台風は地球温暖化のせいではないことは小学生でも分かる
今年も台風シーズンがやってきた。例年同様、被害が出る度に、「地球温暖化のせいで」台風が「激甚化」している、「頻発」している、といったニュースが流れるだろう。そこには毎度おなじみの“専門家”が登場し、「温暖化すれば台風が激甚化するのは当然だ」とのたまうだろう。
だがこれは完全にフェイクニュースだ。
そもそも、台風は強くなっていないし、増えてもいない。このことは、統計を見れば、小学生の算数ですぐ分かる。
そして、台風は強くなっても増えてもいないのだから、「温暖化のせいで」強くなったり増えたりしていることなど、論理的にありえない。これは小学生の国語ですぐ分かる。
1.台風は増えていない
台風が増えていないことは政府資料(p54)から分かる(図1)。増えていないのは明らかで、むしろどちらかというと、減っているように見える。

図1 台風の発生数の経年変化。折れ線グラフが毎年の発生数、太線は前後5年間の移動平均。出典:政府資料(p54)
2.台風は強くなっていない
台風が強くなっていないことも、政府資料(p54)から分かる(図2)。
台風は、最大風速が毎秒33メートルを超えると「強い」以上に分類される。図を見ると、その「強い」以上の台風の発生数は明らかに増えていない。どちらかと言うと、減っているように見える。
「強い」以上の台風の発生割合と見ても、増えてはおらず、むしろどちらかというと、減っているように見える。

図2 「強い」以上の勢力になった台風の発生数(青:左軸)と全台風に対する割合(赤:右軸)。太線はそれぞれの前後5年間の移動平均。出典:政府資料(p54)
超強力台風は上陸しなくなった
最後に、上陸時の台風の強さのランキングを気象庁資料で見てみよう(図3)。

図3 中心気圧が低い台風のランキング。出典:気象庁資料
10位までのランキングに、欄外の2つの台風を足すと、観測史上で12個の超強力台風があった。
昭和の三大台風(室戸台風、枕崎台風、伊勢湾台風)を初め、戦後から1970年頃までは、超強力台風が頻発していた。1950年代は4件、1960年代は3件がランキングしている。
ところが、1971年を最後に、このような超強力台風は滅多に来なくなった。ランキングに入っているのは、1991年と1993年に1つずつあるだけである。
なぜ超強力台風が上陸しなくなったのか、その理由は分からない。
偶々かもしれない。
数十年規模の気候の自然変動が影響しているのかもしれない。
いずれにせよ、そもそも上陸数が増えていないのだから、論理的に言って「地球温暖化のせいで超強力台風が上陸するようになった」ということはあり得ない。
因みに人類がCO2排出を特に増やしたのは1970年以降だから、ひょっとしたらCO2を出したら台風の上陸が減ったのかもしれない! まあ、これは半ば冗談だが。
なお本稿について更に詳しい議論は、筆者によるワーキングペーパーを参照されたい。

関連記事
-
きのうのシンポジウムでは、やはり動かない原発をどうするかが最大の話題になった。 安倍晋三氏の首相としての業績は不滅である。特に外交・防衛に関して日米安保をタブーとした風潮に挑戦して安保法制をつくったことは他の首相にはでき
-
1月12日の産経新聞は、「米マクドナルドも『多様性目標』を廃止 トランプ次期政権発足で見直し加速の可能性」というヘッドラインで、米国の職場における女性やLGBT(性的少数者)への配慮、『ポリティカルコレクトネス(政治的公
-
経済産業省で12月12日に再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会(以下単に「委員会」)が開催され、中間とりまとめ案が提示された(現在パブリックコメント中)。なお「中間とりまとめ」は役所言葉では報告書とほぼ同義と考え
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 5月22日に放映されたNHK・ETVの「サイエンスZERO」では、脱炭素社会の切り札として水素を取り上げていたが、筆者の目からは、サイエンス的思考がほとんど感じられない内容だっ
-
アゴラ研究所の運営するインターネット放送「言論アリーナ」。10月1日は「COP21に向けて-日本の貢献の道を探る」を放送した。出演は有馬純氏(東京大学公共政策大学院教授)、池田信夫氏(アゴラ研究所所長)、司会はジャーナリストの石井孝明だった。
-
マイクロソフト社会長であるビル・ゲイツ氏は「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」を運営し、地球規模の社会問題の解決のための活動をしています。
-
ドイツの地金 ロシアのウクライナ侵攻で、白日のもとに晒されたことがある。 それは、脱炭素政策に前のめりなドイツが実はロシアの天然ガスにドップリと浸かっているという事実である。ドイツのエネルギー政策の地金が出てきたとでも言
-
先日、NHKが「脱炭素社会実現の道筋は」と題する番組を放映していた。これは討論形式で、脱炭素化積極派が4人、慎重派1名で構成されており、番組の意図が読み取れるものだった。積極派の意見は定性的で観念的なものが多く、慎重派が
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間