豪首相「COP26で石炭は終焉」との主張に猛然と反論
COP26におけるグラスゴー気候合意は石炭発電にとって「死の鐘」となったと英国ボリス・ジョンソン首相は述べたが、これに反論して、オーストラリアのスコット・モリソン首相は、石炭産業は今後も何十年も事業を続ける、と述べた。

スコット・モリソン オーストラリア首相 Wikipediaより
海外各紙が報じている(SBS (ビデオインタビュー付き), Dailymail、Washingtonpost)
モリソンの発言概要は以下のとおり:
- 2050年までに排出量を完全にゼロにするという目標のためにオーストラリアの農村部や地域の人々に「代償を払わせる」ことはしない。(注:オーストラリアは主に民間の自主的取り組みによって目標を達成するとしている)
- 2030年の排出目標の深堀はしない(注:COP26で採択されたグラスゴー気候協定では、来年エジプトで開催されるCOP27サミットまでに各国が「パリ協定の気温目標と整合的な」2030年の排出削減目標の深堀を検討することになっている。現在のオーストラリアの目標は2005年比で2030年までに30%削減となっている。)
- 低排出ガスの新技術への移行は長い時間をかけて行われるため、石炭部門で雇用されているオーストラリア人は、今後何十年もその業界で働き続けることになる。
- オーストラリアの国益を守るために立ち上がることを謝罪するつもりはない(no apologies)。(注:オーストラリアは、世界第2位の石炭輸出国であり、世界第5位の石炭生産国である。オーストラリアから石炭を購入している主な国は、日本、インド、中国、台湾)。
- 温暖化問題を実際に解決することができるとわかっている技術進歩に焦点を当て、安全保障と経済とのバランスのとれた方法で温暖化対策を行うつもりだ。温暖化対策のためにオーストラリア人に税金を課したり、法律で規制したり、強制したりするつもりはない。
外国の圧力に阿らず毅然として国益を守る。これが本当の政治家だ。日本にはこのような人物はいないのか?
■
関連記事
-
トランプ前大統領とハリス副大統領の討論会が9月10日に開催される。大統領選に向けた支持率調査によると、民主党の大統領候補であるハリス副大統領が42%、共和党候補のトランプ前大統領が37%で、ハリス氏がリードを広げていると
-
田中 雄三 中所得国の脱炭素化障害と日本の対応 2021年5月にGHGネットゼロのロードマップを発表したIEAは、「2050年ネットゼロ エミッションへの道のりは狭く、それを維持するには、利用可能なすべてのクリーンで効率
-
筆者は「2023年はESGや脱炭素の終わりの始まり」と考えていますが、日本政府や産業界は逆の方向に走っています。このままでは2030年や2040年の世代が振り返った際に、2023年はグリーンウォッシュ元年だったと呼ばれる
-
日本政府はEUの国境炭素税(CBAM)に対抗するためとして、国内排出量取引制度の法制化を進めている。 CBAMの矢面に立つのは日本ではなく、CBAMは世界を敵に回すために腰砕けになるであろうこと、CBAMを理由にして経済
-
>>>(上)はこちら 3. 原発推進の理由 前回述べたように、アジアを中心に原発は再び主流になりつつある。その理由の第一は、2011年3月の原発事故の影響を受けて全国の原発が停止したため、膨大な費用が余
-
国家戦略室が策定した「革新的エネルギー・環境戦略」の問題を指摘する声は大きいが、その中でも、原子力政策と核燃料サイクル政策の矛盾についてが多い。これは、「原子力の長期利用がないのに再処理を継続することは、矛盾している」という指摘である。
-
ロシアへのエネルギー依存を脱却すべく、欧州が世界中からエネルギーを買い漁っている。この影響で世界のエネルギー価格は暴騰した。これに耐えかねて、開発途上国では石炭の増産と石炭火力発電の利用計画が次々と発表されている。 ニュ
-
9月14日、政府のエネルギー・環境会議は「2030年代に原発ゼロ」を目指す革新的エネルギー環境戦略を決定した。迫りくる選挙の足音を前に、エネルギー安全保障という国家の大事に目をつぶり、炎上する反原発風に気圧された、大衆迎合そのものといえる決定である。産業界からの一斉の反発で閣議決定にまでは至らなかったことは、将来の国民にとって不幸中の幸いであった。報道などによれば、米国政府筋などから伝えられた強い懸念もブレーキの一因と いう。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















