EUの炭素関税が破綻必至な理由を示す図表を公開します

2025年05月01日 06:40
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

Yastaj/iStock

前回の記事で、①EUが実施しようとしている国境炭素税(CBAM)は、世界を敵に回す暴挙で、世界諸国によって潰されることになる、②このCBAMへの対応を理由に日本は排出量取引制度法案を今国会で審議しているが、経済自滅を招くだけなので否決すべだ、と述べた。

EU国境炭素税はBRICSが潰す:国会は排出量取引法案を否決せよ

今回は、CBAMの税率と対象となる国家についての計算結果を紹介する。

1. CBAMが課す国境炭素税の税率は何%になるか。

EU ETS価格を€80/t-CO₂として、代表的な埋込排出原単位(製品製造時のCO2排出原単位のこと) × EUETS(欧州の排出量取引制度)の排出権価格 ÷ 製品の代表的国際価格として、CBAMの税率を計算したのが表1である(為替は 1€ = US$1.10とした)。

結果は20%から79%と、極めて高い税率になることが分かる。トランプ税率なみといったところか。

表 CBAM対象品目ごとの税率推計値

なお留意点として、

  • EUは 原産国で既に課された炭素価格を控除するとしているため、実効税率は国ごとに変わる(ただしこの控除の是非はEUの審査による)。
  • 表は文献に基づく典型的な生産プロセスと製品を想定して計算した。各企業は実測値(例えば製鉄所単位でのLCA計算)を提出できれば、税率を下げることができる。
  • ETS価格が €100/t に上昇すれば、表中の関税換算率は 1.25倍になる。

2. CBAMの矢面に立つ国々はどこか(日本ではない)

さて、この高い税率の矢面に立つのは日本ではない。EUの輸入量全体を100%として、それに占める輸出国のシェアを、以下で6枚の図に示す。図は順に、鉄鋼、アルミ、セメント、窒素肥料、水素及び希ガス、電力である。

日本のシェアといえば、もっとも多い鉄鋼でも4%であり、中国、韓国、インドなど多くの国に続く11位である。鉄鋼以外の製品については、日本は殆ど輸出していない。EUは、世界を敵に回すことになるので、このCBAMは腰砕けになるだろう。日本へ深刻な悪影響を及ぼすことになるとは、考え難い。

■

『データが語る気候変動問題のホントとウソ』

 

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 福島では、未だに故郷を追われた16万人の人々が、不自由と不安のうちに出口の見えない避難生活を強いられている。首都圏では、毎週金曜日に官邸前で再稼働反対のデモが続けられている。そして、原子力規制庁が発足したが、規制委員会委員長は、委員会は再稼働の判断をしないと断言している。それはおかしいのではないか。
  • きのうのアゴラシンポジウムでは、カーボンニュートラルで製造業はどうなるのかを考えたが、やはり最大の焦点は自動車だった。政府の「グリーン成長戦略」では、2030年代なかばまでに新車販売の100%を電動車にすることになってい
  • 公開質問状の背景 先週末の朝、私のところに標記の文書(小泉 進次郎氏への公開質問状)が舞い込んできた。発信者は、自民党自民党総合エネルギー戦略調査会会長代理で衆議院議員の山本 拓氏である。曰く、小泉環境大臣は9月17日、
  • ウクライナ戦争の影響を受けて、米国でもエネルギー価格が高騰し、インフレが問題となっている。 ラムスセン・レポート社が発表した世論調査によると、米国の有権者は気候変動よりもエネルギーコストの上昇を懸念していることがわかった
  • 先日紹介した、『Climate:The Movie』という映画が、ネット上を駆け巡り、大きな波紋を呼んでいる。ファクトチェック団体によると、Xで150万回、YouTubeで100万回の視聴があったとのこと。 日本語字幕は
  • 森喜朗氏が安倍首相に提案したサマータイム(夏時間)の導入が、本気で検討されているようだ。産経新聞によると、議員立法で東京オリンピック対策として2019年と2020年だけ導入するというが、こんな変則的な夏時間は混乱のもとに
  • 「2050年のカーボンニュートラル実現には程遠い」 現実感のあるシナリオが発表された。日本エネルギー経済研究所による「IEEJ アウトルック 2023」だ。(プレスリリース、本文) 何しろここ数年、2050年のカーボンニ
  • 「気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか」については分厚い本を通読する人は少ないと思うので、多少ネタバラシの感は拭えないが、敢えて内容紹介と論評を試みたい。1回では紹介しきれないので、複数回にわたることをお許

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑