地球の平均気温は1.5℃目標に到達したが、人類は絶滅しない

2024年01月10日 18:00
アバター画像
アゴラ研究所所長

EUの気象情報機関コペルニクス気候変動サービスは、2023年の世界の平均気温が過去最高を記録し、産業革命前より1.48℃高くなったと発表した。

これは気温上昇を1.5℃以内に抑えるというパリ協定の努力目標まであと0.02℃だが誤差の範囲であり、多くの地域で1.5℃を上回っている。この最大の原因はエルニーニョだが、今年前半も温暖化が続く見通しだ。

平均気温と1.5℃上昇の偏差(ABC News)

つまり人類は環境活動家が「1.5℃上昇を超えると人類が破滅する」と叫んでいた気温に事実上到達したのだが、破滅は起こっていない。

CO₂も温暖化も植物の生長には必要

それどころか自民党の麻生副総裁が言ったように「温暖化だとえらい騒ぎだが、結果として北海道の米がうまくなった」。

CO₂は植物の生長に必要なので、それが増えると農業生産は増える。気温上昇も植物にとっては望ましいので、農業生産は増える。

CO2排出と農業生産(CO2 Coalition)

この10年の海面上昇は、WMOの集計によると毎年4.5mmである。これはIPCCの予想する毎年7mmを下回っており、先進国では毎年の防災対策の範囲内である。

温暖化の弊害は熱帯に集中している

温暖化の弊害は何かあったのだろうか。気候変動の影響を報告するサイトによれば、アフリカ東部の干魃で300人が死亡し、リビアではダムの決壊で3400人が死亡したが、温暖化との因果関係は不明である。

このサイトは他にも熱波、豪雨、干魃、山火事などの例をあげているが、それをみてわかることは、地球温暖化の被害は圧倒的に熱帯に集中しているということだ。これを防ぐには、効果の疑わしい脱炭素化より堤防などのインフラ整備が必要だ。

最大の弊害は、温暖化対策でエネルギー価格が上がったことだろう。脱炭素化で世界のトップを走っていたドイツは、ウクライナ戦争で安価な天然ガスの供給が断たれ、マイナス成長に転落した。

Foresightより

気候変動はゆるやかに起こっている自然現象であり、2100年までに2℃上昇ぐらいの変化は、少なくとも北半球では大した問題ではない。

脱炭素化は雨乞いのような気休めで、自然の大きな変化を止めることはできない。これだけ大騒ぎしても、最高気温を記録したことがそれをよく示している。気休めでもやりたい人はやればいいが、毎年5兆ドルも税金を使う価値はない。

人類はもっと謙虚になり、自然を改造しようなどと考えないで、気候変動に適応して生きる道を考えるべきだ。

This page as PDF

関連記事

  • 菅首相の16日の訪米における主要議題は中国の人権・領土問題になり、日本は厳しい対応を迫られると見られる。バイデン政権はCO2も重視しているが、前回述べた様に、数値目標の空約束はすべきでない。それよりも、日米は共有すべき重
  • 海南省が台風11号に襲われて風力発電所が倒壊した動画がアップされている。 支柱が根元からぐにゃりと折れ曲がっている。 いま世界の風力発電においては中国製のシェアが多い。 洋上風力は救世主に非ず 日本で建設されている風力発
  • ロシアによるドイツ国防軍傍受事件 3月2日の朝、ロシアの国営通信社RIAノーボスチが、ドイツ国防軍の会議を傍受したとして、5分間の録音を公開した。1人の中将と他3人の将校が、巡航ミサイル「タウルス」のウクライナでの展開に
  • 核武装は韓国の正当な権利 昨今の国際情勢を受けてまたぞろ韓国(南朝鮮)の核武装論が鎌首をもたげている。 この問題は古くて新しい問題である。遅くとも1970年代の朴正煕大統領の頃には核武装への機運があり、国際的なスキャンダ
  • 政府の第6次エネルギー基本計画(案)では、2030年までにCO2排出量を46%削減する、2050年までにCO2排出を実質ゼロにする、そのために再生可能エネルギーによる不安定電源を安定化する目的で水素発電やアンモニア発電、
  • 2023年12月にドバイで開催されたCOP28はパリ協定後、初めてのグローバルストックテイクを採択して閉幕した。 COP28での最大の争点は化石燃料フェーズアウト(段階的廃止)を盛り込むか否かであったが、最終的に「科学に
  • パリ協定は産業革命以降の温度上昇を1.5度~2度以内に抑えることを目的とし、今世紀後半のできるだけ早い時期に世界全体でネットゼロエミッションを目指すとしている。 ところが昨年10月にIPCCの1.5度特別報告書が出され、
  • G20では野心的合意に失敗 COP26直前の10月31日に「COP26議長国英国の狙いと見通し」という記事を書いた。 その後、COP26の2週目に参加し、今、日本に戻ってCOP26直前の自分の見通しと現実を比較してみると

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑