遺伝子組み換え作物、危険という誤解を解く

日本最大級の言論サイト「アゴラ」を運営しているアゴラ研究所(所長・池田信夫)は、運営する環境・エネルギー問題での論説を集めたバーチャルシンクタンク「GEPR」(グローバル・ポリシーリサーチ)で、今後は新たに農業問題を取り上げていく。
2015年2月29日(月曜日)の午後6時30分から午後8時30分まで、シンポジウム「遺伝子組み換え作物は危険なのか?」を開催する。
なぜ、この問題を取り上げるのか。一般に広がった誤った遺伝子組み換え作物(GMO: Genetically Modified Organisms)が危険であるという誤ったイメージや誤解を、正確な情報を提供することで解きたいためだ。こうした誤解は日本の農業の発展、食生活の改善に悪影響を与えている。メディアからは提供されない正確な情報と適切な世論形成の努力を、アゴラ・GEPRは重ねてきた。GMOをめぐる誤解は、たださなければならない社会的異議があるものだ。
遺伝子組み換え食物の前向きの変化
普段私たちが食している作物は、野生のままの原生種ではない。いずれも交配を繰り返して、人為的に植物の性質を変えて品種改良されたものだ。
遺伝子組み換え技術はそれを高度にしたものだ。交配に加えて微生物などを使って有用な特徴を持つ遺伝子を細胞の中に取り込ませる。害虫に抵抗性を持つ、特定除草剤を散布しても枯れないで雑草だけを効果的に枯らせるなどの特性を与えるなどの特性だ。その結果、収穫量の増加、農薬使用量の削減、農作業の手間やコストの削減など、農業の生産性向上効果が高い。
米国では1996年からGMOによる生産が始まった。英農業調査会社PGエコノミクスによれば、遺伝子組み換え作物を使うことで、2012年に世界で188億ドル(2兆2500億円)の農業所得の向上があった。その半分が開発途上国でのものだ。またこの種の作物で収穫量の増加は1996-2012年に大豆で1億2200万トン、トウモロコシが2億3100万トンだった。日本の国内消費が大豆で年約300万トン、トウモロコシで年1500万トンであることを考えると収増量の増加効果は大変大きい。
世界の人口は急増を続け2015年には73億人を越えた。2010年以降は、毎年約1億人ずつ増えている。世界の食糧不足が懸念される収穫量を増やす手段の一つが遺伝子組み換え作物だ。また、有用な成分を体内に取り込むために、食べることでアルツハイマー病(老人ボケ)の抑制や、花粉症を抑えるコメ、作物の生産の研究がされている。
日本では家畜の飼料、食糧油としてGMOを輸入。世界有数の輸入国になっている。そして日本でもGMOの生産は禁止されていない。
GMOへの過剰な不安
ところが日本ではGMOをめぐる生産は行われず、また危険というイメージが広がっている。
GMOの栽培は、日本では法律では禁止されていないが農水省などは積極的な導入策を行っていない。メディアは、GMOについて、否定的な意見を示すことが多い。食品の販売の現場では、NON-GMO(非遺伝子組み換え作物)が、売り文句になる。
政治も官庁も、世論が少しでも否定的な感情を持つ政治的に難しい問題に、積極的に取り組まない。
GMOについては、人体の影響はこれまで報告はない。私たちは毎日の食生活で、肉や野菜などの遺伝子を含む食物を食べている。体内にも取り込んでも遺伝子をつくるタンパク質は分解されアミノ酸になり体に影響はない。遺伝子を変えたものを、体に取り込むのは不気味さを感じるのだろう。しかし、それは不必要な恐れだ。
マスコミの報道、また評論では、リスク情報はたいていゆがみがある。東京電力の福島第一原発事故の後の放射能と健康をめぐる問題では、リスクを過大に評価する傾向が、メディアでも社会でも見られた。同じような問題が、GMOをめぐっても起きている。
もちろん、誤解や不安を抱く人を糾弾したり、過度な批判をしたりする意図はない。しかし不必要な感情が社会の進歩を妨げることがあり、GMO問題もその一つだろう。正確な情報を学び、正しい選択をする必要があるだろう。
海外から穀物を調達する日本は、その生産量を確保することを真剣に考えなければならない。日本では農業の姿が大きく変わろうとしている。競争、規制緩和、そして輸出による海外市場の拡張を目指して、農家も政府も動く。そうした諸問題を解決する有効な手段にGMOはなるだろう。
アゴラ・GEPRは農業問題、さらにGMOの理解の取り組みを行う。ぜひ、シンポジウムの聴講をし、共に問題を考えていただきたい。
編集・石井孝明
(2016年2月8日掲載)
関連記事
-
2015年5月19日、政策研究大学院大学において、国際シンポジウムが開催された。パネリストは世界10カ国以上から集まった原子力プラント技術者や学識者、放射線医学者など、すべて女性だった。
-
澤・FITの問題は、目的が明確ではない点です。「再エネを増やすため」と誰もがいいます。しかし「何のために増やすのか」という問いに、答えは人によって違います。「脱原発のため」という人もいれば「エネルギーの安全保障のため」と言う人もいます。始まりは先ほど述べたように、温暖化対策だった。共通の目標がありません。これはよくない。
-
思想家で東浩紀氏と、政策家の石川和男氏の対談。今回紹介したチェルノブイリツアーは、東氏の福島の観光地化計画の構想を背景に行われた。
-
原発の稼動の遅れは、中部電力の経営に悪影響を与えている。同社は浜岡しか原発がない。足りない電源を代替するために火力発電を増やして、天然ガスなどの燃料費がかさんでいるのだ。
-
原子力規制委員会は11月13日に、日本原子力開発機構(「機構」)の所有する高速増殖原子炉もんじゅに関し、規制委員会設置法に基づく勧告を出した。
-
パリ協定をめぐる対立 6月のG20サミットは日本が初めて議長国を務める外交面の大舞台であった。保護主義との闘い、データ流通、海洋プラスチック等、様々な論点があったが、大きな対立軸の一つになったのが地球温暖化問題、なかんず
-
その日深夜、出力調整の試験をやるということは聞いていた。しかし現場にはいなかった。事故は午前1時36分に起こったが、私は電話の連絡を受けて、プリピャチ市の自宅から午前5時には駆けつけ、高い放射線だったが制御室で事故の対策をした。電気関係の復旧作業をした。
-
現在、パリ協定第4条第19項に基づくパリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略の策定作業の最終段階にある。4月25日に政府原案が公表され、パブリックコメントに付された。政府原案の概要は以下のようなものである。 【基本的考え
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間














