気候モデルは地球の平均気温を再現できない
IPCC報告には下記の図1が出ていて、地球の平均気温について観測値(黒太線)とモデル計算値(カラーの細線。赤太線はその平均値)はだいたい過去について一致している、という印象を与える。
けれども、図の左側に書いてある縦軸は平年値(1961年から1990年の平均気温)からのアノマリ(偏差)であって気温そのものではない。
そしてよく見ると図の右側には1961年から1990年の平均気温、というのがプロットしてあって、ずいぶんとばらついている。これはなんだ?
こんな細工をせず、もっと正直に、モデルの計算した気温をプロットするとどうなるか?
すると分かることは、本当にモデルによって全然平均気温が違うことだ(図2)。上は15.5度ぐらいから、下は13度ぐらいまである。これから0.5度か1度の気温上昇をどうするかという脱炭素政策が議論されているが、その根拠になっているモデルはどうかと言えば、計算する人によって、現在の気温ですらこれだけ異なる。
将来の気温上昇予測(のアノマリのモデル間の平均値)と並べてみても、現時点でのモデル間での気温の差がいかに大きいか分かるというものだ(図3)。
要は、地球という物理・化学・生物システムはとても複雑で、その基本的なエネルギーのバランスですら、現状では、モデルによって十分に捉えられているとはいえない。このため現在の気温についてすらモデル間では大きな差異がある。
それでも、図1からも分かるように、アノマリ(偏差)の時間変化についてはモデル間での一致はわりとよい。だがこれも、20世紀後半の気温上昇がCO2などの温室効果ガスによるものだと教え込んでパラメーターを調整している(チューニング)からに過ぎない。
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筆者は1960年代後半に大学院(機械工学専攻)を卒業し、重工業メーカーで約30年間にわたり原子力発電所の設計、開発、保守に携わってきた。2004年に第一線を退いてから原子力技術者OBの団体であるエネルギー問題に発言する会(通称:エネルギー会)に入会し、次世代層への技術伝承・人材育成、政策提言、マスコミ報道へ意見、雑誌などへ投稿、シンポジウムの開催など行なってきた。
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