CO2は中国問題だとの認識こそ日米会談で共有すべきだ
菅首相の16日の訪米における主要議題は中国の人権・領土問題になり、日本は厳しい対応を迫られると見られる。バイデン政権はCO2も重視しているが、前回述べた様に、数値目標の空約束はすべきでない。それよりも、日米は共有すべき重要な認識がある。

Naeblys/iStock
第1に、CO2は中国の問題だ、という事だ。
中国の第14次5カ年計画の草案が3月に発表されて、CO2については2025年までの5年間でGDPあたりの排出量を18%削減する、としている。経済成長が年率5%とすると、2025年の排出量は2020年に比べて10%増大する、という意味になる。この増加量は12億トンもあり、日本の現在の年間排出量とほぼ同じである(図1)。

図1 CO2等の温室効果ガス排出量。左から順に、中国の2020年の年間排出量、2025年の年間排出量、その間の増加量、そして日本の2020年の年間排出量。
中国は膨大な石炭を使って、安価な電力を供給し、鉄鋼やセメントを生産している。これによって道路、ビル、工場などのインフラを建設している。太陽光発電パネルや電気自動車用のバッテリーも、石炭を大量に利用した結果として安価に製造され、世界中に輸出されている。
バイデン政権がCO2を減らしたいなら、中国こそが問題なのだ。人権・領土問題と共に、CO2も中国の問題として論じ、その異形の台頭を挫くべきだ。
第2に米国と共有すべきは、温暖化対策が日本と自由諸国に及ぼす害の認識だ。
日本のCO2数値目標を深堀りすると、石炭利用が困難になる。石炭の主な用途は発電と製鉄だ。
日本の石炭火力は全て合計しても約5000万キロワットだが、中国はこれを上回る石炭火力を僅か1年で建設している。日本がCO2を理由に石炭火力を減らすのは馬鹿げている。粗鋼生産量では中国は日本の10倍以上もあるのみならず、日本の製鉄業は年々空洞化している。日本がコストをかけてまでCO2を減らすのは愚策だ。
日本は中国と対峙している。自由、民主といった普遍的価値を守り、領土を保全するためには、経済力を含めた総合的な国力が必要だ。このためには、安定・安価な石炭火力発電や製造業の基幹である製鉄業は堅持すべきだ。
民主党のケリー気候変動特使は海外の石炭火力事業からの日本の撤退も求めている模様だが、これも有害だ。そもそも貧しい国々の経済開発の機会を奪うことは道義にもとる。のみならず、既に世界の石炭火力事業の半分以上を手掛けている中国に乗じる機会を与えてしまう。既に、中国を除く世界全体の石炭火力の4分の1は中国によってファイナンスされている、との報告がある(図2)。日本などの自由諸国の石炭火力事業からの撤退は、単に中国に事業を譲るだけになってしまう。
化石燃料を使用するなという理不尽を米国が宣教師的に押し付ける程に、権威主義的な諸国はますます中国に傾斜し、自由主義的な諸国は経済開発できず弱体化する。何たる愚策であろうか。

図2 石炭火力に対する中国のファイナンス(赤マル)
2019年時点で、中国は102ギガワット(原子力発電所約102基分)の海外事業に360億ドル(約3.6兆円)のファイナンスをしていた。これは中国以外の世界で進行中だった事業の4分の1以上にあたる。図はIEEFAによる。
関連記事
-
温暖化問題は米国では党派問題で、国の半分を占める共和党は温暖化対策を支持しない。これは以前からそうだったが、バイデン新政権が誕生したいま、ますます民主党との隔絶が際立っている。 Ekaterina_Simonova/iS
-
まもなく3・11から10年になる。本書は当時、民主党政権の環境相として福島第一原発事故に対応した細野豪志氏の総括である。当時の政権の誤りを反省し、今も続くその悪影響を考えている。 本人ツイッターより あの事故が民主党政権
-
7月17日のウォール・ストリート・ジャーナルに「西側諸国の気候政策の大失敗―ユートピア的なエネルギーの夢想が経済と安全保障上のダメージをもたらしているー」という社説を掲載した。筆者が日頃考え、問題提起していることと非常に
-
1月17日付日経朝刊に、日本原子力発電株式会社の東西分社化検討の記事が載っていました。 同社は、日本が原子力発電に乗り出した1950年代に電力各社の出資によって設立されたパイオニア企業で、茨城県東海村と福井県敦賀市に原子力発電所を持っており、他の電力会社に電気を卸しています。
-
石炭火力に対する逆風がますます強まっている。環境団体はパリ協定の2℃目標を達成するため、石炭関連資産からの資本引き上げを唱道し、世界の石炭資源の88%は使わずに地中に留めておくべきだと主張している。COP24では議長国ポ
-
政府の審議会で発電コスト試算が示された。しかしとても分かりずらく、報道もトンチンカンだ。 以下、政府資料を読みといて再構成した結論を簡潔にお示ししよう。 2040年に電力を提供するための発電コストをまとめたのが図1だ。
-
世界エネルギー機関(IEA)は毎年中国の石炭需要予測を発表している。その今年版が下図だ。中国の石炭消費は今後ほぼ横ばいで推移するとしている。 ところでこの予測、IEAは毎年出しているが、毎年「今後の伸びは鈍化する」と言い
-
地球温暖化に関する報道を見ていると、間違い、嘘、誇張がたいへんによく目につく。そしてその殆どは、簡単に入手できるデータで明瞭に否定できる。 例えば、シロクマは地球温暖化で絶滅する、と言われてきたが、じつは増えている。過去
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















