グレートバリアリーフに異状無し
崩壊しているのはサンゴでは無く温暖化の御用科学だ
グレートバリアリーフには何ら問題は見られない。地球温暖化によってサンゴ礁が失われるという「御用科学」は腐っている(rotten)――オーストラリアで長年にわたりサンゴ礁を研究してきたピーター・リッドは、新著(英文)で説得的に語っている。
1 木に竹を接いだ「危機」の図
グレートバリアリーフは地球最大の生物構造である。オーストラリアの北東海岸沖にある長さ2,300 kmにわたるサンゴ礁で、宇宙からも見える。
このグレートバリアリーフが「危機」にあるとして頻繁に引用されるのは図1(左)だ。
縦軸はサンゴの成長率。サンゴは年々成長するので、木のように年輪ができる。だいたい年に1cm成長するので、半径が3mぐらいなら300年ぐらいの過去のデータが取れる。
代表的な政府研究機関であるオーストラリア海洋科学研究所(AIMS)は、1990年から2005年にかけて、この成長率が年率1%で激減しているとした。理由は環境悪化のためとされた。
このペースだと2020年には図中赤丸で示したように1990年よりも30%も低くなっているはずだ。
ところが、リッドがAIMSのデータを詳しく再検討したところ、いくつもの間違いが見つかった。特に致命的だったのは、なんと、途中で使用する試料を変えたことだ。
つまり、1990年以前のデータのほとんどは、大きくて古いサンゴからの試料だった。これに対して、1990年から2005年のデータは、はるかに小さくて若いサンゴからの試料だった。
この問題を修正すると、図1(右)のようになり、図1(左)の成長率の低下は消滅した!
リッドは、この図のトレンドを見ると、おそらく、現在でも成長率は1990年と変わらないだろう、と主張している。
では実際のところはどうなのだろうか? AIMSは2005年以降調査をしていないので、この真偽は確かめようがない。
AIMSはグレートバリアリーフが危険にさらされていると主張しながら、このような基本的な観測をすらして来なかった訳だ。
2 サンゴ礁はもともと自然変動が激しい
サンゴ礁が危機にある、という報道は、たいてい、「白化」の映像とともに流される。
エルニーニョ現象が起きて海面水温が高くなると、サンゴ礁は大量に「白化」する。これはカラフルだったサンゴ礁が真っ白になってしまう現象で、映像としてはかなりインパクトがある。
しかしこの白化の後、たいていは、速やかにサンゴ礁は復活する。また白化以外にも、サイクロンなどによってもサンゴ礁は大きな打撃をうけ、面積は大幅に低下するが、やがて復活する。サンゴ礁の面積とは、もともと大きく自然変動するものなのだ。
図2は、AIMSによって測定されたグレートバリアリーフのサンゴ被覆率である。サンゴ礁といっても、砂地もあれば海藻が生えている場所もあるので、平均の被覆率は15%から20%前後である。2011年に激減しているのは、サイクロンとヒトデの食害によるもの。一時、被覆率は10%程度まで下がったが、2016年にはすっかり回復していた。
3 サンゴ礁が温暖化で崩壊しない理由
将来に地球温暖化が進むとしても、サンゴ礁が崩壊するとは考えられない、として、リッドは幾つか理由を挙げる。
- 「白化」はサンゴの死ではない
サンゴ礁を作るのは動物であるサンゴであり、それに褐虫藻が共生している。サンゴは褐虫藻に住処を提供する代わりに、光合成で得たエネルギーをもらっている(人間が牛を飼ってミルクをもらっているようなものだ)。この生態が、サンゴ礁の強靭さの秘訣になる。
「白化」とは、サンゴが褐虫藻を追い出すことで起きる。これは新しい環境に適した褐虫藻を迎え入れるための準備だ。サンゴと褐虫藻の組み合わせは無数にあり、多様な環境に適応できる。
- サンゴ礁はそもそも暑い場所を好む。
世界でもっともサンゴ礁が豊かな場所はマレーシア、インドネシア、パプアニューギニアを含む「サンゴの三角形」と呼ばれているところだ。ここは世界で最も海水温が高い海域でもある。
- サンゴは多様な水温に適応する。
サンゴの幼生はプランクトンで、海流に運ばれて、生まれた場所から1000kmも離れたところにたどり着くことも多い。そこの水温は当然生まれた場所と全然違う。それでもパートナーの褐虫藻を探し出し、そこに適応して育つのだ。
4 御用科学がまともな科学を抑圧
オーストラリア政府や御用学者は「サンゴ礁が危機にある」という言説を広めてきた。リッドは以上のような指摘を公然としたために、勤めていたジェームズクック大学の職を追われる羽目になり、法廷で闘争中である。
「きちんと観測をして、データを公開し、互いに批判する」という科学のあるべきプロセスが、「サンゴ礁は危機にある」という御用科学に歪められ、腐っている、とリッドは訴え続けている。
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