エネルギー価格、日本高止まりの懸念 — IEAリポート
国際エネルギー機関(IEA)は11月12日、2013年の「世界のエネルギー展望」(World Energy Outlook 2013)見通しを発表した。その内容を紹介する。
IEA特設ページ(本文は有料)
プレスリリース(いずれも英語)
図表資料
予測についての資料
米国がエネルギー面で優位に
IEAは、今回も前年に引き続いて、シェールガスの増産問題を紹介。エネルギーの面で、「各国の役割に書き直しがある」とした。日本は、2035年になっても米国の電力とガスの価格で2倍となっていると見込まれ、米国のエネルギー価格面の優位が続くとした。
図表1「米国に比べた産業用エネルギーの相対価格」では、米国はシェールガスの増産によってガス価格で現在日本の約5分の1、電力価格は3分の1を推移。欧州、中国リリースによると、米国の製造業にとってかなり有利になると指摘した。そして米国はエネルギー輸出国に転じて、35年までにエネルギー需要を国内資源でまかなえるようになると予想している。
世界のエネルギー需要は増加傾向
一方で、世界のエネルギー需要はおう盛であり、石油価格は自動車や産業用需要の影響で、高止まりが続くと、予測している。また埋蔵量と生産量の差から、中東産油国、特に石油輸出国機構(OPEC) の供給での影響は、当面強い状況が続くと述べた。
図表2「一次エネルギー総供給の増加」を見ると、2011年までの25年間、と、それ以降の25年間の予測を比べると、ガスで1300Mtoe(Mtoeはエネルギーの石油100万トン当たりの換算量)から2600Mtoeと倍増、石油では1100Mtoeから1600Mtoeと、1・5倍になる。
エネルギーは先進国で石油を中心に増加は押さえられるものの、2030年前後には中国が米国を抜いて世界最大の石油消費国になると予測した。
一方、原子力エネルギーは35年までの間、「中国や韓国、インド、ロシアに牽引される形で増加する」と予測した。風力や太陽光など再生可能エネルギーも、世界全体の発電量増加分の約半分を占めるが、それによる電力供給の安定性について、疑問を示している。
(2013年11月25日掲載)
関連記事
-
アゴラ研究所の運営する映像コンテンツ言論アリーナ。6月24日はエネルギーアナリストの岩瀬昇氏を招き、「原油価格、乱高下の謎を解く」という放送を行った。岩瀬氏はかつて三井物産に勤務し、石油ビジネスにかかわった。アゴラの寄稿者でもある。
-
【原発再稼動をめぐる政府・与党の情勢】 池田 本日は細田健一衆議院議員に出演いただきました。原発への反感が強く、政治的に難しいエネルギー・原子力問題について、政治家の立場から語っていただきます。経産官僚出身であり、東電の柏崎刈羽原発の地元である新潟2区選出。また電力安定推進議員連盟の事務局次長です。
-
アゴラ研究所の運営するネット放送「言論アリーナ」を公開しました。 今回のテーマは「エネルギー産業のイノベーション」です。 再エネや電気自動車などの分散型技術が急速に進歩する中、未来のエネルギー産業はどうなるのでしょうか
-
再稼動の遅れは、新潟県の泉田知事と東電の対立だけが理由ではない。「新基準により審査をやり直す原子力規制委員会の方針も問題だ」と、池田信夫氏は指摘した。報道されているところでは、原子力規制庁の審査チームは3つ。これが1基当たり半年かけて、審査をする。全部が終了するのは、単純な計算で8年先になる。
-
大阪のビジネス街である中之島で、隣接する2棟のビルの対比が話題という。関西電力本社ビルと朝日新聞グループの運営する中之島フェスティバルタワーだ。関電ビルでは電力危機が続くためにその使用を減らし、夏は冷暖、冬は暖房が効かない。
-
日本最大級の言論サイト「アゴラ」を運営しているアゴラ研究所(所長・池田信夫)は、運営する環境・エネルギー問題での論説を集めたバーチャルシンクタンク「GEPR」(グローバル・ポリシーリサーチ)で、今後は新たに農業問題を取り上げていく。
-
東日本大震災で日本経済は大きなダメージを受けたが、混乱する政治がその打撃を拡大している。2013年の貿易収支は11兆4745億円の赤字となり、これは史上最大である。経常収支も第二次石油危機以来の赤字となり、今後も赤字基調が続くおそれがある。円安にしようと大胆な金融緩和を進め安倍政権が、エネルギー危機を呼び込んだのだ。
-
原子力規制委員会の有識者会合は7月17日、北陸電力志賀原子力発電所(石川県)の1号機原子炉建屋直下を走る破砕帯について、活断層の疑いを否定できないとする評価書案をまとめた。この評価により同原発の当面の稼動は難しくなった。規制委の問題行動がまた繰り返されている。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間