CO2は本当に赤外線を大量に吸収するのか:温暖化スペクトルの3つの錯覚

2026年07月24日 06:45
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東京農工大学名誉教授

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が議論し、「地球温暖化の原因は二酸化炭素である」と結論づけた根拠とされる放射強制力のスペクトルを図1に示す。このスペクトルは、天文学辞典(公益社団法人日本天文学会)で誰でも見ることができる。

図1 大気の放射強制力(=地表面からの赤外線放射-大気上端からの赤外線放射)のスペクトル

一見すると、二酸化炭素(CO2)が多くの赤外線を吸収しているように見える。しかし、そこには、そのように誤解させるための3つの工夫がなされている。

1. スペクトルの横軸の単位

図1では、スペクトルの横軸の単位が波長である。波長は赤外線のエネルギーに「反比例」する。そうすると、例えば、吸収される赤外線の波長幅が同じ1μmでも、14μm~15μmの範囲の赤外線エネルギーは、4μm~5μmの範囲の赤外線エネルギーよりも少ない。

逆に言うと、吸収される赤外線エネルギーが同じならば、波長の長い領域での吸収は、波長の短い領域での吸収よりも面積が広くなり、多くの赤外線を吸収しているかのように誤解させる。このことは、横軸を赤外線のエネルギーに「比例」する波数(波長の逆数)にするとわかる。

図1では、CO2が吸収する13μm~17μmの範囲は、H2Oが吸収する5μm~8μmの範囲よりも広く見える。しかし、CO2が吸収する赤外線エネルギーは180cm–1(=770cm–1~590cm–1)であり、H2Oが吸収する赤外線エネルギーは750cm–1(=2000cm–1~1250cm–1)であるため、その1/4以下である。

2. スペクトルの縦軸の単位

図1では、スペクトルの縦軸の単位は「単位面積」当たりの赤外線エネルギーである。地表から放射された赤外線は、高度が高くなるにつれて広がるため、単位面積当たりの赤外線エネルギーは少なくなる。高度が高くなるにつれて、地球を取り囲む球面の表面積が大きくなるからである。

地球の半径を6370kmとすると、地表面での表面積は4π×(4.06×107 km2)である。仮に高度600kmを周回する観測衛星で、地表面から放射される赤外線エネルギーを観測すると、地球の中心からの距離は6.97×103km(= 600km+6370km)であるため、その高度での表面積は4π×(4.86×107 km2)となる。

両者の表面積の比は1.2となり、観測衛星での「単位面積」当たりの赤外線エネルギーは、地表面よりも20%も少ない。図2に示したように、スペクトルの破線よりも下の灰色の領域は、大気による赤外線エネルギーの吸収ではない。

図2 大気が赤外線を吸収しなくても、単位面積当たりの赤外線エネルギー(灰色の領域)は減る

3. スペクトルの分解能

地球(物体)から放射される赤外線の波数範囲は0~2500 cm–1である。一方、二酸化炭素は気体であるため、吸収する赤外線エネルギーが厳密に限られる。分解能が低ければ、液体や固体による吸収のようなスペクトルになるが(図1)、分解能が高ければ、振動回転線の集合となる(図3)※1)。

図3 分解能の高い分光光度計で測定された二酸化炭素の赤外線吸収スペクトル

振動回転線の吸収幅は、標準圧力でも0.1 cm–1以下である。また、振動回転線と振動回転線の間には、二酸化炭素が吸収しない、波数幅1.5 cm–1の赤外線領域がある。

そうすると、図1では、二酸化炭素が吸収する赤外線エネルギーは180 cm–1(=770 cm–1~590 cm–1)に見えるが、実際には12cm–1(=180 cm–1×0.1÷1.5)である。

単純に赤外線エネルギーの波数範囲を使って計算すると、大気中の二酸化炭素は、地表から放射される赤外線エネルギーの0.48%(=100 %×12 cm–1/2500 cm–1)しか吸収しない※2)。

※1)中田宗隆『分子科学者がやさしく解説する地球温暖化Q&A 181―熱・温度の正体から解き明かす』丸善出版、2024年。
※2)中田宗隆『スペクトル解析のための分子物理化学―温室効果ガスは本当に砂上の楼閣か―』東京図書出版、2026年。

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