている。日本でもとても他人事に思えないので、紹介しよう。 執筆したのは、デルフト工科大学地球物理学名誉教授であり、オランダ王立芸術・科学アカデミー会員のグウス・
-
10月最終週に「朝まで生テレビ」に出た(その日は直前収録だったが)。原発政策がそのテーマだったが、自分の印象では、そのほとんどの時間が東京電力の法的整理論に関する議論に費やされたような気がする。出演者の方々のほとんどが法的整理に賛成で、私一人が消極的意見を述べ、周りから集中砲火を浴びた。
-
再エネ賦課金が引き上げられて、世帯当たりで年額1万6752円になると政府が発表しました。 これに対する怒りの声が上がっています。 飯山陽氏「日本人に選ばれた国会議員が、なぜ日本のためではなく中国のための政治をするのか」
-
今回は、日本人研究者による学術論文を紹介したい。熱帯域を対象とした、高空における雲の生成と銀河宇宙線(GCR)の相関を追究した論文である(論文PDF)。本文12頁に、付属資料が16頁も付いた力作である。第一著者は宮原ひろ
-
エネルギー(再エネ)のフェイクニュースが(-_-;) kW(設備容量)とkWh(発電量)という別モノを並べて紙面解説😱 kWとkWhの違いは下記URL『「太陽光発電は原子力発電の27基ぶん」って本当?』を
-
1.はじめに 雑誌「選択」の2019年11月号の巻頭インタビューで、田中俊一氏(前原子力規制委員会(NRA)委員長)は『日本の原発はこのまま「消滅」へ』と題した見解を示した。そのなかで、日本の原子力政策について以下のよう
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 太陽活動の変化が地球の気温に影響してきたという説について
-
太陽光発電と風力発電はいまや火力や原子力より安くなったという宣伝をよく聞くが、実際はそんなことはない。 複数の補助金や規制の存在が本当のコストを見えにくくしている。また火力発電によるバックアップや送電線増強のコストも、そ
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間