地球温暖化しても作物は育つ:東京ヒートアイランドは野菜の名産地
毎朝冷えるようになってきた。
けれども東京の冬は随分暖かくなった。これは主に都市化によるものだ。
気象庁の推計では、東京23区・多摩地区、神奈川県東部、千葉県西部などは、都市化によって1月の平均気温が2℃以上、上昇している。(下図)
これに加えて地球温暖化は過去に約0.8℃あったから、合計で約3℃の気温上昇があった訳だ。
さて今、地球温暖化対策では気温上昇を2℃に抑制することが目標にされているが、既に0.8℃上昇したので、あと約1℃の上昇である。
これで農業にどのような影響があるかは、過去にすでに3℃もの気温上昇があった東京を見れば分かるはずだ。答えは、「全く不都合は無かった」ということだ。
意外に思われるかもしれないが、東京は野菜どころである(下図)。筆者も毎日おいしく頂いている。地球温暖化でこれらの野菜が育てられなくなって困ったなどという話は聞いたことがない。
では冬ではなくて、夏はどうなのだろうか。
夏でも都市熱はあるが、冬に比べると気温上昇は少ない(下図)。東京23区、多摩地区、横浜市あたりで都市熱は1℃から2℃程度と推計されている。これに地球温暖化を加えると、合計で2℃から3℃程度の気温上昇があった訳だ。
けれども、これまた農家が困っているという話は聞こえてこない。横浜市では普通に米を作っている(下図)。水田は激減したが、これは宅地に転用したりしたためだ。
「地球温暖化で農業生産が打撃を受ける」という言説は、たいていは将来についてのシミュレーションに頼っている。けれども、シミュレーションは不確かなもので、前提によって答えがガラガラ変わってしまう。
それよりも、過去の都市熱で何が起きたかを調べるほうが、将来の地球温暖化の影響を推し量る為の、より適切な方法だ。
分かることは、気温が上昇しても、農家は(たいていは意識もすることなく)対応して、問題なく生産を続けてきた、ということだ。
東京ヒートアイランドは地球温暖化を先取りした実験室になっている。
よく調べれば、僅かあと1℃の地球温暖化で大きな被害など有り得ないことが、もっとはっきりするだろう。
関連記事
-
前稿において欧州委員会がEUタクソノミーの対象に原子力を含める方向を示したことを紹介した。エネルギー危機と温暖化対応に取り組む上でしごく真っ当な判断であると思う。原子力について国によって様々な立場があることは当然である。
-
日本のSDGs達成度、世界19位に低下 増えた「最低評価」 日本のSDGs(持続可能な開発目標)の進み具合は、世界19位にランクダウン――。国連と連携する国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SD
-
エネルギー問題では、福島事故の影響で、原発に賛成か反対かという論点ばかりが議論されがちです。しかし私たちが考えなければならない問題は数多くあります。原子力規制庁、外部コストと呼ばれる社会影響、代替策についての論考を紹介します。
-
評価の分かれるエネルギー基本計画素案 5月16日の総合資源エネルギー調査会でエネルギー基本計画の素案が了承された。2030年の電源構成は原発20-22%、再生可能エネルギー22-24%と従来の目標が維持された。安全性の確
-
エネルギーの問題を需要側から考え始めて結構な年月が経ったが、去年ほど忙しかった年はない。震災後2011年4月に「緊急節電」というホームページを有志とともに立ち上げて、節電関連の情報の整理、発信を行い、多くの方のアクセスを頂いた。
-
「脱炭素へ『ご当地水素』、探る地産地消・・強酸性温泉や糞尿から生成」との記事が出た。やれやれ、またもやため息の出るような報道である。 1. 廃アルミと強酸性温泉水の反応 これで水素が生成するのは当たり前である。中学・高校
-
先日、和歌山県海南市にある関西電力海南発電所を見学させていただいた。原発再稼働がままならない中で、火力発電所の重要性が高まっている。しかし、一旦長期計画停止運用とした火力発電ユニットは、設備の劣化が激しいため、再度戦列に復帰させることは非常に難しい。
-
脱炭素要請による下請けいじめを指摘する面白い記事を目にしました。「脱炭素要請は世界の潮流!」といった煽り記事ではなく、現場・現実を取り上げた記事が増えるのはとてもよいことだと思います。 「よく分かんないけど数字出して」脱
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間