台風は地球温暖化のせいではないことは小学生でも分かる

2020年07月17日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

今年も台風シーズンがやってきた。例年同様、被害が出る度に、「地球温暖化のせいで」台風が「激甚化」している、「頻発」している、といったニュースが流れるだろう。そこには毎度おなじみの“専門家”が登場し、「温暖化すれば台風が激甚化するのは当然だ」とのたまうだろう。

だがこれは完全にフェイクニュースだ。

そもそも、台風は強くなっていないし、増えてもいない。このことは、統計を見れば、小学生の算数ですぐ分かる。

そして、台風は強くなっても増えてもいないのだから、「温暖化のせいで」強くなったり増えたりしていることなど、論理的にありえない。これは小学生の国語ですぐ分かる。

1.台風は増えていない

台風が増えていないことは政府資料(p54)から分かる(図1)。増えていないのは明らかで、むしろどちらかというと、減っているように見える。

図1 台風の発生数の経年変化。折れ線グラフが毎年の発生数、太線は前後5年間の移動平均。出典:政府資料(p54)

図1 台風の発生数の経年変化。折れ線グラフが毎年の発生数、太線は前後5年間の移動平均。出典:政府資料(p54)

2.台風は強くなっていない

台風が強くなっていないことも、政府資料(p54)から分かる(図2)。

台風は、最大風速が毎秒33メートルを超えると「強い」以上に分類される。図を見ると、その「強い」以上の台風の発生数は明らかに増えていない。どちらかと言うと、減っているように見える。

「強い」以上の台風の発生割合と見ても、増えてはおらず、むしろどちらかというと、減っているように見える。

図2 「強い」以上の勢力になった台風の発生数(青:左軸)と全台風に対する割合(赤:右軸)。太線はそれぞれの前後5年間の移動平均。出典:政府資料(p54)

図2 「強い」以上の勢力になった台風の発生数(青:左軸)と全台風に対する割合(赤:右軸)。太線はそれぞれの前後5年間の移動平均。出典:政府資料(p54)

超強力台風は上陸しなくなった

最後に、上陸時の台風の強さのランキングを気象庁資料で見てみよう(図3)。

図3 中心気圧が低い台風のランキング。出典:気象庁資料

図3 中心気圧が低い台風のランキング。出典:気象庁資料

10位までのランキングに、欄外の2つの台風を足すと、観測史上で12個の超強力台風があった。

昭和の三大台風(室戸台風、枕崎台風、伊勢湾台風)を初め、戦後から1970年頃までは、超強力台風が頻発していた。1950年代は4件、1960年代は3件がランキングしている。

ところが、1971年を最後に、このような超強力台風は滅多に来なくなった。ランキングに入っているのは、1991年と1993年に1つずつあるだけである。

なぜ超強力台風が上陸しなくなったのか、その理由は分からない。

偶々かもしれない。

数十年規模の気候の自然変動が影響しているのかもしれない。

いずれにせよ、そもそも上陸数が増えていないのだから、論理的に言って「地球温暖化のせいで超強力台風が上陸するようになった」ということはあり得ない。

因みに人類がCO2排出を特に増やしたのは1970年以降だから、ひょっとしたらCO2を出したら台風の上陸が減ったのかもしれない! まあ、これは半ば冗談だが。

なお本稿について更に詳しい議論は、筆者によるワーキングペーパーを参照されたい。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • (前回:再生可能エネルギーの出力制御はなぜ必要か②) 送電線を増強すれば再生可能エネルギーを拡大できるのか 「同時同量」という言葉は一般にも定着していると思うが、これはコンマ何秒から年単位までのあらゆる時間軸で発電量と需
  • やや古くなったが、2008年に刊行された『地球と一緒に頭を冷やせ! ~ 温暖化問題を問いなおす』(ビョルン・ロンボルグ著 ソフトバンククリエイティブ)という本から、温暖化問題を考えたい。日本語訳は意図的に文章を口語に崩しているようで読みづらい面がある。しかし本の内容はとても興味深く、今日的意味を持つものだ。
  • 日本では原発の再稼動が遅れているために、夏の電力不足の懸念が広がっています。菅直人前首相が、政治主導でストレステストと呼ばれるコンピュータシュミレーションを稼動の条件としました。それに加えて全国の原発立地県の知事が、地方自治体の主張が難色を示していることが影響しています。
  • エネルギー戦略研究会会長、EEE会議代表 金子 熊夫 GEPRフェロー 元東京大学特任教授  諸葛 宗男 周知の通り米国は世界最大の核兵器保有国です。640兆円もの予算を使って6500発もの核兵器を持っていると言われてい
  • 昨年9月から定期的にドイツのエネルギー専門家と「エネルギー転換」について議論する場に参加している。福島第一原子力発電所事故以降、脱原発と再エネ推進をかかげるドイツを「日本が見習うべきモデル」として礼賛する議論が目立つよう
  • シンポジウムの第2セッション「原発ゼロは可能か」で、パネリストとして登場する国際環境経済研究所理事・主席研究員の竹内純子さんの論考です。前者はシンポジウム資料、後者は竹内さんが参加した、温暖化をめぐるワルシャワでの国際会議でのルポです。シンポジウムを視聴、参加する皆さまは、ぜひ参考にしてください。
  • 4月15-16日、札幌において開催されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合は共同声明を採択して閉幕した。 欧州諸国はパリ協定、グラスゴー気候合意を経てますます環境原理主義的傾向を強めている。ウクライナ戦争によってエネルギ
  • 山火事が地球温暖化のせいではないことは、筆者は以前にも「地球温暖化ファクトシート」に書いたが、今回は、分かり易いデータを入手したので、手短かに紹介しよう。(詳しくは英語の原典を参照されたい) まずカリフォルニアの山火事が

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑