米16州の司法長官が監査法人ビッグ4を追及:脱炭素で儲ける監査法人は中立なのか

近年続いている、米国のレッドステート(共和党系の州)司法長官による気候カルテル取り締まりの最新情報です。今回は、ネブラスカ州、フロリダ州、テキサス州など16州の司法長官が、企業の財務監査を一手に握る大手監査法人・会計事務所「ビッグ4」のデロイト、EY、PwC、KPMGに対して気候活動への懸念を表明しました。
実はビッグ4の気候変動活動に対しては、2023年にも22州の司法長官からNZFSPA(ネットゼロ金融サービスプロバイダーアライアンス)への参加を巡って独禁法・消費者保護法上の懸念を指摘されていました。今回はさらに踏み込み、監査人としての「独立性」ならびに「利益相反」が問われています。
以下に、2026年8月24日付のネブラスカ州司法長官ニュースリリース、ならびにビッグ4に対する公開書簡の概要をまとめます。
<ニュースリリース>
- 16州の司法長官による共同行動:ネブラスカ州のMike Hilgers司法長官が主導し、テキサス、アラスカ、フロリダを含む16州の司法長官連合が監査法人・会計事務所ビッグ4に対して共同書簡を送付した。
- 気候変動アクティビズムへの懸念:ビッグ4がTCFDに基づく気候関連開示を支持するとともに、NZFSPAなどのネットゼロ・イニシアチブに参加してきたことが、監査人に求められる独立性や客観性の義務に反する可能性がある。
- 利益相反と消費者へのコスト転嫁:ビッグ4は非財務開示の事務負担を増やすことで自ら利益を得る一方、その膨大なコンサル費用は農家、中小企業、そして最終的には消費者に物価高(食品やエネルギー)として跳ね返る。
- 州法違反・契約解除の可能性:監査の独立性を巡り、顧客に対して欺瞞的な説明を行っている場合、州の消費者保護法や、州政府との間で結んでいる「州法遵守」の契約条項に違反する可能性があり、ペナルティや契約解除の対象になり得る。
<公開書簡>
- 独立性・客観性の違反:客観的かつ中立であるべき財務監査の場に、ネットゼロなど外部の政治目標を持ち込んで気候開示を強制する行為は監査人の独立性を著しく損なっている。
- 「マテリアリティ(重要性)」原則の歪曲:米国の会計基準(GAAP/PCAOB)が定める客観的な財務的マテリアリティを無視し、「マテリアリティ評価とは無関係(independent of a materiality assessment)」にスコープ1・2などの開示を迫っている。
- 主観的で不確実な気候開示の強制:ビッグ4が推奨するISSBなどの気候開示は、将来の法律、技術、市場動向などについて不確実な予測を企業に要求する。書簡ではこれを、証券取引委員会(SEC)Hester Peirce委員の言葉を引用して「仮定の上に憶測を積み重ねる(stacking speculation on assumptions)」と批判している。
- エラー回避の原則違反:不確実性や憶測を積み重ねる情報が、会計・監査に求められる「エラー回避(error avoidance)」の原則に反している。企業の財務諸表や報告書は、誤り(エラー)や不正による重大な虚偽記載を排除し、監査人が信頼性を担保しなければならない。
- 欺瞞的な広告(UDAP法違反):ビッグ4各社がウェブサイト等で「独立性、整合性、客観性を重視している」と宣伝する一方、気候アクティビスト団体へのコミットメントを開示していないため、州の不公正・欺瞞的行為禁止法(UDAP法)に抵触する恐れがある。
- 38の質問項目:TCFD・ISSB・NZFSPAへの関与、GFANZ関係者との通信記録、スコープ1・2・3を「重要」と判断する基準、過去5年間のESG関連ビジネスの収益、利益相反への対応など38項目の質問について、具体的な資料提出を伴って回答すること。
最後の38項目の質問はかなり強烈なので、別途記事でご紹介します。
今回の書簡の主旨をまとめると、【ビッグ4が気候開示を推進】 → 【開示・保証業務が増加】 → 【ビッグ4自身の収益が増える】 → 【その一方で監査人として中立・独立だと言っている】 → 【これが利益相反】だと指弾しています。わかりやすい。
しかも書簡では、外部の推計を引用し「CSRDだけで年間40~80億ドルの新たな監査報酬が発生する可能性があり、初期のCSRD保証業務の約9割をビッグ4が担っている」とも指摘しています。
はてさて、今後ビッグ4がどのように対応するのか、引き続き注視します。
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なお、筆者がこれまで米国における気候カルテル取り締まりについてアゴラ上で紹介してきた主な記事はこちらです。
【関連記事】
- 米下院司法委が大手金融機関と左翼活動家の気候カルテルを暴く
- 米国11州による気候カルテル訴訟が本格化
- 米国23州がSBTiに対して独禁法違反の調査を開始
- フロリダ州がCDPとSBTiを気候カルテルと指摘し召喚
これらをもとに、2023年以降の米国における「ESG・脱炭素成敗」の歴史を一覧表にまとめてみます。

これらは筆者が個人で把握している限りですので、他にも進行中の気候カルテル調査があるのかもしれません。産業界で話してもほとんど知られていないので、国内でもしっかりと報道してほしいものです。サラリーマン一人では追いきれませんので、メディアの皆さんよろしくお願いします。
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