今週のアップデート — 核燃料サイクル、歴史的検証(2013年8月19日)
今週のリンク
1)日本は核燃料サイクルを放棄するなかれ・その1 — 韓国はなぜ再処理を目指すのか
日本は核燃料サイクルを放棄するなかれ・その2 — 原子力の国際規制、米国の意図
日本の原子力問題で、使用済み核燃料の処理の問題は今でも先行きが見えません。日本はその再処理を行い、量を減らして核兵器に使われるプルトニウムを持たない「核燃料サイクル政策」を進めてきました。ところが再処理は進まず、それをつかうもんじゅは稼動せず、最終処分地も決まりません。
この問題に40年前からかかわる、外交評論家の金子熊夫氏の論考をいただきました。問題解決には過去の検証が不可欠です。
金子氏は外務省の初代原子力課長で、この核燃料サイクルの構想の立ち上げにかかわりました。その後は東海大学教授としての研究活動を続けました。GEPRには、「核燃料サイクルは安全保障の観点から止められない」を寄稿いただきましたが、今回は歴史的な経緯を振り返ったものです。
来週に、寄稿3と4を紹介します。
2)真の原子力再生に必要なことは何か?(上)— 栄光の日々と混迷の日々
協力する国際環境経済研究所の論考です。組織論の研究者の方が、うまくいっていた日本の原発が、なぜ福島原発事故を発生させたのかという問題について検証しています。(下)は来週、掲載します。
今週のアップデート
英国のジャーナリストで環境、エネルギー問題に詳しいマーク・リナス氏の最新刊について、池田信夫アゴラ研究所所長が論評しています。世界の論調では、他のエネルギーとの比較において、原子力が優位にあるとの評価が定着。福島事故後も変わりません。
2)原発審査1カ月、再稼働へ明暗 泊は「黄信号」 、伊方・川内 大きな問題なく
日経8月15日記事。原子力規制委員会による原子力発電所の安全審査がスタートしてほぼ1カ月たち、再稼働に向けた各原発の進捗に濃淡が出ています。四国電力・伊方(愛媛県)や九州電力・川内(鹿児島県)が順調な一方で、北海道電力・泊(北海道)は遅れが目立ち、冬の稼働が厳しくなっているようです。
英経済誌エコノミスト8月3日記事。日経の翻訳です。シェールガスの増産は採掘法の技術革新でもたらされました。7月に96歳で亡くなった米国のジョージ・ミッチェル氏の物語です。70歳を越えて、新技術を開発しました。
大和総研、エコノミスト神田慶司氏のコラム。FIT(固定価格買取制度)から1年。太陽光で3倍(計画ベース)など伸びは著しいが、コスト、そして目標の不明確さがあるとの問題を指摘しています。
5)日本原子力研究開発機構改革の基本的とりまとめ(中間とりまとめ)について
文部科学省。今年秋の改革に向けて外部有識者と同機構とともに発表した中間報告です。同機構は文部科学省所管で、日本の原子力研究の中心でした。高速増殖炉もんじゅの運営団体でもあります。もんじゅ、福島事故対応などの業務集中を検討しています。ただ、もんじゅの先行きが不透明であるなど、問題のある改革案になっています。(解説として。読売新聞社説 8月19日)

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