新型コロナに生かされない福島の教訓
いまだにワイドショーなどで新型コロナの恐怖をあおる人が絶えないので、基本的な統計を出しておく(Worldometer)。WHOも報告したように、中国では新規感染者はピークアウトした。世界の感染はそこから1ヶ月ぐらい遅れて広がっているが、新規感染者の増加率はほぼ一定だ。退院者も増えているので、病院で処置を受ける患者は減っている。
![新型コロナの累計患者数(患者数-回復者数)](https://www.gepr.org/ja/cms/wp-content/uploads/2020/03/ccc-660x402.png)
新型コロナの累計患者数(患者数-回復者数)
新型コロナは単なる風邪なので、感染者数を正確に把握する意味はない。ほとんどの感染者は発症せず、自分でも気づかないうちに免疫を獲得して感染は終息する。マスコミでは韓国やイタリアやイランのケースばかり報道されているが、この3ヶ国で中国以外の感染者の80%を占める。これは医療が崩壊した例外であり、日本は世界の2.2%である。
![中国以外の新型コロナ患者の分布](https://www.gepr.org/ja/cms/wp-content/uploads/2020/03/x-660x403.png)
中国以外の新型コロナ患者の分布
日本でも新規患者数は、2月28日の24人をピークとして、やや減っている。「安倍政権がPCR検査を受けにくくして感染者を減らしている」という陰謀論もあったが、検査数が3倍の5690名になっても、患者数(有症数)は16名しか増えていない。
ただ今後も新規感染者が増える可能性はある。特に北海道では「感染者が940人になる」という専門家会議の予測もあるので、日本国内で累計1000人程度にはなるかもしれないが、日本のこれまでの増加ペースは世界の平均程度で、それほど心配する必要はない。
危険なのは、韓国のように国民がパニックになって無症状の人までPCR検査を受け、陽性の人をすべて入院させて医療が崩壊することだ。「医師が認めたらすべて検査を受けさせる」という安倍政権の方針は危険である。
福島の教訓は「ゼロリスク」の危険
新型肺炎だけに「ゼロリスク」を求めるのは、2011年に福島第一原発事故の放射能だけにゼロリスクを求めた人々と同じ錯覚なのだ。リスクは確率的な期待値である。それは次のような式で書ける。
リスク=被害×確率
新型肺炎の被害(感染力や致死率)がインフルエンザの20倍だとしても、その患者に出会う確率が10万分の1だったら、リスクはインフルエンザの5000分の1だ。新型肺炎にゼロリスクを求めて騒ぐのは、福島でゼロリスクを求めて風評被害を生み出した民主党政権の失敗を繰り返すものだ。
今の日本は、感染症の爆発的流行が起こる医療環境にはない。武漢で7万人近い感染が発生したのは、発生初期に中国共産党が情報を隠蔽するなど、特殊な条件で起こったものだ。もちろん状況はまだ不確実なので楽観は禁物だが、過剰反応はもっと危険である。福島で放射能による健康被害はまったくなかったが、 パニックによる風評被害はまだ消えない。 その教訓に改めて学ぶときである。
![This page as PDF](https://www.gepr.org/wp-content/plugins/wp-mpdf/pdf.png)
関連記事
-
カナダが熱波に見舞われていて、熱海では豪雨で土砂災害が起きた。さっそく地球温暖化のせいにするコメンテーターや自称有識者が溢れている。 けれども地球の気温はだいだい20年前の水準に戻ったままだ。 図は人工衛星による地球の大
-
いろいろ話題を呼んでいるGX実行会議の事務局資料は、今までのエネ庁資料とは違って、政府の戦略が明確に書かれている。 新増設の鍵は「次世代革新炉」 その目玉は、岸田首相が「検討を指示」した原発の新増設である。「新増設」とい
-
最近、私の周辺で「国連の幹部の発言」が話題となりました。 NEW – UN Secretary for Global Comms says they "own the science" o
-
はじめに 原発は高くなったと誤解している人が多い。これまで数千億円と言われていた原発の建設費が3兆円に跳ね上がったからである。 日本では福島事故の再防止対策が膨らみ、新規制基準には特重施設といわれるテロ対策まで設置するよ
-
「海面が上昇する」と聞くと、地球温暖化を思い浮かべるかもしれない。しかし、地下水の過剰な汲み上げなどにより地盤が下がる「地盤沈下」によっても、海面上昇と類似の現象が生じることは、あまり知られていない。 2014年に公開さ
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
ずいぶんと能天気な対応ぶりである。政府の対応もテレビ画面に飛び込んで来る政治評論家らしき人々の論も。日本にとって1月に行われたと発表された北朝鮮の4回目の核実験という事態は、核およびミサイル配備の技術的側面からすれば、米国にとって1962年のキューバ危機にも等しい事態だと見るべきではないか。
-
バイデンの石油政策の矛盾ぶりが露呈し、米国ではエネルギー政策の論客が批判を強めている。 バイデンは、温暖化対策の名の下に、米国の石油・ガス生産者を妨害するためにあらゆることを行ってきた。党内の左派を満足させるためだ。 バ
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間