沖縄に小型原子炉SMRを配備すべきこれだけの理由

2026年10月30日 06:50
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キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

沖縄への小型モジュール原子炉(Small Modular Reactor, SMR)の配備を、国の政策として進めてはどうか。沖縄は日本の国防の最前線にある。SMRは、その防衛活動と県民生活を支える電気と水を供給できる。

先日、日本沖縄政策研究フォーラムの仲村覚氏に招かれ、矢野義昭氏と共に鼎談をして、この考えで一致した※1)。

【鼎談】沖縄のエネルギー問題は日本の縮図だ ◉杉山大志・仲村覚・矢野義昭 ◉Webシンポジウム05  〜国防と経済安全保障の最前線〜

沖縄のアキレス腱はエネルギー供給だ。発電の多くを化石燃料に頼り、本土から電気を融通する送電線もない。石炭、天然ガス、石油を船で運び続けることが、経済活動の前提になっている。だが、有事に海上輸送が妨げられれば、備蓄や在庫に頼らざるを得ず、それが尽きれば発電も止まる。電気が止まると、あらゆる経済活動が影響を受け、また、防衛基地の活動も滞ることになる※2)。

そこでSMRが有力な選択肢になる。SMRとは、工場生産や設計の標準化を通じて費用低減を目指す小型原子炉である。設計次第では、燃料交換なしに数年単位で運転することが出来る。大量の化石燃料を頻繁に運び込む必要が無くなるため、海上補給が途絶えても発電を続けることができる※3)。

軍事施設や離島は、小型炉の初期の導入先として、経済的な合理性がある。米アイダホ国立研究所の報告では、SMRのうち特に小型なマイクロ炉の有望な初期市場として、遠隔地の軍事施設、北極圏の集落、島嶼、遠隔地の鉱山などを挙げている。いわゆる「孤島」や「陸の孤島」では、燃料輸送の費用が嵩むので、既存のディーゼル発電は高価になる。加えて、軍事施設では、補給が困難な状況でも電力を供給し続けられることに、大きな価値がある※3)。

小型炉は、開発当初では、本土の大規模な火力や原子力に価格で勝つことは出来ない。だから、代替電源が高価な場所で導入を始め、製造と運転の経験を積み、量産によって費用を下げてゆくことが妥当な戦略となる。日本でも、離島はディーゼル発電に頼っており、その発電費用は高いので、この考え方が当てはまる。

離島では、ディーゼル発電が高いからと言って、太陽光や風力を増やせば済むという話ではない。日照や風の状況によって発電量が変わり、必要なときに必要な電気が出るとは限らない。離島では電力系統が小さいため、その変動を吸収する余地も小さい。長期間の不足を蓄電池だけで補おうとすれば費用がかさむ。結局、最終的には、ディーゼル発電に頼らざるを得ない。そして何よりも、離島では、これら全てを建設・維持するための費用も嵩む。離島では何でも費用は高くなるが、太陽光・風力も例外ではない。

米軍はすでにSMRの展開の具体化に動いている。米陸軍は2026年8月、基地向けマイクロ炉の「Janus計画」で5社と5か所の初期導入先を選定したと発表した。最初の基地内原子炉の運転目標は2028年9月である。SMRによる電源確保が、防衛力の一部として位置付けられている。日本でも、この米国の事例を参考として、離島や防衛施設での導入を検討してはどうか※4)。

SMRへ着目するもう1つの理由は、今後の防衛においては、電力供給の確保がこれまで以上に重要になることだ。高出力レーダーや通信設備に加え、ドローンを迎撃する高出力レーザーなど、電気を多く使う装備の開発・導入が進んでいる。米陸軍は2026年9月、高エネルギーレーザー兵器の初の生産契約を発表した※5)。こうした装備を継続して使うには、電力供給の確保が必須になる。SMRは、これからの防衛を支える電源としても検討する価値がある。

もちろん、小型炉の導入は、県民の暮らしや産業にも役立つ。水産業では製氷や冷凍・冷蔵に、水産加工業では加工設備や衛生管理に多くの電気を使う。電力を安定して供給できれば、水揚げした魚を地元で保存・加工し、付加価値を高める事業を育てることが出来る。養殖施設のポンプや水処理にも電力が必要だ。SMRは、人々が島で働き、暮らし続けるための産業基盤になる。

SMRは観光業を支える水の供給にも使える。ホテルや飲食店にとって、電気と水の安定供給は営業の大前提である。沖縄ではすでに海水淡水化が行われ、北谷の施設は1日約4万立方メートルの淡水を生産できる。小型炉の安定した電力を淡水化や送水に利用すれば、降雨に左右されにくい安定した水源を拡充することができる※6)。

まずはいくつかの離島を選定し、防衛および地元への電力・水供給の観点から、SMR立地の実施可能性を検討してはどうか。うまく実現すれば、抑止力の強化によって平和が維持されると共に、産業も振興されて、県民の暮らしは豊かになる。そして、その経験の先には、更なるSMRの国内展開が見えてくる。

【参考文献】

※1)日本沖縄政策研究フォーラム「【鼎談】沖縄のエネルギー問題は日本の縮図だ ◉杉山大志・仲村覚・矢野義昭 ◉Webシンポジウム05 〜国防と経済安全保障の最前線〜」
※2)沖縄電力「沖縄エリアの特徴」
※3)Shropshire, D., Black, G. and Araújo, K. (2021), Global Market Analysis of Microreactors, INL/EXT-21-63214, June 2021, pp. 5, 7–10.(長期燃料交換間隔、初期市場、費用の分析)
※4)U.S. Army (2026), “Army reaches agreement with private industry for nuclear micro-reactors”, August 26, 2026.
※5)U.S. Army (2026), “Army awards production contract for Enduring-High Energy Laser System”, September 2, 2026.
※6)沖縄県企業局「海水」海水淡水化センターの概要(1日約4万立方メートルは生産能力)

【関連する筆者の記事】

・杉山大志「離島への小型原子炉SMR導入は一石二鳥、エネルギー確保に加え安全保障にも」キヤノングローバル戦略研究所、2023年12月19日。

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