ブラックロックをウェストバージニア州が逆ダイベストメント
資産運用会社の大手ブラックロックは、投資先に脱炭素を求めている。これに対し、化石燃料に経済を依存するウェストバージニア州が叛旗を翻した。
すなわち、”ウェストバージニアのエネルギーやアメリカの資本主義よりも、共産主義の中国の方が良い投資先だと考えている会社は、明らかに投資戦略が間違っている” として、今後、州の資金運営において同社を利用しない方針を発表した。
以下、1月17日付のプレスリリースの全文を翻訳する。なお原文には情報源へのリンクが張ってあるがここでは割愛する。
ムーア財務長官、州の財務投資委員会がブラックロック社の投資ファンドの使用を終了することを発表
ウェストバージニア州のライリー・ムーア州財務長官は本日、州の約80億ドルの運営資金を管理する財務投資委員会が、銀行との取引においてブラックロック社の投資ファンドを使用しないことを発表した。
この決定は、ブラックロック社が、石炭、石油、天然ガス産業に害を与える「ネット・ゼロ」(注:CO2実質ゼロのこと)投資戦略を取り入れるよう企業に働きかける一方で、国益を破壊し、ウェストバージニア州の製造基盤や雇用市場に損害を与える中国企業への投資を増やしているという最近の報道を踏まえたものだ。
ムーア財務長官は、「州の最高財務責任者および財務投資委員会の委員長として、私には納税者の資金が州と国の利益を反映した責任ある財務的に健全な方法で管理されることを保証する義務があり、ブラックロック社との取引はその義務に反するものと考えている」と述べている。
ムーア財務長官は、今回の措置は、西バージニア州民の利益や生活を直接脅かすような企業方針を持つ企業とは取引すべきではないという信念に沿ったものであると述べている。
また、ムーア財務長官は、中国では自由市場の保護や知的財産権が欠如しており、市場や企業活動に対する政府の干渉が顕著であることから、中国に多額の投資を行う企業には大きな財務リスクがあると指摘しています。
ムーア財務長官は、「中国政府によるビジネスや市場への露骨な干渉と統制は、中国に投資しようとする者に多大な不確実性とリスクをもたらしている」と述べている。
ブラックロックは、米国商務省が “米国の外交政策上の利益に反する行為をしている “と認定した一部の中国企業に投資していると批判されている。
「ブラックロック社のCEOであるラリー・フィンク氏は、地球を救うという名目で、石炭、天然ガス、石油といった信頼できるエネルギー源を損なうような投資目標を約束するよう、企業のリーダーたちに率直に働きかけているが、同時に彼は、中国に数十億ドルもの新たな資本を注ぎ込み、忌まわしい人権侵害や大量虐殺、COVID-19という世界的なパンデミックの原因となった同国の役割には目をつぶっている」とムーア財務長官は述べている。
リベラルな金融家であるジョージ・ソロス氏でさえ、ブラックロックの中国への投資は、わが国の安全保障に損害を与える可能性のある『悲劇的な過ち』であると述べている。
「ウェストバージニアのエネルギーやアメリカの資本主義よりも、共産主義の中国の方が良い投資先だと考える企業は、明らかに投資戦略が間違っている」とムーア財務長官は述べた。”我々は、我々の経済を破壊しようとしていない人々に、我々の州のビジネスを与え続けるであろう。”
さて、このような動きは他の州や資産運用会社にも広がってゆくのだろうか。
上記と同じ論理は、日本の公的な資金運用機関や、その取引先の資産運用会社にも当てはまる。日本でも似た様な動きが起きるだろうか。今後の展開が注目される。
■
関連記事
-
昨年10月に公開された東京電力社内のテレビ会議の模様を見た。福島第一原発免震重要棟緊急対策室本部と本店非常災害対策室とのやりとりを中心に、時々福島オフサイトセンターを含めたコミュニケーションの様子の所々を、5時間余り分ピックアップして、音声入りの動画を公開したものだ。また、その後11月末にも追加の画像公開がなされている。
-
「もんじゅ」の運営主体である日本原子力研究開発機構(原子力機構)が、「度重なる保安規定違反」がもとで原子力規制委員会(規制委)から「(もんじゅを)運転する基本的能力を有しているとは認めがたい」(昨年11月4日の田中委員長発言)と断罪され、退場を迫られた。
-
先日紹介した、『Climate:The Movie』という映画が、ネット上を駆け巡り、大きな波紋を呼んでいる。ファクトチェック団体によると、Xで150万回、YouTubeで100万回の視聴があったとのこと。 日本語字幕は
-
今年3月の電力危機では、政府は「電力逼迫警報」を出したが、今年の夏には電力制限令も用意しているという。今年の冬は予備率がマイナスで、計画停電は避けられない。なぜこんなことになるのか。そしてそれが今からわかっているのに避け
-
日本の鉄鋼業は、世界最高の生産におけるエネルギー効率を達成している。それを各国に提供することで、世界の鉄鋼業のエネルギー使用の減少、そして温室効果ガスの排出抑制につなげようとしている。その紹介。
-
日本の学者、国会議員らが、4月に台湾(中華民国)の学会の招待で、台湾のシンポジウムに参加し、馬英九総統と会見した。その報告。日台にはエネルギーをめぐる類似性があり、反対運動の姿も似ていた。
-
米国ブレークスルー研究所の報告書「太陽帝国の罪(Sins of a solar empire)」に衝撃的な数字が出ている。カリフォルニアで設置される太陽光パネルは、石炭火力が発電の主力の中国で製造しているので、10年使わ
-
政府は電力改革、並びに温暖化対策の一環として、電力小売事業者に対して2030年の電力非化石化率44%という目標を設定している。これに対応するため、政府は電力小売り事業者が「非化石価値取引市場」から非化石電源証書(原子力、
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間