東京都の太陽光パネルは大水害時に感電事故の懸念

2022年06月12日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

東京都の太陽光パネルの新築住宅への義務付け条例案が6月24日までの期限で一般からの意見募集(パブコメ)を受け付けている(東京都による意見募集ホームページはこちら)。

懸念はいくつもあるが、最近気が付いた重大なことがある。

火災の際、太陽光パネルに放水すると、水を伝って感電の危険があることはよく知られるようになった。消防庁資料の冒頭だけ紹介しよう(全文はこちら):

消防の放水が問題になるぐらいだから、水害の場合にももちろん感電の危険がある。これは政府機関NEDOの資料に説明がある。これも一部だけ紹介しよう(全文はこちら):

普通の電気であれば大水害の時には送電線のスイッチを一旦切れば感電の心配はなくなるが、太陽光パネルは光が当たる限り発電を続けるので感電の危険がある。

したがって水害が起きやすい場所では太陽光パネルの設置には気を付けねばならない。東京都で特に心配なのは江戸川区だ。

江戸川区資料では、最悪の場合、最大で10m以上の浸水が1~2週間続くと警告されている。この資料は「ここにいてはダメです」という衝撃的なメッセージで話題を呼んだものだ。一部だけ紹介する(全文はこちら):

さて大規模な水害が起きた時に、太陽光パネルは感電で二次災害を起こさないのだろうか。それによって復旧が遅れたりすることは無いのだろうか。

問題はもちろん江戸川区だけに止まらない。洪水が起きかねない場所は東京都の至る所にある。太陽光パネル導入を急ぐ前に、まずは安全性の確認が必要なのではないか。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • はじめに 原発は高くなったと誤解している人が多い。これまで数千億円と言われていた原発の建設費が3兆円に跳ね上がったからである。 日本では福島事故の再防止対策が膨らみ、新規制基準には特重施設といわれるテロ対策まで設置するよ
  • トランプ大統領のパリ協定離脱演説 6月1日現地時間午後3時、トランプ大統領は米国の産業、経済、雇用に悪影響を与え、他国を有利にするものであるとの理由で、パリ協定から離脱する意向を正式に表明した。「再交渉を行い、フェアな取
  • IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 前回に続き、以前書いた「IPCC報告の論点③:熱すぎるモ
  • 世界的なエネルギー危機を受けて、これまでCO2排出が多いとして攻撃されてきた石炭の復活が起きている。 ここ数日だけでも、続々とニュースが入ってくる。 インドは、2030年末までに石炭火力発電設備を約4分の1拡大する計画だ
  • 細川護煕元総理が脱原発を第一の政策に掲げ、先に「即時原発ゼロ」を主張した小泉純一郎元総理の応援を受け、東京都知事選に立候補を表明した。誠に奇異な感じを受けたのは筆者だけではないだろう。心ある国民の多くが、何かおかしいと感じている筈である。とはいえ、この選挙では二人の元総理が絡むために、国民が原子力を考える際に、影響は大きいと言わざるを得ない。
  • 北朝鮮が第5回目の核実験を行うらしい。北朝鮮は、これまで一旦ヤルといったら、実行してきた実績がある。有言実行。第5回目の核実験を行うとすると、それはどのようなものになるのだろうか。そしてその狙いは何か。
  • 日本でも、遺伝子組み換え(GMO)作物が話題になってきた。それ自体は悪いことではないのだが、このブログ記事に典型的にみられるように、ほとんどがGMOと農薬を混同している。これは逆である。GMOは農薬を減らす技術なのだ。
  • はじめに 映画「Fukushima 50」を観た。現場にいた人たちがフクシマ・フィフティと呼ばれて英雄視されていたことは知っていたが、どんなことをしていたのかはもちろんこの映画を観るまで知らなかった。 中でも胸を打ったの

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑