原発立地地域への配慮を−滝波議員【原子力規制委員会を改革せよ2】
滝波宏文参議院議員(自民党)(たきなみ・ひろふみ)東京大学法学部卒。94年に大蔵省(現財務省)に入省。98年米シカゴ大学大学院公共政策学科を修了し修士号取得。05年米国公認会計士試験に合格。09年から11年までスタンフォード大学客員研究員。主計局主査、人事企画室長、広報室長、機構業務室長などを経て12年12月に財務省を退官。13年の参議院議員選挙に福井県選挙区から出馬し初当選。
福島第一原発事故の後、原発立地地域の人々は不安をいだきながら暮らしている。安全規制行政に求められるのは原子力の信頼回復だが、田中俊一委員長らは立地地域との対話を拒んでいる。福井県選出の滝波宏文議員に地域の声を聞いた。
−福島第一原子力発電所の後、立地地域は原子力政策をどう見ていますか。
滝波・原子力発電には便益と同時に事故の不安があります。立地地域は不安とリスクを引き受け、経済や都市、そして日本経済の繁栄を支えてきました。私のふるさとであり選挙区である福井県は正にそのような立場です。
立地地域に住む人たちは、原子力のリスクを引き受けたことについて、消費地の人たちや国から公正な評価を受けていないという思いがあります。原子力政策に必ずしも支持が集まらないのも、そうした理由があるかもしれません。
−2012年に原子力規制委員会が設立され、安全規制も一新されました。その活動をどのように評価しますか。
滝波・規制行政を刷新するなら、立地地域の思いをくむ事こそが、その行政の基盤とすべきでした。しかし、残念ながらこの点について規制委の配慮が不十分です。
−具体的には、どのような点で感じますか。
滝波・田中俊一委員長は立地地域をほとんど訪問せず、福島県以外は川内・島根原発のみです。立地自治体首長とも、全国組織の代表でないと会いません。福井県美浜町では原子力発電所を誘致し、日本で初めての商業運転として、1970年から関西電力美浜1号機が稼動しています。そのパイオニアである美浜町の山口治太郎町長にうかがったら、規制委設置後4年も経っているのに、委員長にはまだ会っていないとのことでした。立地が直面するリスクは、町の大小や全国代表かどうかでは左右されないはずなのに。これはないがしろにされているとされてもしかたがないでしょう。
参院の経産委員会の質疑で、田中委員長になぜ現地に行かないのかと聞くと、「忙しい」との返答で驚きました。「自分は政治家、大臣ではないからいいんだ」とのことでしたが、組織トップの重要な仕事は、それこそ官民問わずステークホルダー、すなわち関係者とのコミュニケーションです。田中委員長は、立地とのコミュニケーションを軽視しているとしか考えられない状況です。規制委が同じような態度を続けるようならば、立地地域はもう「もたない」かもしれません。
−規制行政の進め方にも不満の声が多くあります。
滝波・まず権限濫用の問題を是正すべきです。例えば、規制行政の根拠が、いまだ法的に曖昧な点がかなりあります。「新規制基準の適合を原子炉稼動の前提にする」という趣旨で、法的な根拠のない「田中試案」が現在の審査の根拠になっています。また活断層の審査には、法的な根拠のない有識者会合が前置されています。
−規制委は「活断層が否定できない」とした有識者会合の報告書を、安全審査で「重要な知見として参考にする」としています。
滝波・私は財務省の行政官でしたが、法的根拠のない私的な会合の「報告」を行政処分の手続きに組み入れることは有り得ません。このようなデュープロセス(適正手続)を欠いた行政では、規制の正当性、予見可能性などが損なわれます。
早急に、リーガルマインドに基づく成熟した規制行政に転換せねばなりません。
(このインタビューはエネルギーフォーラム16年12月号に掲載したものを転載した。許諾いただいた関係者の皆さまに感謝を申し上げる)
関連記事
-
はじめに 本稿では「有機物質地下資源」という聞き慣れない言葉を用いる。これは石油、石炭、天然ガス、シェールオイルなど、一般に「化石燃料」と呼ばれるものを指す。筆者が「化石燃料」という言葉を避けるのは、その名称が燃焼用途(
-
筆者は、三陸大津波は、いつかは分からないが必ず来ると思い、ときどき現地に赴いて調べていた。また原子力発電は安全だというが、皆の注意が集まらないところが根本原因となって大事故が起こる可能性が強いと考え、いろいろな原発を見学し議論してきた。正にその通りのことが起こってしまったのが今回の東日本大震災である。続きを読む
-
アゴラ研究所、またその運営するエネルギー問題のバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)は、9月27日に静岡市で常葉大学と共催で、第3回アゴラ・シンポジウム『災害のリスク 東日本大震災に何を学ぶか』を行った。
-
イタリアがSMRで原子力回帰 それはアカンでしょ! イタリアがメローニ首相の主導のもとに原子力に回帰する方向だという。今年5月に、下院で原発活用の動議が可決された。 世界で最初の原子炉を作ったのはイタリア出身のノーベル物
-
政策アナリストの6月26日ハフィントンポストへの寄稿。以前規制委員会の委員だった島崎邦彦氏が、関電の大飯原発の差し止め訴訟に、原告の反原発運動家から陳述書を出し、基準地震動の算定見直しを主張。彼から規制委が意見を聞いたという内容を、批判的に解説した。原子力規制をめぐる意見表明の適正手続きが決められていないため、思いつきで意見が採用されている。
-
自民党萩生田光一政調会長の発言が猛批判を受けています。 トリガー条項、税調で議論しないことを確認 自公国3党協議(2023年11月30日付毎日新聞) 「今こういう制度をやっているのは日本ぐらいだ。脱炭素などを考えれば、あ
-
はじめに 報道によれば、2026年7月、高市早苗首相のインド訪問に合わせ、日印両政府は民間企業による水素・グリーンアンモニア生産計画への継続的な財政支援で合意した。 IHIがインドのACMEグループと組み、ラジャスタン州
-
中部電力の浜岡原子力発電所を11月8日に取材した。私は2012年8月に同所を訪問して「政治に翻弄される浜岡原発 — 中部電力の安全対策工事を訪ねて」という記事をGEPRで発表している。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
- COPの理想論に冷水:S&Pグローバルが描く2060年のエネルギー
- 秋田に2兆円AIデータセンター:「風力発電が決め手」は本当か
- 廃棄物もCO2も捨てたら価値はゼロになるのか? 炭素というレンズで読む思想史
- スコープ3に代わる新たな炭素会計?「E-ledgers/E-liability」とは
- データが示す石油輸入の中東依存度の実態
- AfD排除で進む「ドイツ民主主義の侵食」:ベーメ=ネスラー教授の警告
- 系統用蓄電池の問題点とはなにか?
- 全世界の町工場まで炭素簿記を義務化? E-ledgersという無理ゲー
- トランプが気候変動は「いかさま」だという理由
- モデルは未来を設計できるのか:現代社会にとっての「設計主義」とは?















