グーグルはコロナ情報を検閲して科学的真理を独占する

2021年04月17日 11:56
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アゴラ研究所所長

このごろコロナに関するグーグルの検閲がひどくなり、アゴラの記事は検索で最初のページにほとんど出てこなくなった。YouTubeで小林よしのり氏の動画は削除され、松田政策研究所チャンネルも動画を削除されてニコ生に引っ越した。

ニコニコ生放送より

グーグルの「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の医学的に誤った情報に関するポリシー」には「地域の公衆衛生当局や世界保健機関(WHO)が提供する COVID-19 に関する医学情報と矛盾する、医学的に誤った情報を拡散するコンテンツを許可していません」と書かれている。

このポリシーは昨年5月20日に実施され、アゴラへのアクセスは半減した。それでも秋までは検索できたが、12月のポリシー変更で、アゴラの記事は(携帯端末の)ディスカバーにはまったく出てこなくなった。

ファクターX仮説は「医学的に誤った情報」なのか

他のプラットフォームもコロナには神経質だが、グーグルの言論弾圧は異常である。このポリシーの定義によると「医学的に誤った情報」とは、次のようなものだ。

  1. COVID-19の予防法としてイベルメクチンまたはヒドロキシクロロキンの使用をすすめるコンテンツ
  2. マスクの着用にCOVID-19の感染を予防する効果はないと主張する
  3. COVID-19ワクチンではCOVID-19の感染リスクが減少しないと主張する
  4. COVID-19は特定の気候や地域では拡大しないと主張するコンテンツ
  5. 特定の集団や個人はCOVID-19ウイルスに対する免疫がある、あるいはウイルスを他人に感染させないと主張するコンテンツ
  6. COVID-19 の感染防止を目的とした社会的距離の確保または自己隔離措置に関する地域の公衆衛生当局やWHOのガイダンスの有効性に異議を唱えるコンテンツ
  7. COVID-19の症状、死亡率、感染度は風邪やインフルエンザより深刻ではないと主張する

4の「COVID-19は特定の気候や地域では拡大しない」というのは、山中伸弥氏の「ファクターX」仮説であり、グーグルの基準では山中氏の動画は削除されることになる。宮坂昌之氏(大阪大名誉教授)や大隅典子氏(東北大副学長)もファクターX仮説を支持しているので、YouTubeから削除だろう。

5の「特定の集団や個人はCOVID-19ウイルスに対する免疫がある」というのは、客観的事実である。この場合の免疫とは、抗体による獲得免疫だけではなく、非特異的な自然免疫や、東アジア特有のウイルス感染で活性化された訓練免疫など、いろいろな可能性が考えられる。

逆に「すべての集団や個人はCOVID-19ウイルスに対する免疫をまったく持っていない」と仮定すると、次の世界各国の累計死者のデータはどう説明するのか。この1年間でイギリスのコロナ累計死者は100万人あたり1876人だが、日本は74人。その差は25倍である。

Our World in Dataより

この大きな差は、マスクや手洗いなどの生活習慣では説明できない。日本より不潔な東南アジアでも、死亡率は低いからだ。少なくとも日本については、特定の集団や個人はCOVID-19ウイルスに対する(自然免疫や訓練免疫を含む)免疫があると考えないと説明できない。

ファクターXの機序はまだ医学的に解明されていないが、多くの専門家が研究しており、論争中の仮説である。グーグルがそれを「誤った情報」と断定する医学的根拠は何か。

科学は通説に異議を唱えて進歩してきた

6の「公衆衛生当局やWHOのガイダンスの有効性に異議を唱える」ことを禁止するに至っては言語道断である。日本政府が何度も出した緊急事態宣言は、その直前に感染がピークアウトし、終わる前に感染が拡大するなど、流行との相関はランダムであり、その効果は疑わしい。

7の「インフルエンザより深刻ではない」ことも客観的事実である。日本のコロナ死者は、1年で約9500人。平年の季節性インフルエンザ関連死1万人と比べて、特に深刻な感染症ではない(コロナの死者も関連死)。グーグルのポリシーはアメリカで決めていると思われるが、日本法人は日本の状況をみないで、それに盲従している。

科学は通説に異議を唱えることで進歩してきた。グーグルのように異端を禁止したら、地動説も大陸移動説も相対性理論も生まれなかっただろう。自由な言論の場であるインターネットを私物化し、科学的真理を独占するグーグルのポリシーは、中国共産党と同じである。

このガイドラインに異議のある人は、上にリンクを張ったグーグルのサイトから抗議してほしい。アゴラサロンでも、この問題を議論している。

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