ポルトガルが4日半、再エネで全電力を供給

2016年05月30日 11:00
アバター画像
経済ジャーナリスト
ポルトガルの潮力発電所(Wikipediaより)

ポルトガルで今月7日午前6時45分から11日午後5時45分までの4日半の間、ソーラー、風力、水力、バイオマスを合わせた再生可能エネルギーによる発電比率が全電力消費量の100%を達成した。(報道のガーディアン記事)

一国が再エネ100%になったことは史上初だろう。不明なところが多いが、日本のメディアで伝えられていないので、簡単に紹介してみる。筆者は英語情報しか読めないが、その情報もあまり出ていない。

南欧では、春先に暖房や冷房による電力需要がもともと少なくなる。欧州では、このところ晴天で比較的風が強く吹く天候が続いており、ソーラー発電や風力発電に都合の良い条件が続いている。ドイツでも8日の日曜日、再エネの発電比率が95%に達した。

海外電力調査会の資料によれば、同国の電力需要は年530億kWh、人口は約1000万人だ。日本の20分の1、規模では北海道電力程度だ。

2015年には同国の電力需要のうち、全体のうち半分を再エネが占めた。風力が22%、水力が17%、バイオマスが5%、太陽光2%、潮力が2%だった。残りは火力発電で、原子力発電は同国にはない。また隣国のスペインから、電力の1割前後をここ数年は購入している。

今年5月初めの再エネ100%の詳細は不明だが、最大需要(kWで示される)は数百万kW程度だったであろう。上記ガーディアンによれば、発電設備の容量は、水力(570万kW)と風力(480万kW)があるとされ、十分需要を賄えたはずだ。

ポルトガルは無資源国だが、早くから再エネを導入。エネ研のリポートによると、FIT(固定価格買取制度)をデンマークの1979年に次ぐ二番目となる88年から実施した。

同国は発送電の分離が行われており、全国でサービスする配電会社と、いくつかの発電会社があるようだ。しかし再エネ発電を使うと、火力を止めることになる。ドイツなどでそうなっているように、火力発電所を抱える会社は、再エネの拡大によって、厳しい経営状況になっているはずだ。また天候の動きは読み切れず、再エネが発電されない場合のバックアップ電源として火力を潰すこともできない。

再エネ100%は、脱原子力・化石燃料への可能性を示す一方で、ポルトガルの経済規模の小ささと天候による特異な例であることも考えなければならない。この状況のもたらした正負双方の教訓を示した、より詳細な現地からの情報が望まれる。

(2016年5月30日掲載)

This page as PDF

関連記事

  • 新たなエネルギー政策案が示す未来 昨年末も押し迫って政府の第7次エネルギー基本計画案、地球温暖化対策計画案、そしてGX2040ビジョンという今後の我が国の環境・エネルギー・産業・経済成長政策の3点セットがそれぞれの審議会
  • 原子力基本法が6月20日、国会で改正された。そこに「我が国の安全保障に資する」と目的が追加された。21日の記者会見で、藤村修官房長官は「原子力の軍事目的の利用意図はない」と明言した。これについて2つの新聞の異なる立場の論説がある。 産経新聞は「原子力基本法 「安全保障」明記は当然だ」、毎日新聞は「原子力基本法 「安全保障目的」は不要」。両論を参照して判断いただきたい。
  • 筆者は昨年からたびたびESG投資を巡る気候カルテルについて指摘してきました。 米下院司法委が大手金融機関と左翼活動家の気候カルテルを暴く 気候カルテルの構図はまるで下請け孫請けいじめ 気候カルテルは司法委員会の調査から逃
  • 本年2月18-19日にパリにおいてIEA閣僚理事会が開催された。共同声明という形で合意されたのは重要鉱物セキュリティに関するIEAの作業への支持表明注1)、及びIEAとウクライナの協力に対する支持表明注2)という2点のみ
  • 10月30日付のDaily Mail Onlineで、「Trump celebrates winning ‘war’ on climate change after Bill Gates admi
  • エネルギー危機が世界を襲い、諸国の庶民が生活の危機に瀕している。無謀な脱炭素政策に邁進し、エネルギー安定供給をないがしろにした報いだ。 この年初に、英国の国会議員20名が連名で、大衆紙「サンデー・テレグラフ」に提出した意
  • テレビ朝日が8月6日に「ビキニ事件63年目の真実~フクシマの未来予想図~」という番組を放送すると予告している。そのキャプションでは、こう書いている。 ネバダ核実験公文書館で衝撃的な機密文書を多数発掘。ロンゲラップ島民たち
  • 東京都知事選投票日の翌朝、テレビ取材のインタビューに小泉純一郎氏が晴れ晴れとして応えていた。この歳になってもやれると実感したと笑みをこぼしていた。なんだ、やっぱり寂しい老人の御遊びだったのか。インタビューの随所からそんな気配が読み取れた。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑