パリ協定の発効 : 温暖化問題をビジネスチャンスへ
古野真 350.org Japan代表
石炭発電プラント(カナダ、Wikipediaより)
(GEPR編集部より)
投稿原稿を掲載します。GEPRは、石炭火力の使用増加は環境配慮をすればやむを得ないという立場の意見を紹介してきました。気候変動は懸念するものの、原子力の無計画な停止が続くためです。
そうした意見とは異なりますが、以下の意見を掲載します。石炭火力の一方的な拡大は懸念します。
(本文)
国連は11月4日に気候変動枠組み条約の「パリ協定」が発効することを先日発表した。これは世界が2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを目指すために動きだしたことを示す。
この発表を受けて、国際環境NGO350.org事務局長 メイ・ボーヴは次のコメントを発表した:
「パリ協定の発効は人類の気候変動問題との闘いにおける大きな分岐点を表しています。人類は化石燃料に依存する時代に今まさに幕を閉じようとしているのです。これからが勝負です。パリ協定で掲げられている、産業革命前からの気温上昇を2度より十分に低く抑える目標を達成するには、化石燃料にはもう依存できないということを意味します。化石燃料産業を採掘して資源を燃やすというビジネスの手法はこの協定とは完全に矛盾しています。機関投資家や政府は責任を持って、地球温暖化を進めている産業から投資を引き揚げて、100%再生可能エネルギー経済への移行を加速させる必要があります」
米国や中国をはじめ、パリ協定への批准を早々と発表した70か国以上が、温暖化問題を危惧し、国際社会においてリーダーシップを発揮するためにこのような行動を率先してとったことは間違いない。しかし、一方で脱炭素社会への鍵となる再生可能エネルギー技術開発および普及と商業化を大きなビジネスチャンスと捉えてこのような行動をとったとも言える。
アメリカの離脱など、さまざまな問題を乗り越えて京都議定書は発効まで約7年かかった。しかし、パリ協定はわずか1年という異例の速さで発効した。世界の投資家が地球温暖化問題を原因とする経済リスクを懸念し、化石燃料産業から投資を引き揚げ(ダイベストメント)、代わりに再生可能エネルギー技術開発に取り組む企業に新しく投資していく方針を発表するという動きの活発化も早期発効の後押しにもなったと見られる。
昨年パリで気候変動枠組み条約締約国会合が開催される中、350.orgは石炭や石油などの化石燃料産業から「ダイベストメント」を表明した組織が500を超え、その運用資産の総額が3兆4千億ドル(約420兆円)に達したと発表した。2016年もダイベストメントの世界的な気運はさらなる盛り上がりを見せていて、組織数および運用資産額も大いに増加している。
一方、海外とは異なり、日本ではパリ協定批准への目途もまだ立っていない。世界の経済界の動きに反して民間国際機関による化石燃料および原発関連企業への膨大な投資・融資を続け、国際社会から一段と孤立しつつある。(キャンペーンサイト)
パリ協定の法的拘束力によって、これから温室効果ガスを大量に排出する化石燃料使用に対する規制がどんどん厳しくなるだろう。その際、日本の化石燃料関連企業が保有している化石燃料資産の価値はどんどん低下して、座礁資産となる可能性が高まる。世界が脱炭素社会を目指す中、高排出な化石燃料に依存し続けている日本の電力会社、石炭関連会社、石油会社、ガス会社は急速に事業モデルを改革しなければ、莫大な損失を抱える恐れがある。つまり「カーボン・バブル」が崩壊したとき、それは確実に日本経済に大きな打撃を及ぼす。
他の国々は再生可能エネルギー開発へとお金の流れが変わっているとみて、我こそはといち早く化石燃料からの移行を進める政策や方針を確実に取り入れている。温室効果ガス排出量世界第4位のインドでさえ、2030年までに40%再生可能エネルギーを導入する目標を立てている。これは日本の目標の約2倍だ。
技術大国として世界に名を馳せてきた日本は、この持続可能な社会への移行へ貢献することを世界から期待されている。そして、さらに日本のモノづくりにおけるイノベーションを再生可能エネルギーの分野で活かすにはこれ以上良いタイミングはない。
まず、政府や国内の機関投資家は時代遅れの石炭開発にピリオドを打ち、真剣に地球温暖化問題とその経済リスクを踏まえた世界経済の変化に向き合うべきだ。日本人の知恵と技術と問題解決力さえあれば、まだ間に合う。
2020年東京オリンピックに向けて、日本の魅力を最大化するのは、再生可能エネルギーの技術開発とノウハウだろう。脱炭素社会への国々のレースはもうすでに始まっている。日本は遅れを取り戻すべきだ。
(2016年10月12日掲載)
関連記事
-
電力注意報が毎日出て、原発再稼動への関心が高まっている。きょう岸田首相は記者会見で再稼動に言及し、「(原子力規制委員会の)審査の迅速化を着実に実施していく」とのべたが、審査を迅速化する必要はない。安全審査と原子炉の運転は
-
国際環境経済研究所主席研究員 中島 みき 4月22日の気候変動サミットにおいて、菅総理は、2050年カーボンニュートラルと整合的で野心的な目標として、2030年度の温室効果ガスを2013年度比で46%削減、さらには50%
-
トランプ政権は、バイデン政権時代の脱炭素を最優先する「グリーンニューディール」というエネルギー政策を全否定し、豊富で安価な化石燃料の供給によって経済成長と安全保障を達成するというエネルギードミナンス(優勢)を築く方向に大
-
過激派組織IS=イスラミックステートは、なぜ活動を続けられるのか。今月のパリでのテロ事件、先月のロシア旅客機の爆破、そして中東の支配地域での残虐行為など、異常な行動が広がるのを見て、誰もが不思議に思うだろう。その背景には潤沢な石油による資金獲得がある。
-
東京都は保有する水力発電所からの電力を平成21年度(2009年)から10年間の長期契約で東京電力に販売しているが、この電力を来年度から入札により販売することにした。3月15日にその入札結果が発表された。(産経新聞3月15日記事「東京都の水力発電、売却先をエフパワーに決定」)
-
遠藤誉氏のホームページで知ったのだが、10月14日に実施された中国の軍事演習の狙いは台湾の「エネルギー封鎖」であった。中国環球時報に国防大学の軍事専門家が述べたとのことだ。 「連合利剣-2024B」演習は台湾島の主要港の
-
日本でも、遺伝子組み換え(GMO)作物が話題になってきた。それ自体は悪いことではないのだが、このブログ記事に典型的にみられるように、ほとんどがGMOと農薬を混同している。これは逆である。GMOは農薬を減らす技術なのだ。
-
河野太郎衆議院議員(自民党)は電力業界と原子力・エネルギー政策への激しい批判を繰り返す。そして国民的な人気を集める議員だ。その意見に関係者には反論もあるだろう。しかし過激な主張の裏には、「筋を通せ」という、ある程度の正当
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間

















