CO2は本当に赤外線を大量に吸収するのか:温暖化スペクトルの3つの錯覚

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が議論し、「地球温暖化の原因は二酸化炭素である」と結論づけた根拠とされる放射強制力のスペクトルを図1に示す。このスペクトルは、天文学辞典(公益社団法人日本天文学会)で誰でも見ることができる。

図1 大気の放射強制力(=地表面からの赤外線放射-大気上端からの赤外線放射)のスペクトル
一見すると、二酸化炭素(CO2)が多くの赤外線を吸収しているように見える。しかし、そこには、そのように誤解させるための3つの工夫がなされている。
1. スペクトルの横軸の単位
図1では、スペクトルの横軸の単位が波長である。波長は赤外線のエネルギーに「反比例」する。そうすると、例えば、吸収される赤外線の波長幅が同じ1μmでも、14μm~15μmの範囲の赤外線エネルギーは、4μm~5μmの範囲の赤外線エネルギーよりも少ない。
逆に言うと、吸収される赤外線エネルギーが同じならば、波長の長い領域での吸収は、波長の短い領域での吸収よりも面積が広くなり、多くの赤外線を吸収しているかのように誤解させる。このことは、横軸を赤外線のエネルギーに「比例」する波数(波長の逆数)にするとわかる。
図1では、CO2が吸収する13μm~17μmの範囲は、H2Oが吸収する5μm~8μmの範囲よりも広く見える。しかし、CO2が吸収する赤外線エネルギーは180cm–1(=770cm–1~590cm–1)であり、H2Oが吸収する赤外線エネルギーは750cm–1(=2000cm–1~1250cm–1)であるため、その1/4以下である。
2. スペクトルの縦軸の単位
図1では、スペクトルの縦軸の単位は「単位面積」当たりの赤外線エネルギーである。地表から放射された赤外線は、高度が高くなるにつれて広がるため、単位面積当たりの赤外線エネルギーは少なくなる。高度が高くなるにつれて、地球を取り囲む球面の表面積が大きくなるからである。
地球の半径を6370kmとすると、地表面での表面積は4π×(4.06×107 km2)である。仮に高度600kmを周回する観測衛星で、地表面から放射される赤外線エネルギーを観測すると、地球の中心からの距離は6.97×103km(= 600km+6370km)であるため、その高度での表面積は4π×(4.86×107 km2)となる。
両者の表面積の比は1.2となり、観測衛星での「単位面積」当たりの赤外線エネルギーは、地表面よりも20%も少ない。図2に示したように、スペクトルの破線よりも下の灰色の領域は、大気による赤外線エネルギーの吸収ではない。

図2 大気が赤外線を吸収しなくても、単位面積当たりの赤外線エネルギー(灰色の領域)は減る
3. スペクトルの分解能
地球(物体)から放射される赤外線の波数範囲は0~2500 cm–1である。一方、二酸化炭素は気体であるため、吸収する赤外線エネルギーが厳密に限られる。分解能が低ければ、液体や固体による吸収のようなスペクトルになるが(図1)、分解能が高ければ、振動回転線の集合となる(図3)※1)。

図3 分解能の高い分光光度計で測定された二酸化炭素の赤外線吸収スペクトル
振動回転線の吸収幅は、標準圧力でも0.1 cm–1以下である。また、振動回転線と振動回転線の間には、二酸化炭素が吸収しない、波数幅1.5 cm–1の赤外線領域がある。
そうすると、図1では、二酸化炭素が吸収する赤外線エネルギーは180 cm–1(=770 cm–1~590 cm–1)に見えるが、実際には12cm–1(=180 cm–1×0.1÷1.5)である。
単純に赤外線エネルギーの波数範囲を使って計算すると、大気中の二酸化炭素は、地表から放射される赤外線エネルギーの0.48%(=100 %×12 cm–1/2500 cm–1)しか吸収しない※2)。
※1)中田宗隆『分子科学者がやさしく解説する地球温暖化Q&A 181―熱・温度の正体から解き明かす』丸善出版、2024年。
※2)中田宗隆『スペクトル解析のための分子物理化学―温室効果ガスは本当に砂上の楼閣か―』東京図書出版、2026年。
関連記事
-
現在、パリ協定第4条第19項に基づくパリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略の策定作業の最終段階にある。4月25日に政府原案が公表され、パブリックコメントに付された。政府原案の概要は以下のようなものである。 【基本的考え
-
欧州で聞いた「気候危機ではなく経済危機」 先日、EU政治の本拠地であるブリュッセルを訪問する機会があり、現地で産業関係者や産業のロビイングを支援するシンクタンクの幹部と話をする機会があった。そこで聞かれた言葉は、欧州の産
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 前稿で科学とのつき合い方について論じたが、最近経験したことから、改めて考えさせられたことについて述べたい。 それは、ある市の委員会でのことだった。ある教授が「2050年カーボン
-
筆者の知己であり、元コロラド大学教授(現AEI(American Enterprise Institute)シニアフェロー)のRoger Pielke Jr.が興味深い論考「”Renewables” are not Re
-
英HSBCが自社の2030年ネットゼロ目標を撤回したことを今年2月に紹介しました。これ、いまだに日本の大手メディアではほとんど報じられていません。 英HSBC、ネットゼロ目標を撤回←日本語でも報道してください HSBCは
-
はじめに 北海道・釧路湿原のすぐそばで、大規模なメガソーラー建設が進められている。開発面積は約27ヘクタール、出力は21メガワット規模。すでに伐採・造成工事が始まり、国立公園・ラムサール条約湿地の隣にパネル群が並ぶ計画で
-
4月15日、イーロン・マスク氏のインタビューのビデオが、『Die Welt』紙のオンライン版に上がった。 インタビュアーは、独メディア・コンツェルン「アクセル・スプリンガーSE」のCEO、マティアス・デップフナー氏。この
-
日本各地の火山が噴火を続けている。14年9月の木曽の御嶽山に続き、今年6月に鹿児島県の口之永良部島、群馬県の浅間山が噴火した。鳴動がどこまで続くか心配だ。火山は噴火による直接の災害だけではない。その噴煙や拡散する粒子が多い場合に太陽光を遮り、気温を下げることがある。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
















