米国グリーン法は瀕死だが日本は政府も国会もグリーンに邁進

Tanankorn Pilong/iStock
2025年5月22日、米下院はトランプ大統領が「One Big Beautiful Bill(ビッグ・ビューティフル・ビル)」と呼ぶ歳出・歳入一括法案を、賛成215、反対214(棄権1)で可決した。
本法案の柱は、大規模な「トランプ減税」である。その財源確保のため、バイデン政権下で成立した「グリーンニューディール」を象徴する「インフレ抑制法(IRA)」に基づく再生可能エネルギー、電気自動車、省エネ機器の導入を支援する各種税額控除を打ち切る内容となっている。
その金額は莫大である。すでに46兆円分が執行されているが、打ち切りの対象は74兆円分にのぼると報じられている。
今後、上院である程度の修正が加えられる見通しであり、最終的な内容はまだ確定していないものの、インフレ抑制法(IRA)が消滅の危機に瀕していることは確かである。
一方、日本政府はグリーントランスフォーメーション(GX)計画を推進中である。今国会ではGX推進法等改正案の審議が進められており、既に衆議院を通過し、参議院では6月中旬の本会議で可決される見通しである。GX計画では、国債を発行して20兆円を調達し、10年間で官民合わせて総額150兆円の脱炭素投資を「規制と支援によって」実現するとされている。
この日米の対比を以下の図に示した(1ドル=145円換算)。

米国では、莫大な費用を要するインフレ抑制法(IRA)が廃止の危機に直面しているのに対し、日本は相変わらずGXに邁進している。
もともと米国のエネルギーは安価であり、日本は高い。米国では現在、安価な電力を活用したデータセンターの建設ラッシュが進行中であるが、一方でGXによって電気料金のさらなる上昇が見込まれる日本は、取り残され、再び成長の機会を失うおそれがある。
国会審議においては、GXによる電気料金の高騰、そしてそれがもたらす経済への悪影響について、真剣な議論が求められる。
■
関連記事
-
北海道寿都町が高レベル放射性廃棄物最終処分場選定の文献調査に応募したことを巡って、北海道の鈴木知事が4日、梶山経済産業大臣と会談し、「文献調査」は『高レベル放射性廃棄物は受け入れがたい』とする道の条例の制定の趣旨に反する
-
脱化石燃料会議の位置付け 「脱化石燃料に関する第1回国際会議」が、2026年4月24日~29日、コロンビアの石炭輸出港サンタ・マルタで開催された。 2023年にUAE・ドバイで開催されたCOP28での合意文書に「化石燃料
-
政府は2030年に2005年比で26%の温室効果ガス削減という数値目標を提示した。だがこれは、コストをあまり考慮せずに積み上げた数字であって、最大限努力した場合の「削減ポテンシャル」と見るべきである。
-
11月6日(日)~同年11月18日(金)まで、エジプトのシャルム・エル・シェイクにて国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が開催される。 参加国、参加主体は、それぞれの思惑の中で準備を進めているようだが、こ
-
令和2年版の防災白書には「気候変動×防災」という特集が組まれており、それを見たメディアが「地球温暖化によって、過去30年に大雨の日数が1.7倍になり、水害が激甚化した」としばしば書いている。 だがこれはフェイクニュースで
-
IPCCの報告が昨年8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 以前、ハリケーン等(ハリケーン、台風、サイクロンの合計)
-
自民党の小林鷹之氏が、高効率石炭火力の海外輸出支援の必要性を訴え、「カーボンニュートラルに過度に拘泥」せず、より現実的に動くべきだとの立場を示した。 本人の発信でも、日本は2020年に新たな海外石炭火力への公的支援を原則
-
現在の日本のエネルギー政策では、エネルギー基本計画(2014年4月)により「原発依存度は、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」こととなり、電力事業者は今後、原発の新増設が難しくなりました。原発の再稼動反対と廃止を訴える人も増えました。このままでは2030年以降にベースロード電源の設備容量が僅少になり、電力の供給が不安定になることが懸念されます。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
















