北海道で電力融通が急増:再エネと電力自由化の落とし穴

供給エリアの予備率が3%未満となることが想定されるときに、他の電力会社から電気を融通してもらうことを「需給ひっ迫融通」という。この需給ひっ迫融通が、2026年に入って頻繁に行われるようになった。
電力広域的運営推進機関の実績によれば、2025年11月~2026年10月の間の受電回数は北海道が136回で、東北14回、関西52回、中部7回などを大きく上回る(表1)。北海道の融通は延べ約70日にわたり、時間にして200時間を超える。要因として「風力の出力不足」が69回、「太陽光の出力不足」が35回挙げられている(複数の要因が挙げられている日もあり、その場合は両方に計上。詳細は、資料1「北海道電力に対する緊急時応援融通実績」に記載)。
表1 2025年11月~2026年10月の需給ひっ迫融通の回数
電力広域的運営推進機関のHPより筆者が集計
北海道の融通は主に東北電力・東京電力の応援で賄われている。いまは両エリアに余力があるからこそ成り立っている。しかし東北・東京管内でも太陽光発電と風力発電が増えれば、同じことが起きる。応援する側が余力を失ったとき、需給ひっ迫融通は送電できなくなる。つまり今はまだ「助ける余力」があるが、このまま不安定な太陽光発電と風力発電が増えれば停電回避の手段ではなくなる。
今回は、この需給ひっ迫融通の回数が増えた要因を深掘りしてみたい。
要因1:増え続ける再エネが電力供給を不安定にする
太陽光発電と風力発電の出力は天候に左右され、日々の発電電力量が変動することは昔からあった。しかし導入量が増えるほど、変動の絶対量(kW・kWh)は大きくなる。
北海道の2026年4~10月の日量実績を図1および図2に示す。太陽光は約2,300~18,600MWh、風力は約190~20,000MWhと、日によって1桁違う。前日との差の平均は太陽光で約3,400MWh、風力で約3,700MWh、最大では風力が1日で約16,600MWh変化している。
日量の発電量の変化量を、エリア内の火力や水力の出力増減で吸収しなければならない。日量よりも時間帯別の発電量の変化の方が、他の発電方式で吸収するのは大変な場合があるが、それは次の要因で分析する。

図1 北海道管内の太陽光発電日量変化
北海道電力電気予報より筆者集計

図2 北海道管内の風力発電日量変化
北海道電力電気予報より筆者集計
要因2:再エネが増えるほど火力発電の調整力が失われる
再エネが増えた分、常時運転する火力ユニットは減り、調整能力も減る。需給ひっ迫融通が行われた4月16日および10月19日の燃料別発電実績のグラフを図3および図4に示す。0MWより下に飛び出している灰色の部分は、揚水式発電でポンプ(電力を消費)した量を示している。

図3 北海道管内の風力発電日量変化(4/16~17)
北海道電力電気予報より筆者集計
4月16日は、風力発電がほとんど稼働していない。太陽光発電は昼間に最大2,235MWまで立ち上がり、火力は最小420MWまで絞られた。14:00以降、太陽光発電は急速に出力が下がり、17:00でほぼゼロになる。北海道は緯度が高く、経度が東に位置するためであろう、日没の時刻が早くなっている。
電力需要はその後も19:00くらいまで増加し、揚水式発電を高出力で運転させたが足りずに融通受電でしのいでいる。翌日の17日は幸い風力発電が高稼働だったため、管内の発電力で賄うことができた。
注目してほしいのは、16日も17日も0:00~4:00頃まで揚水式発電を運転していることだ。これは、夜間は太陽光発電が発電しないことと、この時期の北海道はまだ深夜帯は寒く、暖房が稼働して電力需要が大きいためと思われる。揚水式発電は発電した分より多くの電力を使ってポンプでくみ上げなければ、上池の水位は元に戻らない(揚水効率を70%とすれば、約1.3倍の電力が必要)。
16日の夕方から途中の停止を挟んで17日の5:00まで揚水式発電を行っている。17日の日中帯にポンプでくみ上げているが、17日の夕方の段階では24時間前の水位には戻っていないのではないだろうか。本当に綱渡りの電力供給だった。しかも、17日も風が吹かなければ他社からの融通受電をしなければならなかったことがわかる。

図4 北海道管内の風力発電日量変化(10/19~20)
北海道電力電気予報より筆者集計
10月19日は、風力発電も発電量が下がっていき、太陽光発電もあまり稼働していない。さらにグラフからはわからないが、LNG火力である石狩湾新港発電所(最大出力569MW)が、10月11日~20日までタービン設備点検ということで、平均出力が約65MW(最小10MW)にとどまり、石炭火力が平均約1,500MWと上限近くで張り付いている。それでも電気が足りなくて、5回の融通受電でしのいでいる。動かせるユニットが少なく、余裕のない運転だ。
要因3:自由化で採算の取れない火力発電所が消えていく
自由化で電力会社の経営体力は奪われ、稼働率の低い火力は廃止や休止に追い込まれている。北海道では奈井江発電所(石炭)1・2号、伊達発電所(石油)1・2号が長期計画停止となっている(表2参照)。再エネの変動を受け止めるはずの「いざという時の火力」が、採算を理由に消えていく。
さらに、北海道電力は2026年10月2日のプレスリリースによると、苫小牧発電所(石油)1号、苫小牧共同火力発電所(石油)3号を2030年3月をもって休止する。音別発電所(軽油)1、2号機を2030年3月をもって廃止することを発表した。いずれの発電所も運転開始後50年くらい経過していること、音別発電所は燃料費の高い軽油を燃料としており、最近はほとんど稼働していなかったであろうことを考えると、4カ所ともやむを得ないと思う。
苫小牧発電所、苫小牧共同火力発電所についても経営的には廃止したいところなのであろうが、電力会社の使命である供給責任を考えると休止にした、という苦渋の決断だったと思う。杉山氏の論文にも記載されているが、電力自由化と発送電分離によって、発電部門と送配電部門は別会社となった。
安定供給のために必要な供給力や調整力を、誰がどのように確保し、その費用を誰が負担するのか。従来の垂直統合体制とは異なる仕組みが求められている。経産省の今の制度設計はこの問題に対して有効に機能しているとは私は思えない。
そのため、北海道電力が経営的な理由でこの2つの発電所を廃止して、北海道エリアが将来慢性的な供給力不足となり、東京電力や東北電力から高価な融通電力を常に購入して、電気代が上がったとしても、誰も北海道電力を責めることはできない。自由化とはそういう側面もある、と覚悟しなければならない。
ちなみに、廃止を前提にしている長期休止火力に行ったことがあるが、装置はさび付いて配管などはメンテナンスされておらず、実際この発電所を再稼働させるとしても、掃除から始めて1年くらいの期間と数億円規模の修繕費用がかかるのではないか?と思った。新規に発電所を造るよりははるかに安いだろうが、そう簡単なことではない。
要因4:発送電分離で電力会社の調整機能が弱体化?

表2 北海道管内の火力発電ユニット停止計画(2026年度)
発電情報公開システムより筆者集計
表2は、発電情報公開システムから北海道管内の火力発電ユニットの停止や出力制限を抽出した。北海道は夏より冬に需要が増えるため、停止作業は冬を避けて計画される。ところが、ユニット停止一覧を見ると、需要の端境期である10月にあまりにも作業が集中しすぎているように見える。10月に石狩湾新港1号(56.9万kW)や知内1号などの作業が重なる状況で、再エネが急減すれば、融通に頼らざるを得ない。
垂直統合の1社体制では、火力部門と給電部門が停止時期を巡って「喧々諤々」の議論をして決めた。年間計画で決めた日程も、その後、月間・週間計画の段階で、「年間計画よりも高需要が想定されるので停止作業は延期できないか?」など調整を重ねた。
10月19日の例で示した石狩湾新港発電所のタービン設備点検は、どのような点検内容なのかわからないが、1社体制であれば、「日程を先送りできないか?」「19日は試運転でも何でも電気を作れないか?」などギリギリの調整を行ったと思う。
分社化後は、給電部門は系統運用会社となり、制度上は他社である火力部門の停止計画に意見できない。火力部門は、販売会社の需要予測に、系統会社が求める周波数調整用の余力を加えて供給力が足りるよう計画を立てる。
予想が100%当たれば不足は生じない。だが予想は外れる。外れたときのマージンを厚く取る余力は、経営体力を奪われた今の電力会社には乏しい(現在、各電力会社が発電会社と系統会社間でどのような発電機の停止調整を行っているかは公表されていない。現在の制度設計から筆者の推測を含んでいるので、誤りがあれば指摘してほしい。また会社によってやり方の違いはあると思う)。
おわりに:電力自由化のツケは電気料金に跳ね返る
垂直統合のもとでは、火力の運転・停止を全体最適で計画できた。バラバラになった今、それは期待できない。調整余力の確保にかかるコストは、最終的に私たちの電気代に積み上がっていく。
経産省は競争原理さえ導入すれば電気代は下がる、と信じていた。しかし全面自由化から10年経過し、そんなことはないことが証明されている。しかし役所は失敗を認めない。緊急時融通の急増は、再エネの導入量だけでなく、自由化後の供給力管理の仕組みを問い直すべき時期に来たことを示している。
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