今週のアップデート — 語られない重要論点、核燃料サイクルを考える(2012年11月12日)

2012年11月12日 14:00

今週のコラム

GEPRは今週も、核燃料サイクルを巡る論考を掲載します。

1)国際環境経済研究所の澤昭裕所長に「核燃料サイクル対策へのアプローチ」を寄稿いただきました。

澤氏はアプローチの方法を3つに整理しました。「オプションの再検討」「既存政策の漸進的な改善」「国際協力を軸にした新しい方法」です。これらを併用して行き詰まった政策を見直せるのではないかと、問題提起をしています。

2)アゴラ研究所フェローの石井孝明は、GEPRと姉妹サイトアゴラに掲載された核燃料サイクルをめぐる一連の論考への読者からの意見をまとめました。「読者からの反響・秘められた論点「軍事利用」と原子力—現状は「日本の核武装は不可能」で一致」。この分野の議論は、日本で少ないため、それを積み重ねようという呼びかけです。

3)「放射線とチェルノブイリ事故処理作業員間の慢性リンパ性およびその他白血病のリスク(要旨日本語訳)」。作業員について白血病のリスクが高まったという米・ウクライナの合同調査の報告です。ただし要旨では被曝量と健康の関係は示されていません。

今週のリンク

1)東京電力「再生への経営方針」「改革集中実施アクション・プラン」。東電は福島事故後の経営方針を11月7日にまとめ、公表しました。

2)「東京電力:国に支援要請 中期経営方針を発表」(毎日新聞11月7日記事)。上記の経営方針の発表で、下河辺和彦会長は、廃炉の費用、賠償などを含めると10兆円を超える費用がかかり、国への支援を求める方針を示しました。この国民負担が妥当か、国民的な議論が必要になるでしょう。

3)「大飯原発の活断層問題 “電力氷河期”の不安は尽きない」(産経Biz11月11日記事)。大飯原発の活断層調査をめぐる状況と、それのもたらした混乱を描写しています。原発の停止で安定供給に、懸念が続いています。

4)「勝者なきEV用急速充電器の規格争い」。ウェブニュースサイトMONOistの記事。電気自動車の充電器では、日本の自動車メーカー、電力会社が推進する「チャデモ」と米独の自動車メーカーの主導する「コンボ」の2つの規格があり、主導権争いが懸念されます。チャデモ側の会見の説明で、規格統一の可能性があると関係者が発言しています。今後、注視する必要があるでしょう。

ここに書かれない論点があります。東電がチャデモ研究の中心でしたが、同社は原発事故を引き起こしたため、新規事業を積極的に行えない状況です。規格の先行きが懸念されます。

5)ICRP(国際放射線防護委員会)の研究者らが、11月11日に福島で対話集会を開催しました。「第4回福島原発事故による長期影響地域の生活回復のためのダイアログセミナー—子供と若者の教育についての対話」。こうした取り組みが地道に積み重なっています。

GEPRは過去、福島の市民による放射線防護の啓発活動「エートスプロジェクト」や、それを支援する水野義之京都女子大教授の「放射線防護の専門知を活かし、福島の生活再建に「連帯」を ― 第2回伊達市ICRPダイアログセミナーの経緯と結論・勧告の方向性」を掲載しています。

6)「福島県産新米 全袋検査の状況」(個人ブログ「がんばります福島県農業! 二本松農園ブログ」)福島県では、全体で700万あまりのコメの袋をすべて検査し、基準の100ベクレルを超えたのはわずか7検体だったそうです。農作物への悪影響は減りつつあります。朗報です。

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