今週のアップデート — 福島原発事故はなぜ起こったか(2012年10月22日)
今週のアップデート
1)福島原発事故をめぐり、報告書が出ています。政府、国会、民間の独立調査委員会、経営コンサルトの大前研一氏、東京電力などが作成しました。これらを東京工業大学助教の澤田哲生氏が分析しました。
「再発防止に何が必要か?−福島原発事故、原因分析の4報告書の欠陥を突く」
澤田氏はいずれの報告書にも批判的な見方を示しています。さらに、ここで出た反省を、政治が使う意思がない状況も批判しています。
2)原発では使用済み核燃料の保管が解決していない問題です。現在のように、各地の原発に保存する形よりも、よりリスクの少ない形で保管することが妥当でしょう。そしてその方法の決定は、「今ここにある危機」なのですから、原発について賛否いずれの考えを持とうとも、私たちの世代が行わなければならない問題です。
アゴラ研究所の池田信夫所長は日本版ニューズウィークに「原発はトイレなきマンションか」を寄稿しました。
この問題は「トイレなきマンション」と例えられますが、現状構想されている保管方法を紹介しています。そして以下の結論を述べます。
「トイレをつくることは技術的には容易だが、政治が障害になっているのだ。それをさまたげているのが、ゼロリスクを求める国民感情と、それに迎合する政治家やマスコミである」。
3)GEPRが提携する国際環境経済研究所(IEEI) の竹内純子主席研究員のコラムを転載します。
再生可能エネルギーの振興策である固定価格買取制度の導入から10年が経過しました。その結果、この種の発電が増えすぎて、産業界がコストに不満を持ち始めています。この制度が始まった日本でも、同じ問題が起こりかねません。
今週のリンク
1)日本企業のコンソーシャムがベトナムで受注した原発について、建設先送りの可能性が出てきました。
「ベトナム原発建設、先送りも」(時事通信)
日本政府が原発輸出を支援するかどうか曖昧であることに加え、ライバル国が福島原発事故を受けて、日本製プラントへのネガティブキャンペーンを水面下で進めたためと思われます。
2)「日立製原発に反対したリトアニア− 「日本の原発は危険」 背景にあった
ロシアのプロパガンダキャンペーン」(ウェッジ・インフィニティ)
ニュース週刊誌ウェッジのウェブ版です。未確認の情報ですが、ロシアはバルト三国に対するエネルギーを使った政治的影響力を高めるため、リトアニアで日本製原発の反対キャンペーン行った可能性があるとの指摘です。日本政府の曖昧な態度が、企業活動への悪影響を広げています。
3)反核・反原発サイトの「核情報」が、どのメディアも大きく取り上げなかった問題について、興味深い指摘をしています。
「原子力規制委員長が使用済み燃料の乾式貯蔵への移行を訴え─再処理政策へ影響?」
これまでの使用済核燃料は各原発内の貯蔵用プールに保管されていました。しかし、これを特殊容器に入れて、地上に保管する提案です。原発が再稼動すると、各原発のプールが数年以内に各原発で満杯になる可能性が指摘されています。それが原発を稼動すべきでない根拠の一つとされています。その状況が変わるかもしれません。
![This page as PDF](https://www.gepr.org/wp-content/plugins/wp-mpdf/pdf.png)
関連記事
-
米国の元下院議長であった保守党の大物ギングリッチ議員が身の毛がよだつ不吉な予言をしている。 ロシアがウクライナへの侵略を強めているのは「第二次世界大戦後の体制の終わり」を意味し、我々はさらに「暴力的な世界」に住むことにな
-
ドイツの温室効果ガス排出量、前年比10%減 3月15日、ドイツ連邦政府は2023年の同国の温室効果ガス排出量が前年比10%減少して6億7300万トンになったとの暫定推計を発表した※1。ドイツは温室効果ガス排出削減目標とし
-
はじめに 世界の脱炭素化の動きに呼応して、今、世界中の自動車メーカーが電気自動車(EV)に注力している。EV化の目的は走行中のCO2排出を削減することにあり、ガソリンエンジンなどの内燃機関を蓄電池駆動のモーターに切替えて
-
先日、朝日新聞の#論壇に『「科学による政策決定」は隠れ蓑?』という興味深い論考が載った。今回は、この記事を基にあれこれ考えてみたい。 この記事は、「世界」2月号に載った神里達博氏の「パンデミックが照らし出す『科学』と『政
-
GEPRはエネルギー問題をめぐるさまざまな立場の意見を紹介しています。環境問題のオピニオンリーダーで、UNEP・FI(国連環境計画金融イニシアティブ)特別顧問である末吉竹二郎さんにインタビューを行いました。
-
英国ではボリス・ジョンソン保守党政権が脱炭素(ネット・ゼロ)政策を進めている。だが、家庭用のガス使用禁止やガソリン自動車の禁止等の具体的な政策が明らかになるにつれ、その莫大な経済負担を巡って、与党内からも異論が噴出してい
-
筆者は先月、「COP26はパリ協定の「終わりの始まり」」と題する本サイトに寄稿をしたが、COP26の会議・イベントが進められている中、視点を変えたPart2を論じてみたい。 今回のCOPは、国連の公式発表によれば、交渉官
-
はじめに 発電用原子炉の歴史はこれまでは大型化だった。日本で初めて発電した原子炉JPDRの電気出力は1.25万キロワットだったが今や100万キロワットはおろか、大きなものでは170万キロワットに達している。目的は経済性向
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間