米国は石油とガスで繁栄し日本はCO2ゼロで産業壊滅の愚行

Lari Bat/iStock
米国のトランプ次期大統領が閣僚候補者を次々に指名している。エネルギーと環境に関して、その方向性ははっきりしている。
以下の、バーガム、ライト、ゼルディンの3氏は全員、石油・ガス・石炭などの化石燃料の開発・利用に関する規制を撤廃し、経済活動を繁栄させるべきだ、と公言している。
内務長官:ダグ・バーガム
バーガム氏は、石油生産州の中で3番目に大きなノースダコタ州の現知事である。同州のバッケン地域におけるシェール石油・シェールガスの開発を主導してきた。 ザ・ヒルは11月15日付の記事で、トランプ氏が繰り返し述べていた「アメリカのエネルギードミナンス(優勢)を解き放つ」という言葉を引用し、バーグム氏が同じことを述べたと伝えている。 バーガム氏が内務長官に就任すれば、バイデン政権下で開発が停止されていた、連邦所有地における石油・ガス開発を推進する権限を持つことになる。
エネルギー長官:クリス・ライト
ライト氏は明白な化石燃料推進派だ。ライト氏の現在の役職は、シェールオイル・シェールガス開発の大手企業、リバティ・エナジーのCEOである。ポリティコのE&Eニュースでライト氏は「化石燃料の伝道師」として紹介された。また11月18日同コラムの記事では、ライト氏の「気候危機は存在しない」という発言や、CO2排出ゼロという目標は「達成不可能であり、人道にも反する」という発言が紹介された。
環境保護庁(EPA)長官:リー・ゼルディン
ニューズウィーク誌は11月11日号で、同氏が「長年にわたって気候変動規制に反対してきた」こと、2022年の知事選(落選)では、民主党のアンドリュー・クオモ知事によって課されたニューヨーク州のシェールガス採掘禁止を解除すると公約していたことを指摘している。
エネルギー以外の分野においても、イーロン・マスク率いる政府効率化省の設立など、エネルギー開発を妨げる環境規制を緩和する方向性がはっきりしている。
トランプ大統領の公約については以前にも紹介した。選挙運動中にも「ドリル・ベイビー・ドリル」(掘って、掘って、掘りまくれ)と繰り返し言っていたように、トランプ政権においては、米国は気候危機説に惑わされることなく、石油・ガス・石炭を採掘し、利用する。パリ気候協定からはトランプ大統領就任初日の1月20日に離脱する。
これに対して日本政府はといえば、2050年CO2ゼロを達成するためとして、2035年にはCO2排出を60%削減するという数値目標をエネルギー基本計画に書きこみ、2025年に2月10日にはパリ協定に提出しようとしている。
このままでは米国のエネルギーはますます安くなり、日本のエネルギーはますます高くなる。企業は米国に工場を建て、日本からは逃げ出す(そうでなければ追い出されるか、潰れる)。
日本は愚かな数値目標を掲げるのを止め、パリ協定から離脱すべきだ。
■
関連記事
-
コロナの御蔭で(?)超過死亡という言葉がよく知られるようになった。データを見るとき、ついでに地球温暖化の健康影響についても考えると面白い。温暖化というと、熱中症で死亡率が増えるという話ばかりが喧伝されているが、寒さが和ら
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
大阪市の松井市長が「福島の原発処理水を大阪に運んで流してもいい」と提案した。首長がこういう提案するのはいいが、福島第一原発にあるトリチウム(と結合した水)は57ミリリットル。それを海に流すために100万トンの水を大阪湾ま
-
11月7日~18日にかけてエジプトのシャルム・アル・シェイクでCOP27が開催され、筆者も後半1週間に参加する予定である。COP参加は交渉官時代を含め、17回目となる。 世界中から環境原理主義者が巡礼に来ているような、あ
-
COP26におけるグラスゴー気候合意は石炭発電にとって「死の鐘」となったと英国ボリス・ジョンソン首相は述べたが、これに反論して、オーストラリアのスコット・モリソン首相は、石炭産業は今後も何十年も事業を続ける、と述べた。
-
きのうのシンポジウムでは、やはり動かない原発をどうするかが最大の話題になった。 安倍晋三氏の首相としての業績は不滅である。特に外交・防衛に関して日米安保をタブーとした風潮に挑戦して安保法制をつくったことは他の首相にはでき
-
(前回:米国の気候作業部会報告を読む⑧:海面上昇は加速していない) 気候危機説を否定する内容の科学的知見をまとめた気候作業部会(Climate Working Group, CWG)報告書が2025年7月23日に発表され
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCC報告では過去の地球温暖化は100年あたりで約1℃
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
















