今週のアップデート — 自然エネルギーとスマートグリッド、新たな動きに注目しよう(2012年6月11日)
今週のコラム
1) GEPRはエネルギー問題をめぐるさまざまな立場の意見を紹介しています。環境問題のオピニオンリーダーで、UNEP・FI(国連環境計画金融イニシアティブ)特別顧問である末吉竹二郎さんにインタビューを行いました。
「脱原発は国民の総意、道筋を考えよう=自然エネルギーによる社会変革への期待(上)」
「太陽光発電と買取制度の秘められた力=自然エネルギーによる社会変革への期待(下)」
末吉さんは原発事故を受けて脱原発で国民の意見はまとまっていると指摘。しかし、それを現実的にかつ長期的な視点で行う発想が政府に乏しいと指摘します。そして脱原発を進める手段が自然エネルギーで、その可能性を育てることを訴えます。
GEPRは中立的な立場に立ち、エネルギーについて読者の皆様の参考になる情報を提供しています。これまでのコンテンツでは急速な脱原発や、また自然エネルギーの過度の支援についての批判がありました。末吉さんの意見を読み比べ、読者の皆様の思索をまとめていただきたいと考えます。
2) GEPRを運営するアゴラ研究所は、ドワンゴ社の提供する「ニコニコ生放送」で、「ニコ生アゴラ」という番組を提供しています。月250万ページビューで日本最大級の閲覧数を持つ言論プラットホーム「アゴラ」の寄稿者によるリアルの対論番組です。6月5日の番組を記事化しました。
「ニコ生アゴラ「2012年の夏、果たして電力は足りるのか!?」報告−解決のカギはスマートグリッド」
元グーグル日本法人社長の村上憲郎氏、国際環境経済研究所所長の澤昭裕氏、環境コンサルタントの竹内純子さんが出演し、アゴラ研究所の池田信夫所長が司会を務めました。
この夏の電力需給の状況を話し合い、その上で、電力不足の状況を乗り越える方法を話し合いました。池田氏は「IOTコンソーシャム」というNPOを立ち上げる予定を公表しました。IOTとは「Internet of Things :モノのインターネット」のことで、インターネットが家電製品などさまざまな現実の出来事と結びつき、より定着していく潮流の総称です。
IOTコンソーシャムではエネルギーシステムの改革、そしてスマートグリッドとIOTを結びつける活動を行います。GEPRはその事務局となります。(池田氏の解説記事『ソフトバンクのスマートメーター構想』)
3)GEPRはNPO法人国際環境経済研究所(IEEI)と提携し、相互にコンテンツを共有しています。民間有志からつくる電力改革研究会のコラム「日本の停電時間が短いのはなぜか」を提供します。日本の停電時間の短さは、詳細なシステム作りの工夫があるためです。
今週のニュース
1)6月8日に野田佳彦首相が記者会見で停止中の関西電力の大飯原発3号機、4号機の再稼動が必要であり、日本では現時点で国民生活を守りながら、安全性を確保しつつ原発を使い続けなければならないことを明言しました。(野田総理記者会見の映像と音声の原稿化、首相官邸ホームページ記事)
今週のリンク
1)「エネルギー・環境政策の国民的議論のために」。電力中央研究所(2012年5月公表)。1・震災時のエネルギー利用および節電の実態調査 2・エネルギー・環境政策の実効性の評価 3・地球規模での温暖化のあり方を探る−以上の3論文の書かれたパンフレットです。いずれも詳細な調査に基づいた意義深い論文です。特に節電実態調査では、15%の節電義務が加わった昨年の夏の節電で、大規模工場は平均で1200万円のコスト増になったという厳しい現実が紹介されています。
2) 「原子力損害賠償法の特色と課題−賠償スキームを含めた「安全・安心」を確立する」(2012年6月公表)。今回の記事に登場したNPO国際環境研究所の澤昭裕氏、また竹内純子さんが日本原子力学会誌12年6月号(40ページ以降)に寄稿しています。日本の原子力損害賠償法は、政府の関与の程度があいまいです。また福島原発事故の後で、政府の負担を減らすために、東電に負担を負わせる形になっています。それが逆に東京電力の資金調達を困難にして、政府が関与せざるを得ない状況をつくる可能性があることを指摘。今後の事故の可能性がゼロでない以上、国の関与の程度を明確化することが必要と提言しています。
3) 原子力学会誌12年6月号特集「福島第一原発事故の対応と今後の計画」東京電力の社員らが、現時点の原発の状況と今後の対応について解説しています。
関連記事
-
田中 雄三 国際エネルギー機関(IEA)が公表した、世界のCO2排出量を実質ゼロとするIEAロードマップ(以下IEA-NZEと略)は高い関心を集めています。しかし、必要なのは世界のロードマップではなく、日本のロードマップ
-
人形峠(鳥取県)の国内ウラン鉱山の跡地。日本はウランの産出もほとんどない 1・ウラン資源の特徴 ウラン鉱床は鉄鉱石やアルミ鉱石などの鉱床とは異なり、その規模がはるかに小さい。ウラン含有量が20万トンもあれば
-
前回、日本政府の2030年46%削減を前提とした企業のカーボンニュートラル宣言は未達となる可能性が高いためESGのG(ガバナンス)に反することを指摘しました。今回はESGのS(社会性)に反することを論じます。 まず、現実
-
日本の2020年以降の削減目標の「基準年」はいつになるのか。一般の方にはそれほど関心のない地味な事柄だが、しかし、基準年をいつにするかで目標の見え方は全く異なる。
-
スマートグリッドと呼ばれる、情報通信技術と結びついた新しい発送電網の構想が注目されています。東日本大震災と、それに伴う電力不足の中で、需要に応じた送電を、このシステムによって実施しようとしているのです。
-
図は2015年のパリ協定合意以降(2023年上期まで)の石炭火力発電の増加量(赤)と減少量(緑)である。単位はギガワット(GW)=100万キロワットで、だいたい原子力発電所1基分に相当する。 これを見ると欧州と北米では石
-
日経エネルギーNextが6月5日に掲載した「グローバル本社から突然の再エネ100%指示、コスト削減も実現した手法とは」という記事。 タイトルと中身が矛盾しています。 まず、見出しで「脱炭素の第一歩、再エネ電力へはこう切り
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 先日、NHKのBS世界のドキュメンタリーで「地球温暖化はウソ?世論動かす“プロ”の暗躍」と言う番組が放送された。番組の概要にはこうある。 世界的な潮流に反してアメリカの保守派に
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間