今週のアップデート — 厳しすぎる被ばく基準の見直しを(2012年7月30日)

2012年07月30日 17:00

福島原発事故の結果、現時点でも約16万人が避難しました。そして約650人の方が亡くなりました。自殺、精神的なダメージによって災害死として認定されています。

もちろんこの混乱をもたらした根本原因は原発事故にあります。しかし1年を経過して、避難者のストレス、健康被害が問題になっています。政府は避難者の帰還時期さえ示しません。すでに問題は「過剰被害による二次災害」であり「政治の不作為による人災」といえます。

現在の福島県の放射線量では、放射能による健康被害の可能性はありません。帰還が遅れているのは、年間被ばく量を1mSvにする政府の方針のためです。20mSvの方針を昨秋に打ち出したのに、被災地の除染の費用、期日を今でも決めていません。

1) オックスフォード大学名誉教授のウェード・アリソン氏から、「福島の事故と国会事故調査委員会の報告書から」という寄稿をいただきました。

日本の国会事故調査委員会は「日本の問題である」という方向で、報告をまとめました。アリソン氏は、低線量被ばくの厳しすぎる基準によって、過剰なコストが社会に加わっていることを指摘しています。

2) 関連リンクとして、GEPRを運営するアゴラ研究所所長の池田信夫氏のコラムから「原発事故で600人以上の死者をもたらしたのは放射能ではない」を紹介します。日本版ニューズウィークに掲載のものです。

事故そのものよりも、その後の避難生活によって健康被害が増えた事実を指摘しています。

3) アゴラ研究所の提携するNPO国際環境経済研究所のコラムから主席研究員の竹内純子さんのコラム「ドイツの電力事情 ― 理想像か虚像か2― 料金の推移」を紹介します。(IEEI版

今週のリンク

電力中央研究所「我が国の原子力停止の状況における火力燃料費の増加とその変動リスク
LNGと重油、石炭の炊き増しで、2010年には比2.5兆円の燃料費が増え、海外に流失すると試算しています。これらはいずれ私たちの負担になります。

This page as PDF

関連記事

  • 2月24日にロシアがウクライナに侵攻して以来、世界各地でインフラの「不具合」が相次いでいる。サイバー攻撃が関与しているのか、原因は定かではないが・・・。 1. ドイツの風力発電 ドイツでは、2022年3月4日時点で、約6
  • 福島第一原子力発電所事故の後でエネルギー・原子力政策は見直しを余儀なくされた。与党自民党の4人のエネルギーに詳しい政治家に話を聞く機会があった。「政治家が何を考えているのか」を紹介してみたい。
  • はじめに 世界的な生成AIの普及やデータセンターの拡大により半導体需要が急速に高まって、日本国内でも供給の安定化を目指して大規模半導体工場の建設ラッシュが起こっている。 なかでも注目されるのが、世界的半導体製造会社TSM
  • 敦賀原子力発電所2号機 7月26日、原子力規制庁は福井県に設置されている敦賀原子力発電所2号機((株)日本原子力発電、以下原電)に関して、原子力発電所の規制基準に適合しているとは認められないとする結論を審査会合でまとめた
  • 4月15-16日、札幌において開催されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合は共同声明を採択して閉幕した。 欧州諸国はパリ協定、グラスゴー気候合意を経てますます環境原理主義的傾向を強めている。ウクライナ戦争によってエネルギ
  • IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCCの報告では、20世紀に起きた地球規模での気温上昇
  • 厚生労働省は原発事故後の食品中の放射性物質に係る基準値の設定案を定め、現在意見公募中である。原発事故後に定めたセシウム(134と137の合計値)の暫定基準値は500Bq/kgであった。これを生涯内部被曝線量を100mSv以下にすることを目的として、それぞれ食品により100Bq/kgあるいはそれ以下に下げるという基準を厳格にした案である。私は以下の理由で、これに反対する意見を提出した。
  • 世界的なエネルギー危機を受けて、これまでCO2排出が多いとして攻撃されてきた石炭の復活が起きている。 ここ数日だけでも、続々とニュースが入ってくる。 インドは、2030年末までに石炭火力発電設備を約4分の1拡大する計画だ

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑