温暖化対策:米党派間で深まる隔絶
温暖化問題は米国では党派問題で、国の半分を占める共和党は温暖化対策を支持しない。これは以前からそうだったが、バイデン新政権が誕生したいま、ますます民主党との隔絶が際立っている。

Ekaterina_Simonova/iStock
米国のピューリサーチセンターの調査によると、「米国新政権及び議会が今年最優先すべき課題であるか」との質問に対して、気候変動が該当すると答えたのは、民主党支持者では59%だったが、共和党支持者では僅か14%に留まった。(下図の上から2行目。赤が共和党Repおよび共和党寄りLean Rep、青は民主党Demおよび民主党寄りLean Dem)

民主党と共和党の差は45%もあって、党派間の意見の違いが浮き彫りになった。ここまで極端な差がついているのは、他には人種問題(表の一番上)だけだ。
このような温暖化を巡る分断は以前からあったけれども、一層極端に意見が割れるようになった。
共和党側の14%という数字は、あらゆる問題の中で最低である。温暖化対策などをやっている場合ではない、ということだろう。
それに民主党側でも、気候変動を最優先とした人は案外少ない。コロナ・経済・人種・貧困・ヘルスケア・政治制度・裁判制度など、他の問題の方が上位に来た。
温暖化問題に熱心なバイデン氏が大統領になって、「米国が温暖化対策に本腰になる」という報道が日本国内には溢れている。けれども世論がこの状態では、それほど温暖化対策が進むとは思えない。
のみならず、議会は上院も下院も拮抗している上に、石油・ガス産業を擁する州の民主党員は造反するので、法律を通すことも容易ではない。
ちなみに世論調査なるものは玉石混交で、酷いもの、当てにならないものも多いけれど、米国のピューリサーチセンターは不偏不党で分析もしっかりしている、と筆者の周囲では定評がある。
なお、この調査では年齢別の分析もしている。それを見ると、若い世代は確かに温暖化問題に関心がやや高いが、それでも他の世代とさほどの差はない。最近よく「若者の環境運動」が報道されるが、実際のところは、一部の若者に限られる話なのではないか。

skynesher/iStock
学歴別の分析もあり、大卒か高卒かといった学歴の違いが最もよく現れたのは気候変動問題だった。どうやら「気候変動は民主党インテリの問題」という構図のようだ。
関連記事
-
菅直人元首相は2013年4月30日付の北海道新聞の取材に原発再稼働について問われ、次のように語っている。「たとえ政権が代わっても、トントントンと元に戻るかといえば、戻りません。10基も20基も再稼働するなんてあり得ない。そう簡単に戻らない仕組みを民主党は残した。その象徴が原子力安全・保安院をつぶして原子力規制委員会をつくったことです」と、自信満々に回答している。
-
1. メガソーラーの実態 政府が推進する「再生可能エネルギーの主力電源化」政策に呼応し、全国各地で大規模な太陽光発電所(メガソーラー)事業が展開されている。 しかし、自然の中に敷き詰められた太陽光パネルの枚数や占有面積が
-
福島第一原発の南方20キロにある楢葉町に出されていた避難指示が9月5日午前0時に解除することが原子力災害現地対策本部から発表された。楢葉町は自宅のある富岡町の隣町で、私にも帰還の希望が見えてきた。
-
国家戦略室が策定した「革新的エネルギー・環境戦略」の問題を指摘する声は大きいが、その中でも、原子力政策と核燃料サイクル政策の矛盾についてが多い。これは、「原子力の長期利用がないのに再処理を継続することは、矛盾している」という指摘である。
-
東日本大震災から2年。犠牲者の方の冥福を祈り、福島第一原発事故の被害者の皆さまに心からのお見舞いを申し上げます。
-
トランプ大統領のパリ協定離脱演説 6月1日現地時間午後3時、トランプ大統領は米国の産業、経済、雇用に悪影響を与え、他国を有利にするものであるとの理由で、パリ協定から離脱する意向を正式に表明した。「再交渉を行い、フェアな取
-
ようやく舵が切られたトリチウム処理水問題 福島第一原子力発電所(1F)のトリチウム処理水の海洋放出に政府がようやく踏み出す。 その背景には国際原子力機関(IAEA)の後押しがある。しかし、ここにきて隣国から物申す声が喧し
-
GX推進法の改正案がこの5月に可決され、排出量取引制度の法制化が進んでいる。教科書的には、「市場的手段」によって価格を付けるのが、もっとも経済効率が良いことになっている。 だが、日本の場合、排出量取引制度は、既存の制度に
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間













