経済活動支援は「楢葉方式」で【復興進む福島5】
商工会の会員240社のうち、町内で仕事を始めたのは土建、建設、宿泊施設など復興に関連する54社。町民を相手に商売をしていた商店は廃業も多い。いまコンビニが2店営業しているが、客のほとんどは廃炉や除染の作業員などだ。町民の売り上げは1割に満たない。
除染で膨大な国の予算が使われているが、それが町の企業にも還元する仕組みが必要だ。その点で、楢葉町で除染をしている前田・鴻池・大日本土木JVには感謝している。商工会を窓口にして話し合いの場をもって、地元で調達できるものは地元で調達する方針をとってくれた。すると企業は基礎的な売り上げが確保できるから、町に戻るようになる。この「楢葉方式」を相双地方の自治体の復興でぜひ普及してほしい。競争入札をするにしても、ポイント制で地元調達が有利になるようにしてほしい。
私の仕事はホテルや寮へのふとんのリースなど。頭が痛いのは人件費だ。大震災前は時給750円で雇えたが、今は1250円でも人がこない。派遣業者に頼むと「1500円」と言われる。会員にも従業員を雇えなくて、家族や親戚で会社を切り盛りしているところが多い。
戻ってきて住むのは50~60歳代ばかりだ。30~40歳代は子供もいるし、帰町は難しいと思う。しかし、これから5年で町は大きく変わる。われわれ50歳以上が今、前向きになってがんばって、5~10年後に若い人たちが戻ることを考える時の判断材料にならなければいけない。
楢葉にはJビレッジという「財産」がある。サッカー場を早く再開して、子供たちの大会を開いたり、オリンピック選手が合宿をしたりするようにしてほしい。すると国内外のマスコミがくる。その時に、町が立派に復興したことを世界中に発信したい。(談)
(この記事はエネルギーフォーラム9月号に掲載させているものを、同社から転載の許諾を得た。関係者の方に感謝申し上げる。)
(2015年9月24日掲載)
関連記事
-
敦賀発電所の敷地内破砕帯の活断層評価に関する「評価書」を巡っての原子力規制庁と日本原電との論争が依然として続いている。最近になって事業者から、原子力規制委員会の評価書の正当性に疑問を投げかける2つの問題指摘がなされた。
-
トリチウムを大気や海に放出する場合の安全性については、処理水取り扱いに関する小委員会報告書で、仮にタンクに貯蔵中の全量相当のトリチウムを毎年放出し続けた場合でも、公衆の被ばくは日本人の自然界からの年間被ばくの千分の一以下
-
鳩山元首相が、また放射能デマを流している。こういうトリチウムについての初歩的な誤解が事故処理の障害になっているので、今さらいうまでもないが訂正しておく。 放射線に詳しい医者から聞いたこと。トリチウムは身体に無害との説もあ
-
きのう「福島県沖の魚介類の放射性セシウム濃度が2年連続で基準値超えゼロだった」という福島県の発表があった。これ自体はローカルニュースにしかならなかったのだが、驚いたのはYahoo!ニュースのコメント欄だ。1000以上のコ
-
田原・政権はメディアに圧力を露骨にかけるということはほとんどない。もし報道をゆがめるとしたら、大半の問題は自己規制であると思う。
-
チェルノブイリ事故によって、ソ連政府の決定で、ウクライナでは周辺住民の強制移住が行われた。旧ソ連体制では土地はほぼ国有で、政府の権限は強かった。退去命令は反発があっても、比較的素早く行われた。また原発周囲はもともと広大な空き地で、住民も少なかった。
-
東日本大震災、そして福島第一原子力発電所事故から5年が過ぎましたが、被災した福島県内の各自治体では、復興に向けたまちづくりが進められています。双葉町は大部分が帰還困難区域に指定され、町民約7000人が今も全国各地に避難していますが、町北東部の両竹・浜野地区は避難指示解除準備区域となり、両竹・浜野地区から段階的に町の復興が進められる計画です。平成26年(2014年)9月から国道6号の自由通行も可能になり、昨年3月には常磐自動車道も全線開通しています。
-
思想家で東浩紀氏と、政策家の石川和男氏の対談。今回紹介したチェルノブイリツアーは、東氏の福島の観光地化計画の構想を背景に行われた。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間