「大躍進」式の温暖化対策は国家破綻への道だ
英国の研究所GWPFのコンスタブルは、同国の急進的な温暖化対策を、毛沢東の大躍進政策になぞらえて警鐘を鳴らしている。
Boris’s “Green Industrial Revolution” is Economic Lockdown, for ever…
大躍進とは、毛沢東が1957年から3年間に亘り実施した、破滅的な政策のことだ。
- 「大製鉄・製鋼運動」では、専門知識なしの人民による製鉄が大規模に行われたが、品質が悪く使い物にならなかった。
- 「四害駆除運動」では、スズメ等を大量に駆除したが、かえって虫害が増えて農業生産が低下した。
- 「密植・深耕運動」では、伝統農法も近代農法も無視して、ダーウィン進化論を否定するルイセンコ進化論に従った農法を用いて失敗した。
これらの運動では、3年で英米に追いつくといった野心的な(=無謀な)農工業の生産量数値目標が掲げられ、虚偽報告が横行した。その結末は経済破綻であり、飢饉による死亡者は3000万人とも7000万人とも言われる。
失敗の理由は明らかだ。それは、
- 科学、技術、経済の現実を無視した実現不可能な目標と政策、
- 熱狂的・排他的な教義、思想統制、
- 計画経済、統制経済
であった。
コンスタブルは英国の温暖化対策もかかる状態に陥っているという。
英国は「2050年CO2ゼロ」を達成するためとして、「2030年洋上風力4000万kW」等の再生可能エネルギー大量導入目標を立てている。これで電力価格の高騰が確実な一方で、その電気を消費する電気自動車を大量導入し、家庭はヒートポンプの大量導入等で電化しようとしており、これを規制・税・補助金で実現しようとしている。
GWPFはこのコストは世帯当たり1000万円を大きく超えるもので、経済の破綻は確実だとする。国民がどの技術を使うべきかを政府が決定する統制経済な方法は、大躍進と同様に必ず失敗する、とコンスタブルは指摘する。
さて日本では、菅首相が2050年CO2ゼロを「目指す」と宣言した。
RITEの試算に基づけば、2050年におけるCO2ゼロのコストは国家予算に匹敵することは以前述べた。
もしも数値目標を国内企業に割り当て、規制・税による強制や、補助金のばらまきによってCO2ゼロを達成することを目指すならば、経済破綻は必定となる。
日本の温暖化対策が「大躍進」の如き結末を迎えない為にはどうすれば良いか。
次回は処方箋を述べる。
関連記事
-
NSのタイムラインに流れてきたので何気なく開いてみたら、たまたま先日指摘した日経エネルギーNextさんの特集の第2回でした。 こちらも残念かつ大変分かりにくい内容でしたので、読者諸兄が分かりやすいよう僭越ながら補足いたし
-
「気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか」については分厚い本を通読する人は少ないと思うので、多少ネタバラシの感は拭えないが、敢えて内容紹介と論評を試みたい。1回では紹介しきれないので、複数回にわたることをお許
-
新型コロナ騒動は客観的には大勢が決したと思うが、世論は意外に動かない。NHK世論調査では「緊急事態宣言を出すべきだ」と答えた人が57%にのぼった。きょう出るとみられる指定感染症の見直しについても、マスコミでは否定的な意見
-
「カスリーン台風の再来」から東京を守ったのは八ッ場ダム 東日本台風(=当初は令和元年台風19号と呼ばれた)に伴う豪雨は、ほぼカスリーン台風の再来だった、と日本気象学会の論文誌「天気」10月号で藤部教授が報告した。 東日本
-
過去12ヶ月間の世界の強いハリケーン(台風、サイクロンを含む)の発生頻度は、過去40年で最も少ないレベルだった。 https://twitter.com/RogerPielkeJr/status/153026676714
-
文藝春秋の新春特別号に衆議院議員の河野太郎氏(以下敬称略)が『「小泉脱原発宣言」を断固支持する』との寄稿を行っている。その前半部分はドイツの電力事情に関する説明だ。河野は13年の11月にドイツを訪問し、調査を行ったとあるが、述べられていることは事実関係を大きく歪めたストーリだ。
-
サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子が公賓として9月1日に日本を訪問した。それに同行して同国の複数の閣僚らが来日し、東京都内で同日に「日本サウジアラビア〝ビジョン2030〟ビジネスフォーラム」に出席した。
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 京都の桜の開花日が早くなっているという図が出ている(図1
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間