非対称戦争は日本産業の出番ではなかろうか

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ウクライナ戦争と中東でのミサイル・ドローン戦は、現代戦の姿を一変させた。
かつて軍事力の象徴とされたのは、戦車、戦闘機、艦艇のような大型装備だった。もちろん、これらが直ちに無用になったわけではない。だが、戦場での優劣を決める要素は大きく変わった。高価な装備を前面に並べることは、今や敵に標的を差し出すことにもなりかねない。
米空母の運用をめぐっても、イラン側は対艦ミサイルや無人機によって米艦隊を遠ざけたと主張している。真偽や因果関係には慎重であるべきだが、少なくとも、空母でさえ長射程ミサイルの射程と標的化リスクを無視できない時代になったことは確かであろう。
現代の戦場では、まず発見されないことが重要である。発見されたとしても、一撃で機能を失わないことが必要である。そして損耗に備えて、デコイ(おとり)を含めて安価な装備を大量に用意しておかなければならない。
戦争は、巨大な装備を誇示する時代から、装備を大量生産し、隠し、攻撃に対して頑強な仕組みを備える時代へ移っている。
イランは米海軍と正面から戦えるわけではない。しかし、ホルムズ海峡で航行リスクを高め、世界経済に大きなコストを押しつける能力を持つ。このような非対称戦力こそ、イランの交渉上のてこになっている。
日本の防衛政策も、この変化を前提に考え直すべきであろう。
防衛省も、長射程ミサイル、無人機、弾薬確保、基地の強靱化といった課題を認識している。予算にもその方向性は反映され始めている。しかし、問題はそれが自衛隊全体の発想を変えるところまで進んでいるかどうかだ。
自衛隊も巨大な組織である以上、既存の装備体系や職種、予算配分を急に組み替えることは容易ではない。
現在の日本の防衛力整備は、なお従来型の装備体系を土台にしているように見える。戦闘機も必要、艦艇も必要、戦車も必要であり、その上で新しい技術も加える、という発想である。だが、この足し算の発想では限界がある。予算も人員も無限ではないからだ。
必要なのは、何を中心に置くかを決めることである。
日本は、大型正面装備を中心に据える防衛から、敵の猛攻撃を受けてもくじけない戦力を維持できる防衛へ、軸足を移すべきではないだろうか。
例えば、南西諸島防衛において、戦車はどの程度使えるのだろうか。
衛星や無人機で位置を把握され、ミサイルや徘徊弾で狙われれば、装甲車両は単独では高価な標的になりやすい。南西諸島で問われるべきなのは、戦車を何両置くかではなく、敵の第一撃を受けても戦力を維持できる仕組みをつくれるかである。
もちろん、地上部隊が不要になるわけではない。最後に土地を守るのは人間であり、砲弾などの火力も必要だ。しかし、南西諸島で本当に重要なのは、戦車の数ではなく、攻撃を受けても指揮が途切れず、弾薬と燃料が残り、通信が生き続けることであろう。それがなければ、どれほど高価な装備を保有していても、戦力としては機能しない。
ここに、日本が本来持っている強みがある。
日本は、巨大な軍事帝国ではない。しかし、トンネルを掘るのは得意である。そこに格納する精密な兵器を量産する製造業の能力も高い。
災害時にも通信や電力を復旧させる現場力を持っている。山が多く、地震や台風にさらされ、都市が密集しているという地理的条件の中で、日本はインフラを守り、修復し、長く使う技術を磨いてきた。
その能力を、防衛にもっと本格的に使うべきではないだろうか。
南西諸島や本土の重要拠点では、地形が許す限り、装備、燃料、弾薬、指揮通信機能を地上に露出させない工夫が必要である。山地を利用できる場所では地下施設を整え、そうでない場所でも掩体で守り、配置を分け、偽装と復旧の手順を平時からつくり込むべきだ。
重要なのは、敵の第一撃で防衛機能を失わないことである。これは、イランが長年重視してきた非対称戦力の発想でもある。政治体制への評価とは別に、分散し、秘匿し、相手に高いコストを強いるという軍事上の発想からは、日本も学ぶべき点がある。
そしてこのような防衛構想は、日本の産業構造と相性がよい。
従来の防衛産業は、ともすれば少数の大企業が主導して大型装備を長期間かけて開発する世界だった。戦闘機、潜水艦、護衛艦のような装備には、確かに高度な技術が必要である。しかし、これだけでは現代戦に対応できない。
これから重要になるのは、精密だが安価な装備を量産し、現場の声を受けてすぐ改良する能力である。ドローンの性能は機体だけで決まるわけではない。飛行時間はモーターと電池に左右され、妨害下で生き残れるかは通信方式にかかっている。標的を見つける力は、画像処理の精度に依存する。こうした要素の多くは、日本の産業がすでに蓄積してきた技術の延長線上にあるものだ。
同じことは対ドローン装備にも言える。敵の小型機を見つけ、識別し、妨害し、場合によっては撃ち落とす。そのためには、高価な迎撃ミサイルだけでは足りない。低コストで持続的に守るには、電波の異常を捉える技術、光学センサーの精度、音響解析、妨害ソフトウェアなどを使う必要がある。ここでも、日本の電機、通信、計測、制御などの企業には大いに出番がある。
つまるところ、非対称戦争に対応する防衛力を構築することは、日本の土木業、製造業、情報通信業などの幅広い産業基盤を動員する国家的な産業政策となる。
こうして見ると、非対称戦争の時代の到来は、日本にとって不利なことではない。むしろ、地味だが強い日本の産業力が生きる時代になるのではないか。
これこそが、ウクライナやイランの戦争から得られた教訓ではなかろうか。
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